Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【案件】BESTIA BRAVE~Guardians Prepared~

 

 レオと夢美はベスティアシリーズの実況配信以降、制作会社であるcre8からの案件をそれなりの頻度でもらっていた。

 実際、レオと夢美の配信がきっかけでゲームソフトを購入した層も多く、cre8も新たなファン層を獲得した。

 それだけレオと夢美の与える影響力というものは大きくなっていた。

 もちろん、ゲームソフトが売れるのはゲーム自体のクオリティが高いからということもあるが、知名度を上げるための導線ができたことは制作会社にとっても嬉しいことだった。

 

「みなさん、こんばん山月! 獅子島レオです!」

 

[こんばん山月!]

[ベスティアシリーズやんけ!]

[嫁はどうしたん?]

 

 新婚旅行の前日。

 レオはスケジュールに捻じ込んだcre8からの案件配信を行っていた。

 

「夢美は新婚旅行の準備があるのでいません。俺もこの配信が終わったらすぐに出発する予定です」

 

[草]

[配信者の鑑]

[もっと自分の予定を大事にしてもろて]

[さらっとすごいこと言ったぞこのライオン]

 

 コメント欄にはワーカホリックなレオを心配する声もあったが、レオは今までスケジュールのせいで体調を崩したことがないため、そこはうまくやっているのだろうと納得していた。

 

「さて、今回はcre8さんからいただいた案件配信となります。なんと、あのベスティアシリーズの名作〝BESTIA BRAVE〟の移植版〝BESTIA BRAVE~Guardians Prepared~〟を先行プレイさせていただきます!」

 

[おおおおお!]

[先行プレイはすげぇな]

[もう公式宣伝大使になった方がいいレベル]

 

 いくら移植版だと言っても、発売前のゲームをプレイできることなどそうそうない。

 そのうえ、今回は部分的に新要素の部分をプレイできるということだった。

 

「さて、早速やっていきましょう」

 

 時間も限られているため、レオは早速ゲームを始めた。

 

「うおおおおおおお! オープニングにポンちゃん出てきた!」

 

[ポンちゃん追加だと!?]

[浮気現場]

[ゲーム内の推しくらい許したれw]

 

 新しく収録されたオープニング映像。

 そこのCメロの部分でポンデローザが映し出されたことによって、レオは歓喜の声を上げる。

 ベスティアシリーズファンの間では、スタンフォードが乙女ゲームであるハートの方に追加されたことから、ポンデローザがブレイブの移植版に追加されると予想していたこともあって大いに沸いていた。

 

「とはいえ、今日の配信では移植版にある新システムの方のプレイがメインになるので、ルートやるのは発売後ですね」

 

[発売が楽しみ]

[新システム気になる]

[ポンちゃんに出番あるの嬉しい]

 

 それからレオは夢美が実況時にやっていたときと同じようにストーリーを進めていた。

 

「今のところは移植前と同じだな」

 

 レオは移植前との違いがない箇所を盛り下がらないようにトークで繋いでいた。

 初見の視聴者もそれなりいたため、それぞれのキャラクターの魅力をネタバレにならない程度に伝えていた。

 

『仕方ないわね。アタシが力を貸してあげるわ』

 

「出た、お色気ツンデレ要員のアロエラ」

 

[ひどい言われようで草]

[スタン先生も不憫だけど、この子も大概不憫]

[おっと、俺の嫁の悪口はそこまでだ]

 

 序盤の戦闘イベントでパーティを組む際に、ヒロインの一人であるアロエラが登場する。

 強気で素直じゃない典型的なツンデレヒロインであるアロエラは、火属性の魔法の中でも高火力な破壊魔法を使うことができる。

 システム的にも高火力かつ防御デバフ込みの攻撃ができるというとんでもない性能を誇る彼女だが、魔法の反動で衣服が破けるという設定があるため、イベントCGでは頻繁に服が脱げている。

 そのせいもあって、一部の男性ファンからはアロエラは〝エロエラ〟とも呼ばれていたりするのだ。

 

「とはいえ、この子序盤から終盤までめちゃくちゃ強いから、かなりおすすめですね。指示で〝とにかく攻撃〟を選択しておけばアクション苦手な人も楽に攻略ができますね。ライザルクみたいな特殊イベント戦ではソロ固定なんで連れてけないですけど」

 

[しっかりおすすめしていく]

[さすが案件]

[よどみなくアロエラの説明が出てくるのすごい]

 

 今回の配信では台本もあるのだが、これに関してはcre8からの希望でざっくりと触れてほしい箇所を指定しているだけで、レオの素直な感想を言ってほしいという依頼だった。

 レオもそれを承諾してこの案件配信に臨んでいた。

 

「さて、そろそろ――うおっ!?」

 

『オーホッホッホ! 苦戦しているようですわね!』

 

「ポンちゃんきちゃあああああ!」

 

[正ヒロイン登場]

[ストーリー的にリア様以外とくっついて大丈夫なのだろうか]

[リア様……]

 

 ポンデローザが登場したことでレオもコメント欄も大いに沸いた。

 

「まあ、セタリアの方はストーリー的にはメインヒロインだからなぁ。正直、セタリアルートは最後にやった方が一番楽しめると思うよ」

 

[リア様以外結構内容薄目だからな]

[一番煽りを受けてるのがアロエラだもんな]

[ポンちゃんルートどうなるんだろ]

 

 このゲームではメインヒロインであるセタリアと主人公の繋がりが強い設定のため、ストーリー的にもセタリアがどうしてもメインになってしまう。

 その影響を受けて各ヒロインのルートがセタリアルートに比べて薄味になってしまうという不満点があった。

 

「さて、ここからが新システムとのことですが……」

 

 レオが身構えているとポンデローザがパーティに加わり、新システムについてのチュートリアルが始まった。

 説明文にある〝キャラクターチェンジ〟という文字を見た瞬間、レオは興奮しながら叫んだ。

 

「おおっ、すげぇ! ポンちゃんが動かせるぞ!」

 

[!?!?!?]

[ファッ!?]

[主人公以外も動かせるのか!]

 

 今回の移植版に当たって追加された新システム。それは主人公以外のキャラクターを戦闘時に操作できるようになるというものだった。

 これは携帯用ゲーム機から家庭用ゲーム機への移植のため、容量に余裕が生まれたということも関係している。

 レオは早速ポンデローザに操作を切り替えると、ボス前の敵を氷魔法で倒していった。

 

「いや、ポンちゃんつっよ!」

 

[急に無双ゲーになってて草]

[やはり氷雪系は最強]

[道中の雑魚敵何もできずに死んだwww]

 

 デモンストレーションという役割もあるため、ポンデローザはかなり操作感に癖がなく、シンプルに強いキャラクターに設定されていた。

 そこで、レオはcre8公式の宣伝担当からThiscodeで連絡があった。

 内容は簡単だ――スタンフォードも操作できるということを匂わせてほしい、とのことだった。

 ポンデローザでの戦闘を終えると、レオは素直に感動したように感想を述べた。

 

「いやぁ、マジで新システム最高だよこれ。これつまりは推しで戦えるってことだろ。じゃあ、当然人気キャラは使用できますよね、cre8さん?」

 

[絶対スタン先生も使えるだろ!]

[期待してるぞcre8!]

[これは事前予約不可避]

 

 それから案件配信は恙なく進み、レオはスーパーチャットの読み上げが後日になってしまうことを謝罪しつつも事務的な連絡をする時間をとっていた。

 

「というわけで、案件配信は以上になります。ここからはちょっとした連絡事項になります」

 

[お疲れ様!]

[めっちゃわかりやすい説明で良かった!]

[ハンプやレイン様と並んで案件うまいよな]

 

「今日、このあと出発して妻と新婚旅行に行ってきますので、しばらく配信はお休みさせていただきます。新婚旅行での様子なども、帰国後に雑談枠などでお話したいと思いますので、それまでどうかお待ちいただければと思います」

 

[了解!]

[待ってる!]

 

[cre8(クリエイト)公式チャンネル:いってらっしゃい!]

 

[公式!?]

[公式もよう見とる]

[公式から送り出されてて草]

 

「cre8さん! ありがとうございます! 新婚旅行楽しんできます!」

 

 視聴者、そして案件元のcre8に送り出され、レオは予め準備していた荷物を持って夢美と合流することにしたのだった。

 




次回、新婚旅行編

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