Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【新婚旅行】いざマレーシアへ その2

 空港に降り立った二人は異国の空気を肌で感じ、いろいろと手続きを終えて預けた荷物を受け取りにベルトコンベアの元へと向かった。

 

「おー、空港のベルトコンベア初めて見た!」

「由美子はそもそも旅行経験ないからな」

 

 夢美は荷物が流れてくるベルトコンベアを初めて見たこともあり、興奮気味に自分の荷物を探した。

 写真を撮りながらしばらく待っていると、目立つピンク色のキャリーケースが流れてくる。

 

「おっ、あたしのだ!」

「俺が持ってこようか?」

「大丈夫、せっかくだし自分で取ってくる」

 

 夢美は鼻息荒くキャリーケースの元へと行くと、荷物を自分の元へと手繰り寄せようとした。

 

「重っ――あ゛!?」

 

 しかし、行きの際もレオに持ってもらったり、キャスターで転がして運んでいたこともあり、想像以上の荷物の重さに夢美はバランスを崩してそのまま転倒することになった。

 

「あっ、ちょっ、拓哉! た゛す゛け゛て゛ぇ゛!」

「バカ、いったん荷物から手を放せ!」

 

 夢美は荷物を掴んだままベルトコンベアに引っかかった荷物に少しだけ引きずられた後にレオに救出された。

 

「まったく、だから俺が取るって言ったのに……」

 

 レオは呆れたようにため息をついて夢美の服についた埃を払った。

 周囲の目もあり、それからは速やかに荷物を回収してラウタンの待つ場所へと向かった。

 

 

 

 そのまま旅行者の流れに沿って歩いていると、プラカードを掲げたラウタンの姿が目に入った。

 ラフな格好にサングラスという如何にもな恰好をしたラウタンは、笑顔を浮かべてレオと夢美に向かって手を振っていた。

 

「拓哉さーん、由美子さーん! こっちです!」

「何だろう、俺達より旅行者っぽい恰好してないかあの人」

「でも、日本にいるときより馴染んでるよね。さすが元原住民」

 

 レオと夢美はそのままラウタンと合流する。

 ラウタンは日本で会ったときよりもテンションが高めだった。

 元々亜熱帯気候なため、気候が肌に合っているラウタンにとってはこちらにいるときの方が元気になる傾向にあった。

 

「さて、お二人共。早速ですが、まずはホテルに向かいましょう。ドライバー付きですよ?」

 

 ニヤリと笑うとラウタンは車のキーを掲げた。

 

「まさか運転までしていただけるとは……」

「こう見えても結構こっちでも運転しているんですよ」

「文明の利器を完全に使いこなしてる……」

 

 乗り心地の良い安全運転をするラウタンの車に乗ってマレーシアの国道を走る。

 レオは窓から流れる街並みを見て、以前に来たときよりも都市が発展していることを感じていた。

 

「そういえば、こっちにもVっているのかな?」

「確か個人では結構いたと思うぞ。さすがにうちにはいないけど」

「最近は海外展開もすごいからねぇ。その内出てきてもおかしくないかもね」

 

 レオと夢美は車内でそんな会話を続けていた。

 会話をしていると、どうしても話題がVtuberや配信関連になってしまう。

 

「ダメだな。どうしても仕事の話ばっかりしちまうな」

「今まで忙しかったこともあったし、どうしてもねー」

「お二人共、職業病ってやつですか?」

 

 二人がどうしたものかと苦笑していると、ラウタンが運転しながら話しかけてきた。

 

「私も主人の研究に付き添ってたこともあって、ここに来ると仕事のことばっかり考えてしまうので、お気持ちはわかりますよ。たぶん、クアラルンプールにいる間は抜けないとは思いますけど、ランカウイに行く頃にはもう旅行のこと――いや、お互いのことしか考えられなくなりますよ!」

 

 ラウタンの意味深な言葉に、レオも夢美も怪訝な表情を浮かべたが、今はカリューから紹介された敏腕ガイドの言葉を信じるしかなかった。

 そして、ランカウイ島への移動を待たずに二人はすっかり旅行気分へと移行することになる。

 

「おい、見ろよ由美子! ミロだけの自販機があるぞ!」

「いやいや、そんなわけ――マジだ!? 緑一色でミロしか売ってねぇ!?」

「さすがマレーシア。ミロの推しっぷりが半端ないな!」

 

 

「ねぇねぇ、拓哉! あれが言ってたツインタワー!?」

「そうそう! あれが前に言ってた奴だよ」

「タワーってそれくらいしかないと思ってたけど、こっちのKLタワーもめっちゃ景色いいじゃん! てか、下ガラスなの怖っ! やば!」

 

 

「マレーシアにも中華街ってあったんだね」

「チャイナタウンなんて久しぶりにきたな。懐かしいな」

「何かアメ横みたいなとこだね。この雑多な感じ、あんま得意じゃないんだよなぁ」

「お前、人混み苦手だもんな。おっ、屋台でミロ売ってる!」

「おい、いい加減ミロから離れろ」

 

 

 その後も日が暮れるまでクアラルンプールの観光地を回った二人は、ラウタンにホテルまで送ってもらいチェックインの手続きまで手伝ってもらった。

 二人を部屋まで送り届けると、ラウタンは二人と別れることになった。

 

「それでは、また明日迎えに来ますね!」

「今日はありがとうございました!」

「ラウタンさんってこっちではどこに泊まられているんですか?」

 

 ふと、レオはラウタンがどこで寝泊まりしているのかが気になった。

 普段は主人とマレーシアに来ることが多いとは聞いていたが、元の実家は海の上である。

 そんなレオの疑問にラウタンは笑顔を浮かべて答えた。

 

「こちらでは主人の研究室と共同研究を行っている大学と提携している宿泊施設に泊まっています。研究でしょっちゅう行くから素泊まりならほぼタダ同然なんですよ」

「それはまたすごいですね」

「まあ、主人のおかげですよ。おかげで里帰りもしやすいですし」

 

 では、ごゆっくり。と挨拶をするとラウタンは足早に去っていった。

 どこまでも気が利くガイドである。

 改めてレオは、ラウタンを紹介してくれたカリューに感謝するのであった。

 

「なあ、由美子。せっかくだし、プールいかないか?」

「疲れた。酒飲んで寝る」

「えぇ……」

 

 一階に設置されたプールに行こうとレオが提案するも、夢美は取りつく島もなく却下する。

 

「そんなに残念そうな顔したってダメ。水着はランカウイでお披露目予定なんだから」

 

 夢美は悪戯っぽく笑うと道中で購入したチューハイをレオに投げ渡した。

 

「ほら、とりあえず新婚旅行一日目に乾杯」

「おう、乾杯!」

 

 レオと夢美はそのまま部屋で酒を楽しむと、風呂に入って眠りについた。

 




クアラルンプールはダイジェスト気味

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