Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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やっと諸々片付いたので再開いたします!


【にじライブアニバーサリー】にじライブRecordsステージ

 

 にじライブレジェンドアニバーサリーも二日目。

 折り返し地点である今日の最初のステージを飾るのは、にじライブRecordsの特別ステージだ。

 レオと赤哉の〝コミュ強人外苦労人コンビ〟がパーソナリティを務める音楽番組は女性ファンが特に多く、大人気の番組だった。

 案の定、ステージを最前列で見に来ている観客は女性ばかりだ。

 普通はレオが結婚した時点で多少の人気は落ちるものだが、実際には妻を気遣って仕事を調整するレオの旦那としての一面に人気はさらに上がっていた。

 赤哉に至ってはコラボの多い桃華と実は裏で結婚していると思われているくらいである。

 そんな二人が行うにじレコのステージは始まる前から最高潮の盛り上がりを見せていた。

 何せレオは前日のステージ不参加。二日目からの本格参戦である。期待しないはずがない。

 

「獅子島君。調子はどうですか?」

「これ以上ないくらい良いですよ」

「さすがですね。普通だったら期待がプレッシャーになるんですけどね」

 

 大きな期待をされているというのに、レオには一切プレッシャーを感じる様子がない。

 赤哉の疑問に対して、レオは獰猛な笑みを浮かべて答える。

 

「何言ってるんですか。俺は期待されればされるほど上がるタイプですよ」

「最高に頼もしいですね」

 

 そんなレオの笑顔を見た赤哉も目を見開いて不敵に笑う。

 

「それじゃあ、期待なんて余裕で上回ってやりましょうか!」

「もちろん!」

 

 拳をぶつけ合うと、二人は意気揚々とステージへと上がる。

 二人がステージに現れたの同時に、曲のイントロが流れて大きな歓声が上がる。

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁ!』

 

[きちゃ!]

[レオ君とあかやんだ!]

[にじレコの時間じゃぁぁぁぁぁ!]

 

 観客席もコメント欄も大盛り上がり。

 大歓声の中、二人はレオの好きなクリエイターユニットのシリーズの曲を歌い出す。

 

「辺りは~同じ色♪ 違う色は指をさされてい~た♪」

「怖くて~隠してた♪ 同じ色になりかけてい~た~♪」

 

[夢ファンファーレだ!]

[絶対レオ君チョイスだろ!]

[もう神]

[安定のハニワ]

 

 この曲はシリーズの作中で男性のアイドルユニットが歌っている曲で、ライバーの中でもそこまで歌ってみたを投稿している者が少ない曲だった。

 それでも名曲であることは疑う余地もなく、二人はその名曲を最初から全力を出して歌い上げる。

 

「やりたい事やらなきゃ損じゃん? 選手宣誓~♪」

「他人の夢それじゃダメ! 君を楽しめ~♪」

 

「「頑張っている君に捧げる夢ファンファーレ~♪」」

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

[8888888888]

[888888888888888]

[8888888888888]

[最初からクライマックス過ぎる!]

[やっぱりこの二人は最強!]

[「にじ」ライブと曲の歌詞の「色」がかかっててエモいわ]

 

 曲が終わり、観客席とコメント欄が黄色い歓声と拍手で埋め尽くされる。

 拍手が止むと、二人は早速自己紹介を始める。

 

「みなさん、こんばん山月! にじライブ三期生の獅子島レオです!」

「皆様、こんばんないたー! にじライブ二期生の名板赤哉です!」

 

「「にじライブRecords オンエアの時間だぁぁぁ!」」

 

『ひゅううううううう!』

 

[うおおおおおおお!]

[にじレコはやっぱりこの二人だよな!]

[いつもは録音したジングルなのに、生で言ってくれるの控えめに言って最高]

 

 にじライブRecordsでは、レオと赤哉の二人が事前に収録した開始のジングルが流れる。

 普段は録音だからこそピッタリ声が揃っているのだが、このステージ上でも録音と変わらず息がピッタリ合ったジングルを二人は披露した。

 

「やー、赤哉さん。もう二日目ですよ。早くないですか?」

「楽しい時間ほどあっという間ですからね」

 

[もうあと半分しかないのか……]

[昨日も濃かったからな]

[嫌な相対性理論だわ]

 

 過ぎる時間があっという間というのは視聴者達の間でも共通認識だった。

 それだけこのにじライブレジェンドアニバーサリーが多くの人間を楽しませているということでもある。

 

「まあ、惜しんでもらえるということはそれだけ楽しんでもらえているということでもありますからね」

「だったら結論は一つですね」

 

 レオと赤哉は笑いながら頷き合うと、観客席と画面の向こうの視聴者に向かって叫んだ。

 

「「最後まで突っ走るから全力で付いてこい!」」

 

『当たり前だァ!』

 

[決まってるよなぁ!?]

[全力で付いていくぜ!]

[任せろおおおおお!]

 

 会場のボルテージは最高潮。盛り上がり続ける空気の中、レオと赤哉は用意された席に着いた。

 

「さて、それではオープニングトークはこの辺にして始めましょうか」

「そうですね」

 

[うわぁ!いきなり落ち着くな!]

[温度差で草]

[スン……じゃないんよ]

 

「早速今日のトピックに行きましょう!」

「今日のトピックはこちら!」

 

【茨木夢美、にじライブレジェンドアニバーサリー欠席!?】

 

「いやー、本当に残念でしたね」

「本当ならにじレコのゲストに出てきてもらう予定だったんですけどね」

 

[体調が心配だわ]

[バラギここに出演予定だったのか]

[レオ君は何か事情知らんの?]

 

 夢美の出演見送りに関しては多くの視聴者達が残念がっていた。

 また今回の件について、夢美の夫であるレオから何か説明があるのではないかと期待する者も少なくはなかった。

 

「実際、奥さんの体調は大丈夫なんですか?」

「はい、幸い今は安静にしていれば問題はないそうです。配信活動にもしばらくは影響が出ないとのことでした」

 

[良かった……]

[ん?]

[しばらくは?]

 

 レオのどこか引っかかる言葉に勘の良い視聴者達は疑問を抱き始める。

 そんな中、レオは本来自分のライブパートで流す予定だった映像をスタッフに用意してもらっていた。

 

「実はですね。本来ゲスト出演する予定だった夢美からビデオメッセージを預かっております」

 

[!?]

[マジか!]

[大丈夫なんかな]

 

 現在スタッフが準備している映像は赤哉の厚意でにじレコステージで流してもらえることになった。

 赤哉も早い段階で発表した方が後半のステージが盛り上がるだろうと協力は惜しまなかったのだ。

 

『はーい、こんゆみー! みんな見てる?』

 

[こんゆみー!]

[バラギだ!]

[声が元気そうで安心した]

 

 夢美は2Dモデルの姿でビデオメッセージを録画していた。

 実際の姿はわからなくとも声音で元気そうなことは理解できたため、視聴者達は安堵のため息をついた。

 

『今回はマジでごめん! 本当ならそっちに行きたかったんだけど、体調のことを考慮して出演を見送ることになっちゃいました』

 

[しゃーないって]

[無理しないでもろて]

[体が一番大事]

 

 夢美の欠席について視聴者達は暖かい反応をしていた。いつもは手厳しい者達も、本当は夢美のことを心から心配していたのだ。

 

『まあ、今回の体調不良に関しては旦那のライオンにも責任はあるから、その辺は後で謝罪してもらうとして、いろいろご説明させていただきます』

 

[旦那のライオンというパワーワード]

[どういうことだってばよ]

[まさか……]

 

『えー、簡潔に言うとボテバラギになりました!』

 

「「ぶふっ」」

 

[ボテバラギで草]

[ボテバラギwwwww]

[頼むから笑わせずに素直に祝わせてくれよwww]

 

 まさかの妊娠報告に会場の空気は祝福よりも笑いに包まれることになった。

 

『つーわけで、あたしは今後イベント系の参加は見送ることになるけど、配信はギリギリまでやっていくので優しく見守ってくれ! おつゆみー』

 

「という感じです。はい……」

 

 夢美のメッセージが終わると、レオはどこか気まずそうに告げる。

 

「大変申し訳ございません。夢美は今後配信活動は続けていきますが、ある程度経ったら産休をいただくことになりますので、何卒ご容赦ください」

[ライバーが産休とか初耳だわw]

[そもそも結婚、出産に至ることがなかったからな]

[これぞにじライブ]

 

 こうして夢美の妊娠報告は笑いと祝福に包まれながら完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、お姉ちゃん。〝ボテバラギ〟がトレンド入りしてるんだけど……」

「やっべ」

 


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