Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【アンコール】伝説の幕引き

 会場に鳴り止まないアンコール。

 それを受けたライバー達は一瞬だけ表情を緩めると、再び表情を引き締めてステージへと上がる。

 

「アンコールありがとうございます!」

 

『おおおおおおおお!』

 

[アンコールきちゃあああ!]

[これが本当の最後だ!]

[やっぱあの曲だよな!]

 

 レオが限界を超えて盛り上げた会場の熱は冷めることを知らない。

 ついに二日間に及ぶにじライブレジェンドアニバーサリーが幕を下ろす。

 その瞬間に、全てのライバーがステージ上に集まる。

 その光景はにじライブという伝説のライバー集団を象徴しているかのような神々しい光景だったと視聴者の一人は後に語る。

 にじライブが行うライブのアンコールで歌われる曲。

 それはたった一つだ。

 

「みんなわかってると思うけど、最後の曲といえばアレしかないやろ!」

「そう、私達の始まりの曲!」

「みんなも一緒に!」

 

『V-Sign!』

 

 それはにじライブを代表する楽曲だった。

 過去に行われた音楽ライブも、必ず最後にはこの楽曲で締め括られる。

 視聴者にとっても、ライバーにとっても、裏方の者達にとっても、思い入れのある楽曲なのだ。

 

「みんなぇ! 二日間ありがちょー!」

「この日のことを忘れないために!」

「最後まで全力で突っ走るよ!」

 

 夢美以外の全てのライバーがステージに立ってこの曲を歌う――つまり、過去最高人数で歌う〝V-Sign〟。

 このアンコール部分は、にじライブにとっても歴史的瞬間のため、再びU-tubeの無料配信版でも流れ始めた。

 

『Virtual Endless Tale~♪』

 

 全員が同時に歌い出す。

 

『Virtual Endless Tale~♪』

 

 大勢の歌声が奏でるメロディーからは誰が歌っているか声を特定することは難しい。

 それだけ全員の歌声が混ざり合って一つになっていたのだ。

 

「ひとりぼっちの海原を~♪ 小舟で進む僕達は~♪」

「夜の帳をかき分けて~♪ オールを漕ぎ続ける~♪」

 

[ミコちゃんと姫ちんからだ!]

[今まで一番歌詞と合ってる!]

[海のように広い心の姫ちんと星明りのミコちゃん]

[姫巫女すこ]

[基本バンチョー取り合ってるけどなw]

[これはこれでてぇてぇ]

 

 歌の出だしを歌ったのは乙姫とミコだった。

 最近、二人はかぐやを取り合うようなプロレス芸でコラボを行っており〝姫巫女〟というコラボ名でかぐやそっちのけで人気になっていた。

 

「錨、明かり、羅針盤も~♪ 何も持たない僕達でも~♪」

「光、照らす、その未来へ~♪ 向かっていけるんだ~♪」

 

[バンチョーと社長やんけ!]

[ただの小舟で電子の海に放り出されたからな]

[どっちかというと飛び出ただけじゃ?]

 

 次にかぐやと勝輝が歌い始める。

 にじライブのはじまり。それは勝輝の思い付きと、それを具体案として形にしたかぐやの行動からだった。

 

「「何も見えない暗闇でも~♪ 君はいつだって傍にいた~♪」」

 

「「ずっと前に進めるのさ」」

 

「「「君がいれば~♪」」」

 

[白鳥姉弟!]

[ハンサラ夫婦も!]

[つまり朝昼夜亭]

[御三家もいるぞ!]

 

 今度はまひると白夜、ハンプとサラ、そしてレイン、リーフェ、つばさ。

 元魔王軍と現在家族のように過ごすハンプやまひる。

 彼らの存在はどんなに苦境に立たされていても、再び立ち上がる絆の強さを感じさせた。

 

『何も見えない電子の海~♪ 明かりがないなら光ろう!』

『沈んだっていい、隣を見ろよ!』

『僕はここにいる~♪』

 

 サビは全員で歌い声が混ざり合う。

 そのため、再び声を特定することが不可能になる。

 

『何度だって引き上げるのさ~♪ 一緒に手を伸ばそう!』

『同じ船の上、共に行こう!』

『さあ、掲げろ~V-Sign!』

 

[V-Sign!]

[V-Sign!]

[V-Sign!]

[あ゛っ]

[赤やんとモモタロスが姫ちん挟んで笑ってる!]

[てぇてぇ……]

 

 乙姫の姿でステージに立つタマの両脇には笑顔を浮かべた赤哉と桃華がいた。

 二度と共にステージに揃うことはない和装組がステージ上で並んで歌っている。

 これを奇跡と呼ばなくて何と呼ぶのか。

 

 ステージ後方では、かぐやと椅子に腰かけたままの乙姫、そして勝輝が笑い合いながら三人の姿を眺めて歌っている。

 

 二番から歌い出すのはバッカスにメロウ。

 低音のバッカス、高音のメロウ。

 二人の歌声が醸し出す高低差に観客達も視聴者達も酔いしれる。

 

 そして、ここまで一度もサビ以外で声を出していない者がいることに気がつく。

 

[あれ、レオ君と白雪は?]

[ばっかこっからCメロだろうが]

[この大舞台で三期生が歌うとしたらここからだよな]

 

「航路なんかない、まっさらでいい~♪ 僕達だけの航海~♪」

「海図なんて捨てて進もう~♪ この航海は~♪」

「「いつでまでも、どこまでも、続いていく!」」

 

[うっ(尊死)]

[二人共声の伸びがやべえ]

[バラギがいないことが惜しまれる]

[三期生がここを歌うと本当にどこまでも続いてくれる気がする]

 

 レオと林檎がCメロの部分を全力で歌いあげる。

 物事に永遠はない。Vtuberという安定からかけ離れた職業の中、活動を引退していく者は多い。

 それでも彼らがこの歌を歌いあげると永遠があるのではないかと思えてしまう。

 このステージはそれだけの熱量を持っていた。

 

 

 

 

 

『さあ、掲げろ~V-Sign!』

 

 

 

 

 

[V-Sign!]

[V-Sign!]

[V-Sign!]

 

 ライバーにも、ファン達にも、事務所側の人間達にも、いや、このステージを見ている全ての人間の心に刻まれたV-Sign。

 その光景はたとえどんな終わりのときが来ても、永遠に消えることはないだろう。

 




さてさて終わりがどんどん近づいてきましたね……



メインヒロイン「待たせたな」

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