今やにじライブといえば、Vtuberの代名詞になるほどに有名になった。
一般層にも段々と浸透した配信文化。
その中でもVtuber、いやバーチャルライバーという分野においてはにじライブが手広くやっており、若者の間でもテレビの代わりに見るコンテンツと言われるくらいに成長していた。
かつてアイノココロを含めた四天王の時代から始まったVtuberはにじライブの時代へと変貌を遂げていた。
もちろん、個人勢や歌手活動やライブなどで勢いを伸ばしているVacter所属のライバー達など、有名な者は大勢いる。
しかし、事務所の名前自体がここまで売れることはまずないと言ってもいいだろう。
そんなにじライブに所属するライバーの中でも、登録者数100万人を超える人気ライバーである男は慌てたように病院へ駈け込んでいく。
「お義兄ちゃん! こっちこっち!」
「ありがとう由紀ちゃん!」
義理の妹である由紀に案内され、レオは妻であり同期のライバーでもある夢美の元へと急ぐ。
「あれ、由紀ちゃんまた大きくなった?」
「育ち盛りだからね!」
出会った頃は小学生だった由紀も今ではすっかり大きくなった。
すっかり女性らしくなった由紀は学校でも男子から人気らしい。
「それより、ミコ――ケイトちゃんは来てないの?」
「ケイティは海外でのEN組ライブがあったからな。這ってでも行くとは言ってたけど、間に合うかどうか……」
「弟ができるってずっとキャッキャしてたもんね」
ミコは現在Vtuber界で最も登録者数の多いライバーとして世界を股に掛ける大活躍をしている。
海外ライバーもENだけでなく世界各国で幅広く事業展開しており、もはやにじライブの名前は世界に轟いていた。
「優菜さんは?」
「あいつも海外のバーチャルピアノコンクールがあるから来れないってさ。今頃パリで地団太踏んでると思うぞ」
「あはは……相変わらずだね」
林檎も現在は通常のライバー活動に加えて、バーチャルピアニストとしての活動を行っており、彼女に続くようにVtuberとして音楽家活動を行う者も増えてきた。
中には林檎の母である郁恵の紹介でにじライブに所属したバーチャルバイオリニストもいるくらいである。
「それにしても俺が父親か……」
「もう父親じゃん。ケイトちゃんいるんだし」
「ははっ、それもそうだな」
獅子島レオ、茨木夢美、星野ミコ。
夢星島の三人で家族として活動して育まれた絆はいつしか本物同然となっていた。
そして、ついに夢美がいる分娩室へと辿り着いた。
「夢美、遅れて悪い」
「お、せぇ、よ……あ゛あ゛あ゛っ!」
レオは苦し気な夢美を見て、すぐに除菌を済ませて夢美の手を握る。
「大丈夫だ。俺が傍にいるから」
「お゛うっ!」
それからレオはずっと夢美の手を握り続けた。
夢美も痛みに耐え、万力のような力でレオの手を握るが、レオは痛がる素振りすら見せずに、夢美を支え続けた。
そして、ついにそのときはやってくる。
「――――――!」
この世に新たな生を受けた子の産声が響き渡る。
「元気な男の子です!」
助産師の言葉を聞いて、夢美もレオも、そして駆けつけていた家族達も安堵のため息をこぼした。
「よく頑張ったな、夢美」
「レオが傍にいてくれたから頑張れたんだよ」
二人は笑い合うと、唇を重ね合う。
それから、赤ん坊を抱いている夢美の写真を友人やライバー仲間へと共有する。
すると、一分もたたない内にレオと夢美のメッセージ欄は祝福の言葉の嵐となった。
「しばらくは産休だけど、徐々に活動も戻していかないとね。みんなが待ってるし!」
「お互いの両親を頼ることにはなるだろうけど、俺も全力で支える。けど、無茶だけはするなよ?」
「バーカ、無茶しなくてもそのくらいやってのけるっての」
夢美は産後とは思えないほどに元気な様子で、獰猛な笑みを浮かべた。
「我、にじライブぞ?」
次回、最終話