Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【それからどしたの】おはっぽー、ひさしぶりー

『タマちゃん、もう登録者数十万人なんてすごいわ!』

『私はタマちゃんの漫画好きだから落ち込まないで!』

『辛いことがあるなら言って! 私はライバーの味方だから!』

 

「……あちゃー、この傾向はよくないな」

 

 目が覚めるのと同時にタマはため息をつく。

 ライバー時代に原はマネージャーのような立場だった。

 当時はまだ明確にマネージャーというポジションがなかったため、ライバーと兼業している一期生の補佐という形ではあったが、二期生にとって原は頭の上がらない存在だった。

 

「どうしたもんかねぇ」

 

 タマとしては原のこと以外にも、自分なんかが〝未来あるVの卵〟にVとしての在り方を教える資格はないと思っていた。

 過去の罪は消えない。

 先輩や同期のおかげで前を向けるようにはなったものの、それはそれ、これはこれである。

 

「うげっ、今日は事務所行く日かぁ……」

 

 そして、よりにもよって今日は事務所での打ち合わせの日だった。

 タマは〝NO NAME〟として林檎の作曲したピアノ曲アルバムのCDジャケットを担当することになっていたのだ。

 着替えて打ち合わせに行くと、集合時間前だというのに既に林檎は事務所にいた。

 

「おはよう、白雪」

「おー、タマさーん。おはっぽー」

 

 相変わらず気の抜ける話し方をする林檎にどこかタマは安心感を覚えていた。

 デビュー当時から変わらない安心感、そして確かに感じる成長。

 林檎の存在にはタマ自身救われていたのだ。

 

「やー、今回もバシっと最高のイラスト頼みますよー」

「簡単に言ってくれちゃって……ま、最高のイラストは描くけどね」

 

 今やタマも視聴者から人気のイラストレーターだ。

 過去の所業もあり名前こそ出せないが、タマは十分幸せを感じられていた。

 

「そういえば、バラレオ夫婦は元気?」

 

 そこでふとタマは林檎の同期であるレオと夢美のことを尋ねた。

 

「元気元気―。配信の絡みは減りましたけど、ちょくちょく家には遊びに行ってますよー。あの家からは良質なてぇてぇニウムが摂取できるんすよー」

「何その未知の物質」

「いやー、最近てぇてぇ減り気味なんで栄養失調気味なんすよねー」

「確かに新規の視聴者が増えてやりづらくなったものね……」

 

 レオと夢美が結婚したことで、カプ厨は歓喜した。

 だからといって大てぇてぇ時代が始まることはなかった。

 これに関しては、ガチ恋勢が悪いというわけではない。それも一つの推し方だ。

 問題があるとすれば、カプ厨、ガチ恋勢の両方に一定数存在する厄介勢の存在だ。

 要するに、推し方以前に人として最低限のモラルのない者達が、視聴者に増えてしまったことで身動きがとりづらくなってしまったのだ。

 これは過激な発言や企画をするライバーにとっても死活問題だった。

 

「まー常識やルールって変わるもんですからねー。私はやれる範囲で全力を出すだけですよー」

「それがさらっと言えるのは、さすが三期生ってとこかしらね」

 

 つくづくばけものフレンズとも呼ばれるこの三人は違うな、とタマは呆れたように感心していた。

 

「そうだ。せっかくだから打ち合わせ終わったらレオ達の家いくー?」

「えっ、いいの? アタシあまり絡みないけど……」

「んなこと今更あの二人が気にするかってのー」

 

 突然の提案に困惑していたタマだったが、せっかく誘ってくれたのだからと素直にその言葉に甘えることにした。

 

「わかった。それじゃお邪魔させてもらおうかしらね」

 

 年単位で久しぶりに会うバラレオの二人。

 二人の間に子供ができて以降会っていなかった怪物が現在どうなったか、何だかんだで気になっていたタマであった。

 

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