Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【評価】気になる結果は?

 動画は既に提出した。

 あれだけ周りから高評価だったのだ。間違いはないだろう。

 他にも課題があるというのに、自信のある作品を提出しただけ胸が軽くなる思いだ。

 動画課題の提出期限も明後日に迫っている中、クラスの大半の生徒はまだ未提出。

 こいつら大丈夫なのかと思わないでもない。

 

「乃尋さんはもう動画提出しましたか?」

 

 教室に入るなり飛乱さんが話しかけてくる。

 案の定、内容は動画課題についてだった。

 

「とっくに完成はしてるし、確認と微修正も終わってるから出したよ」

「さすがです」

 

 飛乱さんは苦笑すると悩まし気な表情を浮かべる。

 

「私は何かこれじゃない感が強くて、作り直したいんですよねぇ」

「えっ、提出期限明後日だよ?」

「そうなんですけど、やはりクオリティにはこだわりたいじゃないですか」

 

 丸々作り直すなんて慣れていない人からしたら相当な労力がかかる。あまりおすすめはできない。

 苦労するのは結局自分自身だ。課題は他にもあるし、下手に手を貸せばこっちまで苦労することになる。

 

「まあ、困ったことがあったら何でも言ってね」

「本当ですか? ありがとうございます、乃尋さん!」

 

 適当な気休めを言うと飛乱さんは花が咲くような笑顔を浮かべた。うっ、罪悪感が……。

 結局、飛乱さんは提出期限ギリギリまで作業をしていたらしく、VARで前日まで連絡してきていた。

 

『乃尋さん、これでどうでしょうか?』

「文字が小さすぎ。空間が不自然に空いてるし、文字に枠を付けないと見づらい」

『本当ですね! 枠を付けたらとても見やすくなりました!』

「あと、ここは強調したい部分は切り抜いてアップにしてSEつけたりしてもいいかも」

『すごい……やっぱり乃尋さん天才ですよ!』

「……そりゃどうも」

 

 VARの通話機能を使ってやりとりしていたが、正直教えるだけで疲れてしまった。

 最後の方はもうチャットで質問に答えるだけだったので、要点をまとめて送ったら感謝の言葉と共に、無事に提出ができたとの連絡が返ってきた。

 それから数日が経ち、動画課題の評価が返ってきた。

 結果は、VARに入っている科目別の成績表の項目で見ることができる。

 いきなりS評価取っちゃうかー、今日はステーキだなー、なんて浮かれた気持ちで〝動画制作〟の評価欄をタップする。

 

「C評価……?」

 

 見間違いかと思ったが、何度目を擦っても表示されている評価は変わらない。

 評価はS、A、B、C、Dの五段階で評価され、私はこれまでの授業での課題は全てC評価、つまりギリギリ赤点ではない〝可〟という評価をとってきた。

 今回の課題もそれと同様の評価ということだ。

 課題結果から算出された振込金額もたったの一万円。家賃光熱費がないとはいえ、来月まで暮らすにはあまりにも心もとない。

 

「乃尋さん! ありがとうございます!」

「ぐえっ」

 

 信じられない気持ちでボーッとしながら帰り支度をしていると、背後から飛びつかれて思わず変な声が出る。犯人はもちろん飛乱さんだ。

 飛乱さんは目を輝かせながら、私の手を握るとブンブンと上下に振り回す。

 

「乃尋さんがわからないところを教えてくれたから無事A評価を取れました!」

 

 完成度の高い私の動画がCで、ギリギリに提出した飛乱さんの動画がA。

 こんなの納得がいかない。

 

「乃尋さん、どこにいくんですか?」

 

 飛乱さんの言葉に答えず、私は荷物をまとめて教室を出た亀梨先生の後を追った。

 

「亀梨先生!」

「英さん、どうかしましたか?」

 

 廊下を歩いていた亀梨先生を呼び止めて叫ぶ。

 

「私の動画、出来は良かったですよね!?」

 

 私に対して、亀梨先生は冷ややかな声で告げる。

 

「ええ、かなり凝っていて一朝一夕で身に着けた編集技術じゃないことはよくわりました」

「だったら何で!」

「あのね――誰がギャルゲーのOP作ってこいなんて言った?」

「っ!」

 

 歯に衣着せぬ亀梨先生の言葉に私は言葉を失う。

 亀梨先生は敬語を崩すと、茫然と立ち尽くす私に向かって続ける。

 

「課題の内容は自己紹介動画。一瞬で文章が流れるだけじゃ、自己紹介としては不適切よ」

 

 何も、言い返せない。

 自己紹介文こそ入れていたが、演出に凝ったため表示された時間は極めて短かったのだ。

 言われてみれば、私の作った動画はただのギャルゲー風MADでしかなかった。

 

「それに、あなた一切自分の声を入れてないでしょ」

「だ、ダメなんですか?」

「別に指示はしていないから問題ないわ。ただVたれの中でも声っていうのは重要な要素よ。何せ素顔を出さないんだからね」

 

 私は声が可愛くない。素人の一般女性感が強い声なんて入れても動画の魅力は上がらないと思っていたのだ。

 でも、配信実習になったら否が応でも話す機会はやってくる。私はそんなことすら考えられていなかった。

 

「Vたれとして重要な要素を自己紹介から削る。その意味がわかる?」

 

 そんなのセールスポイントを自分から捨てるようなものだ。

 私は紹介すべき部分を紹介せず、ただ自分の編集技術を見せびらかしていただけ。

 その事実に私は打ちのめされた。

 

「こうして評価について自分から質問にきた姿勢は評価に値します。これからもめげずに頑張ってください」

 

 慰めの言葉をかけると、亀梨先生は振り返ることなく去っていった。

 すっかり日も落ち日の光の差し込まない廊下。

 切れかかった蛍光灯に照らされながら、私はただただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

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