自室に戻ってから何をするでもなく、ボーッと無駄な時間を過ごしていた。
何が唯一みんなに勝てる要素だ。
編集技術をひけらかして見せるべきものを疎かにするなんて、編集ソフトに触ったばかりの初心者のすることである。
みんなから褒められて、みんなを見下していた自分が恥ずかしい。
劣等感からくる承認欲求に取り憑かれ、私は最低な人間に成り下がっていた。
初回のコンプライアンスの授業で学んだことが一つも活かされていない。
このままいけばきっと私はバーチャル学園を退学になるだろう。
それもいいのかもしれない。いや、本来はそれが正しい形なのではないだろうか。
そもそも、私みたいな何も為せない無能で無価値なゴミカスがバーチャル学園に入学できたこと自体何かの間違いだったのだ。
大人しく推しの切り抜きだけを作っていればいいものを何を勘違いしていたのだろうか。
「そうだ。しばらく更新してなかったっけ」
ここ最近ずっと学園の課題が忙しくて碌に動画投稿もできていなかった。
きっとリスナーも皆さんも心配しているだろう。
動画の一番最新にあるコメント欄を開いてみる。
「えっ」
コメント欄には確かに私を心配する声はあった。
[飽きたか]
[編集凝り過ぎて疲れて失踪パターン]
[どうせイシュリー専門の切り抜きじゃ稼げないって理解して逃げたんやろ」
だが、その中には私がやる気をなくして失踪したとするコメントもあった。
「違う……私は忙しくて……」
バーチャル学園での日々は目まぐるしい。
課題の量も多いし、バイトだってまだ見つかっていないし、推し活に割ける時間はほぼなかったのだ。
……本当にそうだろうか。
条件はみんなおなじはずだ。私はそれこそ低クオリティの課題を提出して余裕をぶっこいていたくらいである。
そんな私が忙しいなんて口にするのはおこがましいのではないだろうか。
弁解しようとコメント欄に返信を書き込もうとした手が止まる。
今更、何を弁明するんだ。
私は愛のある切り抜きだとシュメルの民の皆さんに褒めてもらい、チャンネル登録者数が一万人を超えたことで調子に乗っていた。
それはイシュリーの手柄であって私が受け取っていいものじゃない。
なのに、私は自分の技術一本でここまできたと勝手に勘違いをしていたのだ。
一番嫌いな人間に、いつの間にかなっていた。
バーチャル学園を退学したところで、この場所に戻る資格もない。
「何してんだろ、私」
スマホを投げ出してベッドへと横たわる。
その日の寝つきは最悪だった。