結局、一睡もできないままバーチャル学園に向かった。
目が覚めてすぐに最低限の身支度を済ませて家を出たせいか、だいぶ早く学園についてしまった。
教室には当然誰もおらず、やることもない私はただぶらぶらと学園内をうろついていた。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト……」
すると、レッスン用の教室の方から声が聞こえてきた。
こっそり覗いてみると、そこには汗を流しながら自主的にダンスレッスンをしている大牙さんの姿があった。
前回のダンスレッスンでは、大牙さんもあまりキレのある動きをしていなかったが、今の大牙さんは前よりも動きにキレがある。
一心に自主練に打ち込む大牙さんの姿を見て、バカな私ではようやくわかった。
周りに比べて劣っているなら、人一倍努力しなければいけない。
そんな当たり前のことすら私はしていなかったのだ。
大牙さんに気づかれないようにこっそりとレッスン用の教室から離れる。
これ以上、自分の惨めさを見せつけられるのはごめんだった。
その日の授業の内容も頭に入ってこず、授業が終わるのと同時にさっさと帰り支度を済ませて教室を出る。
「英さん」
廊下に出ると、亀梨先生に声をかけられた。
ついに来たか。そう思わずにはいられなかった。
どうせこれから退学勧告をされるのだろう。
「あなたは自分の本当の武器を理解してる?」
そう思っていたのだが、先生は予想外の言葉を口にした。
てっきり退学勧告をされると思っていたのだが、亀梨先生から告げられたのはそんな言葉だった。
「それってどういう?」
「それを考えるのも課題の内ですよ」
珍しく笑顔を浮かべると、亀梨先生は去っていった。
先生の意図はわからないが、ひとまず退学にはならかったみたいだ。
「とりあえず、ご飯食べよ……」
お腹がなり、自分が空腹だということに気がついた。
食堂にでも行こう。幸い、食堂には低成績者向けの安い定食がある。
自炊した方が安いのは理解しているのだが、ある程度計画的に買わないと食材を余らせてもったいないことになる。
そうなると、一食が安い食堂に足が向かうのは道理というものだった。
食堂へ向かうため校舎の外に出ると、天気は土砂降りの雨だった。
どうせなら校舎内に食堂を作って欲しかったが、使わなくなった職業訓練場を安く買い叩いた影響だろう。
校舎には貸し出し用の傘が置いてあるため、ずぶ濡れになることはないが気持ちは滅入る。ただでさえこっちは落ち込んでるというのに……。
食堂に着いた私は四百ポイントのご飯と味噌汁、納豆だけの定食を注文して席に着く。
周囲には仲良く談笑している他クラスの人間もいて、ボッチの私の心を抉り続ける。
「ここ、いい?」
黙々と心を殺して食べ進めていると、誰かから声をかけられた。
顔を上げればそこには大牙さんがいた。