Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【一念発起】情けは人の為ならずの精神

 大牙さんの言葉は私に勇気をくれた。

 自分を信じてやってみよう。そう思えるようになったのだ。

 私には才能なんてないかもしれない。それでも、努力で掴み取れるものがあるはずだ。

 

 だったら答えは単純だ。思考停止をせず、正しい方向性の努力を人一倍するだけだ。

 

「乃尋さん、今日の課題一緒にやりませんか?」

「うん、もちろん!」

 

 私だってバーチャルタレント候補生なのだ。

 他のみんなと同じスタートラインに立つ権利があるはずなんだ。

 だから、私は今できる最善のことをしよう。それが私の出した結論だった。

 

 まず、私のするべきことは周りを知ること。

 飛乱さんのように社交性のあるクラスの中心人物と積極的に関わることで、自然と関わることのできる人間も増える。

 

「何か手伝えることとかあったら気軽に言ってね」

 

 誰かの手伝いをすることで、その人の考えや長所を掴むのだ。

 コミュニケーションを取ることで、その人の考え方や価値観に触れられる。

 

 そして、その積み重ねが私にとって大きな財産になるのだ。

 情けは人の為ならずとはよく言ったのものだ。

 そうやって、クラスメイト達の長所を真似できるところは真似して自分の糧にしていく。

 向こうも私が課題の手伝いをしている以上、関係性もWIN-WINである。

 大切なのは相手を尊敬し、教えてもらっているという感覚で接すること。

 見下してマウントを取ったところで得られるものは何もないのだ。

 

「亀梨先生、放課後もレッスン室使えませんか?」

「申請さえしてくれれば使えますよ」

「ありがとうございます!」

 

 放課後はレッスン室の使用申請をして自主練。

 ボイトレもダンスも何度も反復して体に叩き込むしかない。

 幸い体力に自信はある。こちとら日々肉体労働で鍛えられていたのだ。

 そんな風に過ごすようになってから何かが変わり始めた気がした。

 学園では基本的に誰かと話している時間が増え、放課後も自主練をしない日は飛乱さん達と過ごすようになった。

 

 そんな中、未だにあまり話せていない子がいる。

 隣の席の大牙さんだ。

 私が立ち直るきっかけをくれた彼女だが、私を含め周囲とあまり積極的に関わろうとはしなかった。

 

「ねぇ、飛乱さんって大牙さんと仲良かったりする?」

「うーん、話しかけたら答えてくれますけど、仲が良いかと言われると微妙ですね」

 

 それは私だけではないみたいで、コミュ力の塊のような飛乱さんでさえ、あまり話したことはないようだった。

 別に大牙さんが一人でいたところでこちらに影響はないが、どうにも気になってしまう。

 

「そういえば、大牙さんって普段はあんまり関西弁使わないよね」

「え?」

「ほら、ときどきイントネーションが関西っぽいじゃん」

 

 大牙さんは基本的に標準語で話している。それでも授業で発言するときなど、偶にイントネーションが関西圏っぽくなるときがあるのだ。

 なんなら私とはガッツリ関西弁で話してくれたくらいである。自惚れでなければ、私には少しだけ心を開いてくれていたのだろうか。

 

「あんまり話したことないので気がつきませんでした。乃尋さんは周りをよく見ているんですねぇ」

「は、はは……」

 

 みんなから技術的に盗めるとこは盗んでいこう、という気持ちで普段から観察しているなんて言えるはずもなく、私は適当に笑ってはぐらかした。

 


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