Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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ただいま戻りました!




【みんな祝って!】10万人記念凸待ち! その2

『にしても、バラギがここまで伸びてウチは嬉しいで』

 

 まひるの次にかけてきた、かぐやは本当に嬉しそうにそう言った。

 

「あ、ありがとうございます。でも、あたし達キチンと絡むの初めてじゃないですか?」

 

 先輩に祝福されて嬉しい気持ちはあるものの、コメント欄以外では全く絡んだことのないかぐやに祝われたことで、バラギは少し戸惑っていた。

 

『後輩ライバーに伸びて欲しいと思うのは当然やろ?』

 

「バンチョー……ありがとうございます!」

 

[怖いだけでいい人なんだよなぁ]

[にじライブあったけぇや……]

[俺も職場にこんな先輩欲しかった……]

 

 かぐやはにじライブ内でも後輩思いなことでも有名だ。

 配信上ではよく怒声を轟かせたり、奇行に走っているイメージが強いが、裏では礼儀がしっかりしていて、人間関係には人一倍気を遣っているのだ。

 

『本当はウチもあんたとコラボしたいんやけど、なかなか時間取れなくてすまんなぁ。いろんな企画平行して準備してることもあってしばらくは無理そうや』

「めちゃくちゃ案件の配信やってるし、番組も持ってるんですからしょうがないですよ。たまにコメント欄に来てくれるだけでも嬉しいです! 今度はリアルでも是非お会いしたいです!」

『……せやな。事務所で会うこともあるやろうしな。そのときを楽しみにしてるで。これからも見守ってるから、頑張るんやで』

「はい!」

『じゃ、ウチはこの辺で。またな』

 

 次に待っているライバーがいるため、かぐやは祝福の言葉をかけて、そうそうに通話を切った。

 

「まさかバンチョーまで来るとは……。さて、次は――だから早ぇよ!」

 

[さて、激しい凸戦争を勝ち抜いたのは誰だ?]

[にじライブのライバー全員が必死にバラギにかけてると思うと笑う]

[愛されてるなぁ]

 

『おはきびだんごー。はじめましてだね、吉備津桃華でーす』

「あ、桃タロスだ」

 

[初見桃タロス呼びは草]

[やべえのが来てしまった……]

[絶対バラギと会わせちゃいけないライバーNo.1]

 

 かつて事務所の方針でコラボが増えることになる予定だったライバー吉備津桃華。

 彼女が現れたことで、コメント欄はざわつき始めた。

 

「はじめまして、いつも楽しく配信を拝見させていただいております」

『何でそんな棒読みなのさ?』

「いや、10万人記念枠BANされたくないなーって身構えてました」

 

[そりゃ身構えるよなぁ]

[バラギも結構配信で下ネタ言う方だけど、桃タロスほどじゃないからなぁ]

[大丈夫? 突然AVの音声流したりしない?]

 

 何せ桃華は普段から性的な話題を積極的にしていくので、加減を間違えて何度も炎上しているのだ。

 下ネタを言っても、最低限のラインに気を遣っている夢美としては気が気でないのである。

 

『ああ、そうだ。10万人おめでと』

「はい、ありがとうございます」

 

[塩対応で草]

[こんなに抑揚のない声出すの初めてだなw]

[バラギがここまで警戒するってだけでやばさがわかる]

 

『そんなに警戒しなくても10万人記念なんだから、やばい話なんてしないわよ』

「……本当に?」

『マジだって。ところで前から聞きたかったんだけどさ――好きな体位は?』

「もうやだこの人!」

 

[これは酷い]

[バラギが泣いて逃げ出す下ネタ女]

[急いで通話を切るんだ! 間に合わなくなっても知らんぞ!]

 

 しかし、最初こそ下ネタ魔人として有名な桃華を警戒していた夢美だったが、話している内にあっという間に打ち解けていき、会話内容はどんどん下世話な方向へと向かっていった。

 

『なあ、全裸と着衣だったらどっちのシチュが好き?』

「着衣かなー」

『マジで!?』

「何かそっちの方が興奮しない? あっ、二次元の女の子限定だけど」

『あー、そっちか。てっきり獅子島君とそういうプレイしてるのかと』

「だから付き合ってないって!」

『ごめんごめん冗談。私も赤哉とよくそういう話出るから、二人が付き合ってないのはわかってるって』

 

[すっかり意気投合しやがったぞこいつら!]

[誰か赤鬼とライオン連れてこい!]

[たぶん二人共必死に通話ボタン押してるんだよなぁ]

[男性陣の胃がマッハ]

 

 それから話は進み、話題はそれぞれ組むことの多い、レオ、赤哉の話に変わっていった。

 

『てかさー、赤哉と実際仲は良いけど、結婚相手として考えたらどうよって話よねー』

「名板さん、優しいと思いますけど」

『いや、あいつ私には結構当たり厳しいぞ』

「あー、レオも褒めるときも絶対何かしら憎まれ口叩きますよ。こっちとしては素直に褒めて欲しいときもあるんですけどねー」

『わかる! 絶対素直に褒めないよね!』

 

[下ネタ談義かと思いきや突然のてぇてぇ]

[女子会で彼氏の愚痴を言ってるようにしか見えない]

[さすがはにじライブ男女CP代表だな]

 

『ちょっとムカついたから、今度ドッキリしかけようと思っててさ』

「ドッキリ?」

『通話繋いだ時に『バスタオル取ってー!』って呼びかけるっていうドッキリ』

「ぎゃはははは! それやばいですね! 同棲疑惑でて炎上まで見えましたよ!」

『でも、私らなら炎上しない気もするんだよね』

「あたしもレオに仕掛けてみようかな。たぶん、あたし達なら100%炎上しないんで」

 

[だろうね]

[レオ君とばっちりwww]

[あかやんもとばっちりなんだよなぁ]

[あかやんとレオ君の受難は続く]

 

『おっと、ちょっと長話しすぎたわね。次の人に譲るから、続きはまた今度話しましょ』

「了解です! ありがとうございました!」

 

 のちにこの二人の会話部分は切り抜き動画がたくさん作られるのだが、再生数は他のライバーとの会話部分の切り抜きよりも圧倒的に多かった。

 もしも、レオとの炎上事件がなければこの二人のコラボが増えていたわけだが、ある意味事務所の方針は間違ってはいなかったと言えるだろう。

 

「いやぁ、桃タロスやばかったな。マジで」

 

[お前も十分やばいぞ]

[人の振り見て我が振り直せ]

[混ぜるな危険、という言葉の意味がよくわかった]

 

「それじゃ、次は――」

 

 それからはにじライブ所属のライバー達は夢美へとどんどん通話をかけていった。

 夢美も捌き切れるか不安だったが、夢美よりも経験豊富な先輩ライバー達は適度に配信を盛り上げて早々に次のライバーへと繋げていた。

 

「……しかし、マジで先輩達が全員かけてくるとは思わなかった」

 

[そうやってお前はまたすぐに伝説を作る]

[一期生と二期生全員に登録者数10万人を祝われた女]

[一期生ってもうバンチョーしか残ってないんだっけ……]

[かっちゃんはほぼ活動休止、姫ちんは引退だもんな]

 

「おっ、また通話が――ヴェッ!?」

 

 一期生、二期生の全てのライバーとの通話を終えたことで夢美は次に通話が来るのはレオか林檎だと思っていた。

 それゆえ、自分に通話をかけてきた相手が誰かわかった瞬間に、驚きの声を上げてしまったのだ。

 

『やあ、はじめましてだね』

 

[!?]

[!?]

[!?]

[この声、まさか!]

 

『どうも、こんにちポンポコー! 久しぶりの登場の狸山勝輝(たぬやまかつき)ですよー、茨木君ははじめましてだね』

「は、はじめまして茨木夢美です。えっ、ていうか…………え?」

 

[そらまったく活動してなかった先輩が10万人祝いに来たらビビる]

[マジでかっちゃんなんか!]

[活動休止じゃなかったの!?]

 

 狸山勝輝。にじライブが発足してから最初にデビューした三人のライバーの内の一人だ。

 一期生の中で唯一の男性ライバーということもあり、かぐや達女性ライバーとの絡みは少なかった。それ故、当時知名度はそこまででもなかった。

 しかし、勝輝は男性Vtuberの存在がメジャーではなかった頃に、男性Vtuberにも面白い人はいるということを知らしめた立役者なのだ。

 一年前ほどからリアルが忙しくなるため、ほとんどライバーとしての活動はできなくなると発表し、それ以来彼が配信をすることはなかった。

 そんな幻の一期生が自分の配信にやってきたことで、夢美の思考は完全に停止していた。

 

『心配かけてごめんなー。リアルが忙しくて全然ライバー活動はできていないけど、これでも現役ですよっと』

「えっ…………え?」

 

[まだ混乱してて草]

[幻の一期生きたらこうなるわ]

 

『いやぁ、驚かせて悪いね。茨木君のことはかぐや君から話はよく聞くし、切り抜き動画もちょくちょく見てるから知ってはいたから、せめて一言お祝いしたくてね』

「――はっ、あ、ありがとうございます! まさか、あの〝かっちゃん〟先輩に祝ってもらえるとは思ってなかったので光栄です! 配信の方は全然見てなかったんですけど、凄い人だってことは存じていました!」

『はははっ、素直な子だね。ありがとう』

 

 夢美の正直な言葉に、勝輝は楽しそうに笑う。

 

『長くなってもあれだから、最後にこれだけ言って終わりにするよ。これからライバーをやっていく上で辛くて苦しいことはたくさんあると思う。そんなときは、事務所や周りのライバーを頼りなさい。君が笑顔でいることは事務所、ライバー仲間、そしてリスナーが何よりも望んでいることだ』

「はい! ありがとうございます!」

 

[あれ、視界が歪んで前が見えない]

[かっちゃんもいろいろあったもんな……]

[姫ちんのことは辛かったよな……]

 

『それじゃ、僕はこの辺で失礼するよ』

「本日はお忙しいのにわざわざ来ていただきありがとうございました! あたし、頑張ります!」

『うんうん、これからも応援しているよ』

 

 勝輝との通話が切れる。

 夢美は彼に言われた言葉を噛み締めていた。

 辛くなったら周りを頼る。それは幼少期、孤独を感じて生きていた夢美にはあまりない発想だった。

 そして、自分がいかに周囲に支えられてこの場所に立っているかを再認識した。

 

「……いつかまた話してみたいな」

 

[レオ君もだけど、どうして男性ライバーはぐう聖な連中ばかりなのか]

[これワンチャン姫ちんも来るのでは?]

[引退したライバーはこれないだろ]

 

「かっちゃん先輩。とてもためになるお言葉をかけてくださりありがとうございました。それじゃ、残り二人で凸待ちコンプだから、レオと林檎ちゃん凸してくれ」

 

[ガチャみたいに言うんじゃない]

[二人に対する信頼感すこ]

[デビューしてからしばらくはバラレオと焼き林檎って感じだったけど、最近は三人セットも増えたよな]

 

 レオ、林檎を除いたにじライブ所属ライバー全員と通話を終えた夢美は、画面の向こうで自分の配信を見ているであろうレオと林檎に呼びかける。

 

 しかし、五分以上経ってもレオと林檎が通話をかけてくることはなかった。

 




やっぱり登場人物が多いと、なかなか一話で纏めるのは厳しいですね。
次回で10万人記念枠は終わりになります。
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