Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【誰やねん】てぇてぇ文化アンチ

 リンちゃんの衝撃的なデビューから一週間が経った。

 その間も、リンちゃんの配信は勢いを落とすことなく、むしろ加速していく一方だ。

 V業界は日々新しいVたれが生まれては消える。競争が激しい業界だが、その中でもリンちゃんの存在は別格と言っても過言ではなかった。

 動かない立ち絵でここまでの功績を残せたのはバーチャル学園プロジェクト全体を見ても大きいだろう。

 

 そんなリンちゃんと初配信前に絡みが発生したことで、私の知名度も上がっていた。

 ありがたいことに、今も大勢のリスナーさん達が私の初配信を心待ちにしてくれている。

 それに伴い一つの弊害が発生していた。

 

[英乃尋@みんなおはよう! 今日も一日頑張っていこう!]

 

[鳥間のり子@のっふぃおはよ!]

[花蘭花恋@おはよう、のっふぃ!]

[村木香江良@おはよ!]

 

 いや、誰やねん。

 

 ついツッコミたくなる衝動を抑え、リプライをくれた全員に返信する。

 どうやら話題性がある私と絡むことで自分の知名度を上げようとする他クラスの子が大勢いるようだった。

 伸びるためにやれることをやる姿勢は良いのだが、こうもあからさまだと逆効果な気もする。

 

 何ならさっそく4DLIVEまとめでは早速〝【悲報】のっふぃ、登録者数乞食の候補生達に集られるwww〟なんて記事も出ているくらいだ。

 学園内でも声をかけられる頻度は増えたし、次に初配信を行ったC組、D組の生徒なんて私やリンちゃんの話題を配信で話しているくらいだ。

 こうなってくると承認欲求が満たされるよりも面倒くささの方が出てしまう。

 そんな理由で、私は人が少ない早めの時間にバーチャル学園へ向かった。

 そして、何よりこの時間なら大牙さんが自主練をしている。彼女とは二人きりなら話もできるし、何より私に擦り寄ってくるようなことはしない安心感があったのだ。

 

「おっ、いたいた。大牙さーん! 片付け手伝うよ!」

「何だ。英か」

 

 どこか冷たい雰囲気を纏い、大牙さんは清掃の手止めると目を細めてこちらを見た。

 

「あれ、何か怒ってる?」

 

 いつもより刺々しい雰囲気を感じ取り、恐る恐る尋ねると大牙さんはいつもより低い声で告げた。

 

「……随分と人気者になったみたいやな」

「そうなんだよ。ここぞとばかりに絡んでくる人が多くて困っちゃうよ」

「ハッ、贅沢な悩みやな」

 

 大牙さんは吐き捨てるように告げると続ける。

 

「悪いけど、ウチはそないな連中とちゃう。今後は絡まんでくれるか?」

 

 そう言うと大牙さんは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「ちょっと待ってよ」

「うちはクソみたいなてぇてぇに巻き込まれるのはごめんや。人気は自分自身の力で勝ち取る。お前と違ってな」

「……どういう意味?」

 

 まるで私が伸びたのは実力じゃないと言わんばかりの言葉にさすがにカチンときた。

 

「そのまんまの意味や。ウチはてぇてぇなんて使わなくても人気になる」

 

 女性ファンの増加により男性Vのアイドル化が進み、Vたれのガチ恋勢男女とカップリングを楽しむカプ厨による血で血を洗う三つ巴の戦いが発生し、男女のカップリングを楽しむ〝男女てぇてぇ〟の時代は終演を迎えた。

 現在はシンプルな同期間の絆を感じる〝同期てぇてぇ〟が人気の時代なのだ。

 

「ウチはな、てぇてぇ文化が大嫌いやねん。同期だから、良くコラボするから、そないな理由で仲良くあることを強制される。少しでも絡みが減れば不仲説が流れる。ホンマ、アホらしくてかなわんわ」

 

 大牙さんの言い分もわからないでもない。誰と仲良くしようが本人の自由だ。

 それをファンの前で仲良しアピールをしなければ不仲扱いされるのは確かに息苦しさがあるだろう。

 

「それにウチはてぇてぇを利用して名を上げる奴がいっちゃん好かんねん」

 

 私を睨み付けると、大牙さんは続ける。

 

「人を数字としか見てない、吸い取れるだけファンを吸い取ったら切り捨てて次にいく。そんな奴、好きになれるわけないやろ」

「なっ……!」

 

 今度こそ完全にライン越えだ。この女、言わせておけば……!

 

「私は売名のためにみんなと仲良くしてるわけじゃない!」

 

 良いところは取り入れて、自分の成長に繋げたいだけだ。人を利用価値で計ったりなどしていない。

 

「なら、ウチに義務みたいに話かけたりなんてせんでもええで。どうせ仲良くする気もないんやろ。またてぇてぇ営業の出汁にされたらかなわんからな」

「はぁ!? 被害妄想も大概にしてくれない? 隣の席だから話振ってるだけでしょうが!」

「そやからそれがいらんっちゅうとるねん!」

 

 大牙さんは敵意剥き出しで私を睨み付ける。

 

「同じバーチャル候補生である以上、必要な場面じゃ同期として協力する。せやけど、それだけや」

 

 吐き捨てるようにそう言って、大牙さんはレッスン室を出ていった。

 レッスン室の床はそれ以上掃除する余地なく全面綺麗になっていた。

 

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