亀梨先生と話した後、私は気になって現在残っている箱根タマの切り抜き動画を見ていた。
『はーい、おはたまー。箱根タマです。今日はリスナーさんのリクエストに応えたキャラデザをやっていくので、作業に付き合ってもいいよーって人は見ていってくださーい』
[おはたまー]
[おはたまー]
[おはたまー]
箱根タマの配信。それは今の亀梨先生からは想像もつかないほどに清楚な配信だった。
人もよくリスナーを大事にして、絵を描くことに情熱を持っている。
面白さよりも夢を応援したくなる。そんな印象の強いVたれだった。
『今日のリクエストをくれたのはぬえんさんです。本当にいつも応援してくれてありがとうございます!』
[ぬえニキやったやん]
[ぬえんさん:収益化はよ]
[スパチャ投げたがってて草]
リスナーさんとのやり取りも微笑ましい。
箱根タマの描くイラストはパッとしない絵柄だが、どれも可愛らしいものだった。
これで本人も自分でデザインしているのだから末恐ろしい。
「それにしても、このデザインどこかで――あぁぁぁ!?」
あることに気がつき、私は思わず悲鳴を上げてしまった。
そして、慌てて画像を保存すると大牙さんの部屋へと向かった。
大牙さんが何故てぇてぇを嫌っているのかはよくわかった。
亀梨先生――いや、箱根タマの事件があったからこそ、てぇてぇに対して過敏になっているのだろう。
だけど、それはてぇてぇの根本を否定しているわけではない。
むしろ、その逆だ。
てぇてぇが好きだったからこそ上辺だけでのてぇてぇが嫌いなのだろう。
「大牙さん!」
「……何やこないな夜更けに騒々しい」
大牙さんはドアを半開きにしたまま不機嫌そうな声を上げる。時刻はすでに零時を過ぎており、部屋を訪れるには非常識もいいところだろう。
それでも、今はこの人に確認しなければならないことがある。
「ぬえんさん」
「っ!」
「確か、箱根タマを初期から追いかけてる有名リスナーさんの名前だったっけ」
大牙鶫、タイガー鶫、トラツグミ……そして鵺。
ここまで露骨に名残を残せば私にもわかる。
「推しだったんでしょ、箱根タマのこと」
「ハッ、名前だけで決めつけられたらかなわんわ」
「大牙さんのデザイン。あれって箱根タマを意識してるでしょ」
「…………」
無言は肯定と同じことだ。
大牙さんのバーチャルタレント候補生としてのキャラデザは、おかっぱで和風の印象の強い女の子だ。
制服こそ着ているものの、髪に着けた簪やちょっとした意匠に箱根タマの存在を感じた。
「……立ち話もなんやし、とりあえず入れ」
大牙さんに促されて私は部屋の中へと入った。