ついに配信実習当日になった。
予め取った配信枠には既に大勢の人達が待機している。
それ自体はいい。土曜日ならばリアルタイムで見に来てくれる人も増えるだろう。
「な、何で私がトップバッターなのぉ!?」
問題なのは順番である。
あろうことか、注目度が上がって視聴者が集まりやすい状況になったタイミングでトップバッターに選ばれたのは私だった。そんなの私には荷が重すぎる。
「まあまあ、乃尋さん。誰が一番になっても恨みっこなしだったではないですか」
「うぅ……私のくじ運エグぅ……」
配信の順番は事前にくじで決まった。
それ自体は平等だと思うが、トップバッターはないだろうに。
「……ええ加減、腹括ったらええのに」
「他人事だと思ってぇ!」
隣の席の鶫がボソッと呟いた声が聞こえ、つい声を荒げてしまった。
くそぅ……こうなったらとことん記憶に残るような配信やってやる!
幸い配信まで時間はまだある。
亀梨先生とスタッフの皆さんは配信プラットフォームの準備をしてくれている。
あとは本番前に自分のパソコンを持っていくだけだ。
「乃尋さん、ちょっと配信画面のレイアウト見せていただいてもいいですか」
「いいけど、今から変えるの?」
「いえ、本当に今のままのレイアウトで大丈夫か、他の人のを見て安心したくて……」
飛乱さんが困ったような顔でそんな相談をしてきて、少しだけ緊張が緩んだ。
自分よりも緊張している人を見ると落ち着くって本当だったんだ。
「あー、そういうことね。いいよ、ほら」
私は準備の整ったパソコンを飛乱さんへと見せる。
「さすが、乃尋さん。画面配置がかなり見やすいですね。良かったら私の配信レイアウト見ていただけませんか?」
「うーん……まあ、いいよ」
正直、トップバッターだからあまり人より自分の配信の流れを確認したいんだけどなぁ。
でも、飛乱さんとは入学初日からの仲だ。
水で喉の渇きを誤魔化す私にジュースを奢ってくれたり、ポテトを分けてくれた。
今日だって間違えて買ったなんて嘘までついて紅茶をくれたくらいである。彼女は本当に優しい人だ。
「あっ、その前にちょっとお手洗いに……」
格好良く飛乱さんの助けになりたかったが、紅茶を一気に飲んだせいでもよおしてしまった。
どうして私はこうも締まらないのだろうか。
「ごめん、お待たせ」
「いえいえ、気にしないでください。私からお願いしたことですし」
私がトイレから戻ると、飛乱さんは笑顔で待っていてくれた。
それから私にできる限りのアドバイスしていると、いつの間にか配信の時間が近づいてきた。
「うわっ、もうこんな時間!?」
「ごめんなさい。トップバッターなのにこんなこと頼んで……」
飛乱さんが申し訳なさそうな表情になってしまったので、私は慌てて気丈に振る舞う。
「気にしないで! お互い初配信がんばろ!」
SNSでの宣伝含めやれることは全部やっていたんだ。これでダメだったとしても飛乱さんのせいではない。
あとは自分の実力を全部出し切るだけだ。
「ギリギリまで流れの予習しておこう……」
スリープ状態にしておいたノートパソコンを開く。
すると、先程まで作業していた配信ソフトの設定画面が一瞬表示され、真っ青な画面に切り替わった。
「へ?」
パソコンと同時に私の思考回路もフリーズする。
「いやいやいや」
頭を振って一旦ノートパソコンを閉じる。
きっと何かの見間違いだ。そう願って再びノートパソコンを開く。
案の定、画面は真っ青なままだった。