私は思いきって中途半端に記憶に残っている配信プランを捨てることにした。
せっかく初配信前の機材トラブルという特大のネタが手に入ったのだ。これを使わない手はない。
使えるものは全部使ってやる!
「亀梨先生、動画課題で作ったやつって使ってもいいですか?」
「え、ええ、英さんのものなら大丈夫ですが」
私はあの最低評価を取った課題の動画を使うことにした。
「〝自己紹介動画〟としては不適切ですけど、〝自己紹介配信〟で使うなら問題ないですよね?」
「ふっ、そういうことね」
亀梨先生は困惑していたが、私の言葉を聞いた瞬間楽しげに笑った。
「問題ありません。存分に英乃尋の実力をアピールしなさい」
「ありがとうございます!」
私は即座に動画を使うことも配信の流れに組み込んでいく。
これで配信の構成は問題ない。
そのまま手を動かして自己紹介用の画像を作成していると、横から鶫が話しかけてきた。
「……手伝おうか?」
ありがたい申し出だった。でも、私の手伝いをして鶫の配信に影響が出たら申し訳が立たない。
「自分の配信が終わってから手伝ってもらえると助かる!」
「了解」
私の意図が伝わったのか、鶫はイヤホンをして自分の配信準備に集中し始めた。
それから飛乱さんを始め、クラスメイト達の配信が始まった。
本当は全体の流れを確認したかったが、作業を進めなければいけない以上、そっちの確認まで手が回らなかったのだ。
「こっちの作業終わったで」
だけど、自分の配信の終わった鶫が手伝ってくれたおかげで何とかなりそうだ。
私の順番はラスト。飛乱さんをはじめ、みんなが頑張ってくれたおかげで配信も大盛り上がり、同時接続数も直前の平戸君の配信時点で五万を超えているらしい。
「ありがと、準備はこれでオッケーだよ! あとは配信するだけ!」
私達の初配信はあまり間を開けずに行われ、配信が終わったら自動的に次の配信に飛ぶシステムになっている。
つまり、同時接続数はほとんど引き継ぎ状態で行われることになるのだ。
既に待機画面には「リンちゃんが絶対見てと言っていたので」や「リンちゃんも応援してた」などのコメントが多数書き込まれていた。
「リンちゃん……」
ふと、SNSを開いてみればトレンドに〝負けるなのっふぃ〟の文字が。
直接のメッセージじゃなくてトレンド入りを狙う辺りリンちゃんらしいや。
「大丈夫、やれることは全部やった……」
「英さん、いけますか?」
亀梨先生は私の顔を覗き込んで確認してきた。
「はい、大丈夫です!」
「……あなたって意外とピンチに強いのね」
「そりゃそうですよ」
私は気丈に振る舞い、精一杯強気に笑ってみせる。
「ピンチはヒーローにとって勝利フラグですから!」
大きく深呼吸をして気持ちを整えながら、配信の準備を進めていく。
ストリームキーをコピペして配信開始ボタンを押す。
そして、動画サイト上にある課題動画を配信画面上にセットしてライブ配信を開始した。