獅子島レオ。
かつて、男性アイドル事務所シャイニーズプロのSTEPというグループに所属していたという異色の経歴を持つVtuber。
そんな彼も現在は、にじライブを代表する立派なバーチャルタレントだ。
三期生として数多の伝説を作り、それぞれが登録者数百万人を超える看板タレントとなった。
夢を叶え、一児の父となった彼のV人生は次のステージへと進んでいた。
今日は普段せわしなく活動を行いながらも、ゲーム実況や歌枠を行っている彼の久々の雑談枠。
特に気負うことなくリスナーと会話できるこのときをレオ自身も楽しみにしていた。
そして、それはリスナーも同じである。
[その声は、我が友、李徴子ではないか?]
[その声は、我が友、李徴子ではないか?]
[その声は、我が友、李徴子ではないか?]
[その声は、我が友、李徴子ではないか?]
[その声は、我が友、李徴子ではないか?]
コメント欄には、いつもの待機コメントが大量に流れている。メンバーシップのスタンプも交じり、すっかり色鮮やかになったそれにレオはつい笑みが零れた。
「如何にも自分はバーチャル隴西の李徴である」
そこで一拍置くと、レオはいつものあいさつを口にする。
「どうも袁傪のみんな、こんばん山月! 獅子島レオです!」
[こんばん山月!]
[こんばん山月!]
[こんばん山月!]
この挨拶も、もう何度口にしたことだろうか。
配信ではもちろんのこと、公式番組でゲスト出演したとき、地上波でゲスト出演したとき、ライブのとき、様々な場面でこの挨拶を口にしてきた。
そんな彼にはある悩みがあった。
「みんな、聞いてくれよ」
[どしたん、話きこか]
[なんだなんだ]
[まかさ……卒業?]
「いや、卒業はねぇわ。確かに契約更新の時期をなんとなく察してるみんなは不安かもだけど、それだけはないから安心してくれ」
[ああ――――安心した]
[ああ――――安心した]
[ああ――――安心した]
「切嗣の大量発生やめろ」
[草]
[僕は正義の味方に憧れてた]
[正義の味方は座に帰ってもろて]
[それはエミヤの方]
コメント欄が有名キャラの台詞で埋め尽くされるのを見てレオは、つい吹き出しつつも注意を促す。
「ったく、楽しいのはわかるけど初け袁傪の人が困惑するからネットミームで遊ぶのはここまでな?」
[はーい]
[はーい]
[はーい]
リスナーである袁傪達の扱いも慣れたものだ。
「んで、話し戻すぞ。実は最近――いや、最近じゃないか。とにかく悩みがあってさ」
[ほう?]
[二人目デキた?]
[夫婦喧嘩でもした?]
レオの発言にコメント欄で様々な予想がなされる。
その多くが同期であり、妻である夢美に関する内容だった。
「まあ、夢美にも関係することではある。単純にコラボするとき子供を実家に預けてこなきゃいけないっていうところがネックなんだよ」
[あー……]
[三期生コラボ減ったのはそういう?]
[そういや、最近夫婦でのコラボも見てないな]
伝説の存在と名高いにじライブ三期生も今ではすっかりコラボ回数が減り、現在は年に一回できればいい方だった。
もちろん、それはレオと夢美の結婚だけではなく、もう一人の同期である林檎のスケジュールにも原因があった。
彼女も同じにじライブのタレントである白鳥白夜と結婚しており、彼女自身はバーチャルピアニストとして活動している。
単純に配信そのものの頻度が減ってしまっていたのだった。
「なんかうまい解決法ないかねぇ」
[シッターさん雇おう]
「身バレ確定じゃねぇか」
[それはそう]
[両親か義両親家に呼んで面倒みてもらうとか?]
「お義母さんならギリいけるか……いや、でもなぁ」
[姉ライオンに任せよう]
「バッカ、姉さん普通に子供いるから。なんなら何回かうちの子預かってもらってるから」
[じゃあ、妹バラギは?]
「あー、あの子ならワンチャン家に呼んだ上で面倒見てもらうことも可能、か?」
意外と悪くない案ではあった。
夢美の妹である由紀はすっかり成長し、現在は大学生だ。レオが初めて会ったときが小学生だったことを考えると時が経つのは早いものである。
息子の幸太も彼女にはよく懐いている。由紀なら結構な頻度で来てくれているし、予定次第では頼めるかもしれない。
そこまで考えたときだった。
「パパ―! 遊ぼ!」
「パパはお仕事だからあとで遊んでもらおうねー。ほら、パパにバイバイしようか」
「パパ、バイバイー!」
「バイバイー!」
[唐突にてぇてぇを投下するんじゃない]
[一般通過バラギと李徴ジュニアで草]
[実質ゲリラコラボ]
突然配信部屋に入ってきた幸太を夢美が抑えて連れ帰る。
そのことに満足したレオは今しがた何を考えていたかが吹き飛んでいた。
「ま、幸せだからいっか」
[幸せならOKです!]
[俺達も幸せだったわ]
[こういうのでいいんだよ、こういうので]
リスナーもまたレオと同様の反応になるのであった。