Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【炎上先生】第1回 玉手箱かと思ったらパンドラの箱だった先生 その2

 

 授業は進み、画面には当時のSNSや配信の切り抜きが映し出される。

 タマの生い立ちからどういう性格が形成されていったのか。当時、タマが何をしたのか。このとき、何を思っていたかの注釈付きで事細かに解説していく。

 その間、生徒役の三人はうまく相槌を打ったり、空気が重くなり過ぎないよう適度に茶々を入れたり、うまくタマが話しやすいようにサポートに徹していた。

 

[これは歪む]

[これ見たことあるわ]

[当時めっちゃ燃えてたな]

[タマ先生、エグイって]

[てか、声真似のクオリティおかしいだろ]

[才能の無駄遣い過ぎる]

 

「タマ先生! 試しに私の声真似とかできますか?」

 

[無茶振りで草]

[のっふぃ容赦ないなwww]

 

 その中でも、乙姫の裏垢を装い罠に嵌めたというところで、乃尋は一見無茶振りにも思える振りをタマへする。

 

「ちょっと待ってくださいね……私がきちゃ! あなたのヒーローこと英乃尋、参上!」

 

「「「えぇ!?」」」

 

 声真似を要求した乃尋を含め全員が驚愕の声を上げる。

 それだけタマの声真似は完璧なクオリティだったのだ。

 

「どうしてこんなにすごい特技があったのに、こんなことをしたんですか?」

「当時の私は視野狭窄になっていて、自分のことも周りのことも、ちゃんと見えていなかったんです」

 

 タマは苦しそうに続ける。

 

「周囲を出し抜いて自分の夢を叶えることだけに固執して、本当は欲しいものが手に入っていたことに気が付かなかった。特にまひる先輩やハンプさんはずっと手を差し伸べてくれていたのに、それを振り払った。本当に愚かだったと思います」

 

[そりゃ許さないってなるよなぁ]

[あの二人は特に面倒見いいもんな]

[く、苦しい……]

 

 タマの真剣な声音に、視聴者も固唾を呑んで次の言葉を待つ。

 

「そして、すべてを壊した。欲しくてやまなかった本物を手に入れておいて自分の手ですべて壊したんです。気が付いたときにはもう手遅れでした」

 

 言葉を詰まらせながら語るタマの姿に、スタジオの三人や視聴者も真剣な表情を浮かべる。

 

「でも、そこから先生はどうやって立ち直ったんですか?」

 

 そこで燐林が身を乗り出して尋ねると、タマは少し笑みを浮かべて答えた。

 

「かつての仲間達がアタシの目を覚ましてくれたんです。ちゃんと許さないでいてくれた。そして、背中を押してくれた。それでやっとアタシは自分の罪と本当の意味で向き合うことができたんです」

 

[あかやん……]

[モモタロスもなんだかんだでタマちゃんのことは仲間だと思ってたんだな]

[だから本気で怒ってたんだろうな]

 

「乙姫先輩に謝罪をして、あの人が過去を振り切って復帰をしてくれた。だから、アタシも前を向かないと本当の意味での贖罪なんてできない。そう思いました」

 

[なんど聞いても姫ちんが聖人過ぎる]

[あんなことがあっても、ずっと大切な後輩だと思ってたみたいだしな]

[元凶はタマだけど、トドメはネット民だったもんなぁ]

[お前が救われないとみんなが救われないんだよ!]

 

 タマのしたことは許されることではない。ただ許せないという感情以上に、周囲が彼女の心を救いたいと願っていた。

 偽物でしかなかったタマが手に入れた本物の絆。それこそが彼女に立ち上がる力を与えたのだ。

 

「ふむふむ、タマ先生が言うと重みが違いますねぇ」

 

 感心したように頷くと、乃尋は配信の締めに入る。

 

「では、最後にタマ先生へ当時あなたを応援してくれていたファンからお言葉を頂戴したいと思います!」

「えっ」

「箱根タマのファン代表、大牙鶫!」

 

 乃尋との打ち合わせ通りに凛が卒業式風に鶫の名前を呼ぶ。

 

「はい!」

 

 すると、鶫は元気良く返事をする。

 

「えっ、え?」

 

[タイガーって元〝箱入り娘〟だったの!?]

[ちょい和風テイストなのはリスペクトだったのか]

[まさかこのために企画したのか?]

 

 実を言うと、今回の炎上先生を最初に企画したのは鶫だった。

 タマをなんとか表舞台に引きずり出す、そのためには乃尋と凛の協力が不可欠だったのだ。

 

「当時のファンとして、あのとき何があったのか、何を思っていたのか。それを聞くことが出てきて一つの区切りになりました。本日は出演してくださり、本当にありがとうございました」

 

 そう前置きすると、鶫は続ける。

 

「そして、何よりあなたが前を向いてくれて、本当の意味での贖罪をするという言葉を聞けて一ファンとしても、胸がいっぱいです」

「鶫さん……」

 

 タマは鶫の言葉に涙ぐんでいた。

 かつて自分を推してくれていた子が、この業界に入ってきてくれた。もう一度、信じてくれた。その事実は、タマの心を照らしてくれる。

 

 しかし、鶫はそこで肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべると告げた。

 

「いやぁ、ホンマに安心しましたわぁ……贖罪ってことは、これからもファンに見えるところで悲しませた倍は楽しませなきゃいけないもんなぁ!」

 

[一 転 攻 勢]

[流れ変わったな]

[言質は取ったもんな!]

 

「ちょ、ま――」

 

「というわけで! 第一回【炎上先生】は楽しんでいただけましたか?」

「いやぁ、まさかの大物復活でわくわくしちゃうね!」

 

 タマが冷や汗をかいて何かを言おうとした瞬間、すかさず乃尋と凛が言葉を遮って締めにかかる。

 

「「「タマ先生、本日はありがとうございました! これからもよろしくお願いしまーす!」」」

 

「あなた達嵌めたわね!?」

 

[おかえり]

[おかえり]

[竹取かぐや:おかえり(殴)]

[竜宮乙姫:おかえり(嬉)]

[狸山勝輝:おかえり(笑)]

[一期生大集合で草]

[バンチョー、暴力はあかんwww]

[まーたにじライブが伝説作ってるよ]

 

 こうして箱根タマは自身のチャンネルこそ持たないが、定期的に公式配信や繋がりのあった者達から呼ばれる〝便利な助っ人枠〟として、配信活動に復帰することになるのであった。

 

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