再び体調を崩してしまい投稿が遅れてしまいました。
体調には十分注意してこれからも連載を続けていこうと思います。
「疲れた……」
実家に妹の由紀を送り届けた夢美は疲れ果てた様子で自室へと帰ってきた。
由紀を実家に送り届けたことで、夢美は久しぶりに家族と話をした。
家族のことが好きな夢美としては、久しぶりの家族団欒の時間は楽しかったが、気苦労も多かった。
特にマンションへ帰ろうとした夢美を由紀が引き留めたことで、夢美はなかなかマンションへ帰ることができなかった。
その結果、夢美が自室へ帰ってきたときには既に日付が変わろうとしていた。
「レオに連絡して、シャワー浴びて……」
夢美はボーっとする頭でやるべきことを整理する。
本当ならば、そのままベッドに直行して眠ってしまいたいところだったが、レオに心配をかけるのもよくないし、汗でべたつく服のまま眠りたくはない。
気怠げにスマートフォンを取り出した夢美は、レオに戻った旨を連絡すると、服を脱いで洗濯機へと放り込む。
そして、そのまま風呂場に入り、暖かいシャワーを浴びようとしたが、
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
予想外の冷水シャワーを浴びたことで、夢美は風呂場で絶叫することになった。
「――ガスが止まった?」
「……はい」
「ガスって普通止まるまで五十日くらいあるよな?」
「……すぐには止まらないから後で払おうかと思ってて忘れてました」
「公共料金未納はダメだろ……」
「……返す言葉もございません」
体を拭いて部屋着に着替えた夢美は、レオの部屋で正座していた。
食あたりのときと同様、お説教タイムである。
「白雪のことでバタバタしてたし、気持ちはわからないでもないが、そもそもきちんと期限内に払ってれば問題なかっただろ」
「正論を突きつけるのはやめろォ! あたしだってヤバイってことは、わかってんだよ!」
「まあ、自覚があるだけマシか……」
深いため息をつくと、レオはこれからの対策について話し始めた。
「ひとまず、忘れっぽいならクレジットカード決済にして自動で引き落としできるようにした方がいい。インターネットの支払いもついでにやっといた方がいいな」
「そっか、引き落としって手があったか……」
夢美は興味がない事柄に関しては、まずいと思っていても方法を探るということをしないタイプの人間だった。たとえ、知っていても面倒だからと後回しにして結局対策はできなかったりするのだが。
「とりあえず、よっちんに相談――あっ、しまった。よっちん有給使って海外旅行中だった」
にじライブのマネージャー業は想像よりも激務ではあるが、休みが取れないほどではない。
以前、亀戸が体調を崩した際に四谷が業務を引き継いだように、お互いの仕事を引き継ぐ連携はしっかりできているため、他の企業と比べて休みは取りやすいのだ。
「確か飯田さんが業務引き継いでたよな。だからって俺達のグループラインに投稿するなよ? 四谷さん、旅行中でも仕事関係の連絡来たらすぐに対応しちゃうタイプだから」
「そだね。私が炎上してからめちゃくちゃ気にかけてくれてるしね」
四谷は一人で海外旅行するのが趣味だった。
一人で誰にも気を遣わず二、三日楽しんで帰国する。
そんな風に日頃のしがらみを忘れて羽を伸ばしている四谷に、連絡することは憚られた。
「手厚くサポートしてくれるからって、あんまり四谷さんに甘えすぎるなよ。あの人だってそろそろ忙しくなるんだから」
「えっ、そうなん?」
「飯田さんからチラっと聞いたんだよ。俺達三期生のマネージャー陣って、今は専属でやってるけど、段々と仕事がパンク状態の二期生のマネージャー陣から仕事を引き継ぐらしいんだ」
「うへぇ、マジか。誰がどうなるの?」
レオは以前、飯田から社内の体制が変わって忙しくなるかもしれないという話を聞いていた。もちろんサポートの質は落とさないから安心してほしい、という言葉を添えて。
「飯田さんは俺みたいな音楽活動主体のライバーのマネージャー業を引き継ぐらしい。確か、かぐや先輩のマネージャーも兼任するって言ってた」
「えっ、飯田さん。上司のマネージャーやることになるの?」
「やりづらそうだとは言ってたよ。でも、それ以上にこのままだとかぐや先輩過労死しそうな勢いだったらしいから、やるしかないって意気込んでたぞ」
かぐやは役職上、部下を育成しなければいけない立場だ。
メディア本部にはマネージャーチームの他にも、開発チーム、ユーザーコミュニケーションチームなど、複数のチームがある。
その全て統括している彼女の仕事量は、はっきり言って異常の一言に尽きる。
それに加えてライバー活動を行っているとなれば、彼女に休みはないと言っても過言ではないのだ。
かぐやが会社に泊まり込んで耐久配信を行い、総務部の内海にこっぴどく怒られたことは、古株の社員の中では有名な話である。
メディア本部部長の諸星香澄とにじライブのトップライバー竹取かぐや。
この二足の草鞋は、一人が履くにはあまりにも重たいものだった。
そこでレオのサポートをうまくやっている飯田に白羽の矢がたったのだ。
かぐやはメジャーデビューもしており、音楽活動も活発に行っているため、専門的な知識を齧っている飯田のサポートはかぐやに必要なものだった。
もちろん、飯田としては役員レベルの上司のサポートという立場に胃が痛くなってはいたが。
「亀ちゃんはゲーム系のライバーのマネージャー業を引き継ぐらしいぞ。二期生の
亀戸は、ゲーム配信主体の活動を行っている二期生のライバーのサポートを引き継ぐことになっていた。
これには彼女の先輩である、まひるのマネージャーが、かなりの数のライバーを担当していて負担が大きかったという背景も大きい。
林檎の復帰後、亀戸の社内での評判は掌を返したように鰻登りになっていた。特に営業部のメンバーは全員亀戸のおかげでコネクションが増えたため、彼女が営業部のデスクの島に行くだけで全員が笑顔で声をかけてくるくらいである。
「林檎ちゃんってゲーム系?」
「白雪は、まあ……ゲームと音楽のハイブリッドだろ」
ゲーム配信だけでなく、ピアノ配信の頻度も多い林檎の様子を思い出して二人は苦笑する。林檎のピアノ配信は、配信上では手元が見えないため、小人達からは一刻も早い3D化を望まれていたりする。
「よっちんはどうなるの?」
「四谷さんは、生活面でサポートが必要なライバーのマネージャー業を引き継ぐんだと。二期生だと
「生活面でサポートが必要なライバーって……」
思い当たる節しかなかったため、夢美は表情を引き攣らせる。
四谷は、夢美レベルの生活力のないライバーのサポートを成功させていることを評価されていた。
彼女の場合、引継ぎ以外にも事務所の今後に関わる重要な業務に就くことになるので、他の二人に比べれば引き継いだ業務量は少ない。
「つまり、四谷さんはお前だけじゃなくて、ズボラな生活をしているライバー全員をサポートしなきゃいけないわけだ。この意味わかるよな?」
「そっか……負担減らさないとダメだよね」
「ま、ズボラなライバーのサポートだけが仕事じゃなさそうだけどな。あの人のスペックでズボラなライバーのサポートだけが仕事じゃもったいないだろうし」
「どういうこと?」
意味深なことを言うレオに、夢美は首を傾げる。
「実際どうなるかは今度の四半期総会で決まるって飯田さんが言ってたから、続報を待てってことだよ」
「ほーん、よくわかんないけどわかった」
「俺もお前が何もわかってないことはよくわかったよ……とりあえず、バスタオルと着替え持ってきてさっさとシャワー浴びてくれ。俺は外で適当に時間潰しているから」
「や、マジでごめんね?」
「気にすんな。幼馴染だか――仮に本当の幼馴染でもここまでする、のか?」
レオは自分の言葉に疑問を持ちつつも、夢美にシャワーを貸すことにするのであった。
今回から、あとがきはFA紹介コーナーも兼ねさせていただきます!
今後、もしFAを送ってくださる方はツイッターの方でハッシュタグ
「#こんばん山月」「#李徴の詩集」「#夢美術館」「#鏡見ろ白雪」「#竹取アート」などをつけていただければ、作者がエゴサします!
というわけで、今まで届いたFAになります!
皆様、本当に素晴らしいFAをありがとうございます!
まずはレオのFA!
【挿絵表示】
【挿絵表示】
いやぁ、どちらも表情が肉食獣って感じでカッコいいですね!
そして、まさかの林檎のFA
【挿絵表示】
デザイン的には表モチーフである白雪姫が強く出ている感じですね!
ちなみに、こちらライブ2DのGIFで作者の元へ届いたので度肝を抜かれました。
ツイッターの方では動いている方も紹介できるかと思います。
https://twitter.com/snk329