Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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ピカブイも剣盾も神ゲー。異論は認めない(過激派ポケ廃)

ちなみに作者のポケモン歴は銀→緑→青→エメラルド→ダイヤモンド→プラチナ→ソウルシルバー→ブラック(ホワイトサブロム周回)→ブラック2(ホワイト2サブロム周回)→X→サン(一応ムーンも)→ウルトラムーン(ウルトラサンはサブロム周回)→let's goイーブイ→ソード(シールドも周回)って感じです。

気が付くと両方のバージョン買うようになってたんですよねぇ……。


【初見プレイ】選ばれたのはVでした。レッツゴー!

 ガスが止まってからというもの、夢美は毎日レオの部屋にシャワーを浴びにきていた。

 ガス復旧までの間ではあるが、生活面においてレオには何から何まで世話になっている現状に夢美は申し訳なさを覚えていた。

 

「レオ――」

「クソッ捕獲率おかしいだろ! 頼むから弱らせさせてくれ!」

 

 レオに声をかけようとした夢美だったが、レオは大画面のテレビでプレイするゲームに熱中していた。

 ずっとやりたかったゲームに夢中になっている姿を見て、夢美はくすっと笑う。

 

「……邪魔しちゃ悪いか」

 

 いつもならレオが気を利かせて外へ出てくれるが、ゲームに夢中になっているのならば問題ない。

 そう判断した夢美はそのまま風呂場に入った――それがトラブルの引き金になるとも知らずに。

 

 

 

 

 

「みなさん、こんばん山月! 今日は念願のピカブイをやっていきますよ!」

 

[こんばん山月!]

[レオ君、過去一うっきうきな声で草]

[よっぽど好きなんだろうな]

 

 レオは以前、夢美や林檎と池袋に行った際に大好きなシリーズのゲームソフトとゲームハード本体を購入した。

 しかし、林檎の引退から復帰のごたごたもあったため、実況配信は後回しにしていたのだ。

 

「この作品は初代のリメイクみたいなんですけど、俺は最初にやったのルビーなんですよね。ちなみに、銀と緑は後から買ってやりました」

[だから世代バレるってw]

[レオ君、もうちょい身バレ気にしてもろて]

[好きなゲームの話で正常な判断できなくなってないか?]

 

 興奮気味に話すレオに袁傪達はどこか心配そうにコメントを書き込む。

 レオも自分の身の上を話す際は気を付けているが、年齢に関しては推測されていたり、夢美の年齢がほとんどバレているようなものなので、あまり気にしてはいなかった。

 

「おお! すっげぇ! ランダムエンカウントじゃなくてシンボルエンカウントになってる!」

 

[このライオン大興奮である]

[同じポケ廃として気持ちはわかる]

[でも、対戦好きならあんまりハマらないかもよ]

 

「いいって、いいって! ネットじゃキャラゲーとしては良作とは言われてるらしいから、俺は期待してプレイする!」

 

 レオはネット対戦も、ストーリーも両方楽しむタイプのプレイヤーのため、いわゆるガチ勢がゲーム上で残念がるポイントも気にはならなかった。

 

「まさか大画面でできるようになるとは思わなかったなぁ。コロシアムはともかく、こういうのってずっと携帯ゲーム機だったから、マジでスイッチに感謝だよ」

 

 レオは現在、キャプチャーボードをパソコンに差し、ヘッドセットを着用してゲームをプレイしている。この場合、ゲーム画面はパソコンへ出力される。

 そこで、レオはキャプチャーボードの出力側の端子にHDMIケーブルを差してテレビと繋ぐことで、配信を行いながら大画面でプレイすることを可能にしていた。

 

「すげぇ! サントアンヌ号でムービー流れてる!」

 

[スクショ連打してて草]

[気持ちはわかる]

[レオ君のこういうオタクっぽいところ好感持てるんだよなぁ]

 

 進化したグラフィックと過去の思い出が合わさり、レオは大興奮でスクリーンショットを撮り続ける。そんな彼の様子を微笑まし気に袁傪達は見守っていた――夢美の声が聞こえるまでは。

 

「ごめん、レオ! タオルとってー!」

 

「はえ……?」

 

[ん?]

[今女の声が……]

[タオル取ってって]

[いや、これバラギだろw]

[そういや、桃タロスと前に言ってたな]

[マジでバスタオルドッキリやってて草]

 

 風呂場から顔だけ出して固まっている夢美を見て、即座にマイクをミュートにして彼女の近くへ駆け寄った。

 

「……何やってんのマジで!?」

「ごめん、テレビでプレイしてたから配信中だと思わなくて……あ、タオルありがと」

 

 レオからタオルを受け取ると、夢美は青ざめた顔で謝罪する。

 

「とりあえず、コメント欄はドッキリだと思い込んでる。時間もないし、このままドッキリってことで通すぞ!」

「ちょ、ま、服着させて!」

「悪い、そんな余裕はない!」

 

 あまり長時間マイクをミュートにすれば袁傪達に怪しまれてしまう。レオは放送事故をなかったことにするのに必死だった。

 慌てて体にバスタオルを巻いた夢美はそのままマイクの前に立つことになった。

 

「はい、ここで問題です。今の声、誰だと思う?」

 

[愚問だな]

[どう考えても一人しかいないだろwww]

[バラギ、キミに決めた!]

 

「大正解! みんな、こんゆみー! バラギこと茨木夢美でーす」

 

 夢美はヤケクソ気味にタオル一枚の姿まま挨拶をした。

 

「というわけで、今日の特別ゲストの夢美の登場です!」

「イエーイ! ドッキリ大成功!」

 

[何でピカブイの配信でこれをやろうと思ったw]

[まさかのオフコラボ]

[オフコラボ助かる]

[ずっと風呂場でスタンバってました(攘夷志士並感)]

 

 コメント欄はすっかりこの放送事故をドッキリだと思い込んでいた。レオと夢美の仲ならばやりかねない。そんな普段の二人の関係性が功を奏したのだ。

 

「今回のコラボのきっかけとしては、夢美が今度剣盾配信する予定で、俺のピカブイのプレイを横で見たいって言いだしたことがきっかけだったんだよな」

「やー、剣盾始める前に軽く見ておきたくて」

 

[それオフコラボの必要あったか?w]

[てぇてぇから良し!]

[レオ君がプレイする横で楽しそうに見ているバラギ、これはFA描かれまくるぞ……]

 

 苦しい言い訳だったが、袁傪達はてぇてぇの過剰摂取によって思考停止していた。

 おかげで、レオと夢美は何とかこの窮地を乗り切れそうだった。

 

「それじゃ引き続きプレイしていきます!」

「ブイズ揃えようぜ、ブイズ!」

「お前本当にブイズ好きだな……」

 

[部屋に上がってのオフコラボが許される男女はこの二人ぐらいだな]

[赤桃の二人でもここまでやらないぞwww]

[てか、同じ部屋に男女二人きりで大丈夫なの?]

 

「今更そういう風に見れないって、ねえ?」

 

 夢美が袁傪のコメントに答えるため、レオの方を向いてそう言う。

 レオもそのコメントに答えようとしたとき、夢美が慌てて巻いたタオルがはらりと床に落ちた。それと同時にレオの目線も下に落ちた。

 

「ま、幼馴染だか――ら、なあ……あ?」

 

[疑問形じゃん]

「女として見られていて良かったな」

[おっ、てぇてぇか?]

 

 夢美の一糸纏わぬ姿を見たことでレオの思考は完全に停止した。

 また、夢美もレオに一糸纏わぬ姿を見られたことで硬直していた。

 

「「スゥッ――――…………」」

 

[迫真の呼吸音で草]

[これは気まずいwww]

[バラレオはガチってことが証明されちゃったね]

[黙り込んでる辺りガチなんだよなぁ]

 

 いろんな意味で事故が発生している中、レオと夢美にとって救いの手とも呼べる通知音が鳴る。

 

【大丈夫? 通話繋げる?】

 

 それは配信を見ていて状況を察した林檎からの連絡だった。

 レオは停止している脳を強制的に再起動させて、Thiscodeの通話ボタンを押した。

 

「なーんちゃってな! ここで、もう一人のゲストを紹介! ま、みんなわかってると思うけど!」

『ドッキリ大成功! みんな、おはっぽー。白雪林檎だよー。私考案のドッキリは楽しんでもらえたかー?』

 

[やっぱり白雪発案か]

[ま た お 前 か]

[お前なら仕方ない]

[お前じゃなかったらどうしようかと]

 

 レオと夢美の気まずい空気もドッキリの一つ。そう思わせるには林檎の登場は渡りに船だった。

 レオは袁傪達の意識が林檎に向いている間に慌てて夢美の服を取りに行き、全裸で棒立ちする夢美に押し付けた。

 夢美も状況を察したのか、急いで服を着始めた。

 

「それじゃあ、これからは三人で配信していきます!」

『やー、私も剣盾やる予定だったからちょうどいいわー。レオは何買う?』

「俺は剣だな」

『えー、私も剣やる予定なんだけどー』

 

 レオ達がやろうとしているモンスターの育成ゲームは、新作が出るたび二つのバージョンが販売される。

 ソフトによって出現するモンスターが違ったり、微妙な差異があるため、友人とプレイする場合はバージョンが違うソフトを購入していることが望ましいのだ。まあ、この大人気のモンスター育成ゲームで、トップランカーに入るプレイヤー達は、大抵の場合両方のバージョンを購入していたりするのだが。

 

「レイドバトルとか、野生で出現する奴とか、結構バージョンで違うしどうしたもんかな……」

 

[別に他のライバーもやってるだろうし、大丈夫だろ]

[どんどんコラボしていけ]

[でもDLC配信からは結構経ってるし、今はみんなやってなくね?]

[バラギが盾を買えば万事解決]

 

 レオと林檎が場をつないでいる間に服を着た夢美は、慌てて会話に参加した。

 

「だったら、あたしが盾買うよ。三人で図鑑どんどん埋めようぜ!」

「図鑑埋めれば色違いも出やすくなるしな」

『色厳選はやめた方がいいと思うけどなー』

 

[大丈夫? 色違いあげようか?]

 

「悪いが俺は自分で出した色違いじゃなきゃ愛せない」

「えー、私は欲しい!」

『剣盾始めたら交換会やるから、どんどん貢いでねー』

 

[また炎上するぞwww]

[ちゃっかりバラギが便乗してやがるw]

[焼き林檎、再びの姫プ]

 

『いいんだよー。私もバラギも〝姫〟でしょー?』

 

[かつてここまで強欲な姫達がいただろうか]

[むしろ白雪は怠惰だろ]

[レオ君は傲慢担当で]

[にじライブの七つの大罪枠のうち、三期生だけで三枠埋まるの草]

[バンチョーは憤怒だな]

[嫉妬、色欲、暴食、は誰だ]

[色欲は桃タロスだろ]

[草]

 

 コメント欄では、既に先程のドッキリのインパクトは薄れていた。

 それから、三人は何事もなく配信を終えることに成功した。

 配信を切った後、レオは改めて窮地を救ってくれた林檎に礼を述べる。

 

「マジで助かった。本当にありがとうな白雪」

『こんなの私がしてもらったことに比べれば安いもんよー。てか、バラギも気をつけなよー。てぇてぇの供給は助かるけど、二人のライバー活動に支障が出るのは嫌だかんねー』

「ごめん……ありがとうね林檎ちゃん」

『お代は今日の詳しい話を聞かせてもらうってことでいいよー。じゃ、おやすみー』

「ああ、おやすみ」

「おやすみー……はぁぁぁ……」

 

 相変わらず飄々とした様子の林檎との通話を終えた夢美は、力なくレオのベッドに倒れ込んだ。

 

「……………………死にたい」

 

 恥ずかしさのあまり、夢美は耳まで真っ赤になっていた。

 そんな彼女の様子を見て、レオもまた照れたように明後日の方を向いていた。

 

「まあ、その、何だ。出来るだけ忘れるようにする」

「うぅ……もうやだぁ……」

「どうしたもんかな……」

 

 今の自分が何を言っても逆効果だ。

 どう夢美を立ち直らせるか、レオが考えあぐねているとスマートフォンから通知音が鳴った。

 

「ん? Thiscodeのメッセが――かぐや先輩!?」

「えっ」

 

 このタイミングでかぐやからのメッセージ。そのことを理解した夢美は羞恥心を忘れて飛び起きた。

 かぐやからのThiscodeのメッセージには、すっかり隠さなくなった関西弁ではなく、昔のような敬語でこう書かれていた。

 

『お話があります』

 

「「ひえっ」」

 

 かつて、かぐや――諸星に呼び出しを食らったときのことを思い出したレオと夢美は、恐怖に表情を引き攣らせるのであった。

 




バスタオルどっきりの元ネタはわかる人はわかるはず。

すみません、また金土日は投稿厳しいです。
色孵化厳選、証三鳥厳選、レジ色厳選……うっ、頭が……。

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