Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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ようやく剣盾杯の話に入れます!
ちなみにレオの相棒はモンジャラです。
固いですよ、きせきモンジャラ。


【色厳選】かつての相棒の色違いを狙っていくぞ!

 

「袁傪のみなさん、こんばん山月! 獅子島レオです! 今日も孵化厳選やっていきますよ!」

 

[こんばん山月!]

[他のライバーがランクマッチやる中もくもくと厳選してて草]

[もはやゲーム画面背景の雑談枠と化してるんだよなぁ]

 

 レオはここ最近はずっと大人気モンスター育成ゲームの最新作のプレイをしていた。

 バスタオル事件での林檎の炎上も収まり、三期生はほぼ同時にこのゲームの配信を行っている。その中でもとりわけレオの配信は異質だった。

 

「おっ、色違いきた! きた!」

 

[早い]

[早くないんだよなぁ]

[何匹目だっけ?]

 

「……五匹目です」

 

[強く生きて]

[これは辛い]

[どんな精神力してんだw]

 

 レオは自転車に乗って〝預かり屋〟と呼ばれる施設の横をひたすら左右に動いていた。これを数日間何時間も行っているのである。ライバーの中でもここまで同じ作業を繰り返している人間はまずいないだろう。

 レオが狙っているのは、ゲームに登場するモンスターの中でも1/4096という稀な確率で出現する〝色違い〟のモンスターだ。

 図鑑を完成させたり、卵を産むための親の片方を外国産のモンスターにしたり、条件を満たせば1/512まで確率は増えるが、所詮は1%にも満たない確率である。

 それに加えて、レオは〝隠れ特性〟というモンスターの持つ特殊能力の中でもレアなものも厳選していた。これに関しては親が隠れ特性ならば半分の確率で遺伝する。逆に言えば半分の確率で遺伝しないのだ。ちなみに、この隠れ特性を持ったモンスターはファンの間では〝夢個体〟と呼ばれている。

 

「おっ、また夢外しだ! やったね、袁傪に配る色違いが増えるよ!」

 

[おい、やめろ]

[苦労して出した色違い簡単に手放さないで……]

[声震えてるんだよなぁ]

 

「言っとくけど、君達だから配るんだからな? 初見の人には悪いけど、いつも目に入ってる名前の人にしか上げないから。それ以外は理想個体で我慢してくれ」

 

[よし、色違いはもらった! ¥50,000円]

[悪いなレオ君産の色違いは俺のもんだ! ¥50,000円]

[俺がもらう! ¥50,000円]

 

 レオの発言を聞いた熱心な袁傪はすぐさま限度額のスーパーチャットを投げる。

 それを見たレオは流れを止めるために即座に言い放つ。

 

「あっ、今スパチャ投げた人は名前覚えたんであげませんよ」

 

[すみません、調子に乗りました!]

[許してください!]

[もう限度額なんて投げませんから!]

[スパチャ投げた連中が謝ってて草]

[相変わらずスパチャ止め芸するなぁ]

[切り抜き確定]

 

 何もしていないのに高額のスーパーチャットを投げられることに抵抗のあるレオは、こういった流れをすぐに止めるようにしていた。大切な視聴者である袁傪達には無理をしてほしくないのである。

 しかし、スーパーチャットをもらっておいて何もしないという選択肢もまたレオには存在していなかった。

 

「まあ、赤スパもらっちゃったし、リクエストあったら何か歌うよ」

 

[めざポケ!]

[未来コネクション]

[Together]

 

「おー、みんないいチョイスするじゃん! それじゃ歌っていくよ」

 

 レオは孵化厳選の手は止めずにリクエストされた三曲を続けて歌い始めた。

 

「いつもいつでもうまくゆくなんて~♪ 保証はどこにもないけど~♪」

 

[そりゃそうじゃ]

[そりゃそうじゃ]

[そりゃそうじゃ]

[コメ欄オーキドだらけで草]

 

 このシリーズといえばこれ! という代表的な曲を歌うと、レオは続いて二曲目に移った。

 

「み~らいコネ~クション♪ 新しい今日から始めよう~♪」

 

[何気にこれ良曲だよな]

[サンムーンは地味に良曲多いぞ]

[またアニメ見返そうかな……]

 

 二曲目はゲームで言えば前作に当たるシリーズの曲だった。

 アニメは主人公の見た目がかっこ悪くなったからと最初こそ不評だったが、内容の面白さや、魅力的なキャラクターの登場により、そういった批判は段々と収まっていった。

 二曲目を歌い終わったレオは最後の歌を歌い始める。

 

「甘くないさ~バトルはいつだって♪ からい、にがい、しぶい、すっぱいね~♪」

 

[懐かしくて泣く]

[親 の 声 よ り 聴 い た 曲]

[もっと親の声聞け定期]

[これはダイパキッズに刺さる]

[ダイパリメイクはよ]

 

 三曲目は隠れた名曲と名高いこのシリーズの四世代を代表する曲だった。

 ゲームの方ではこの世代のリメイクを求める声が大きく、公式から発表があるたびに一喜一憂するファンがいるくらいである。

 

「というわけで、三曲続けて歌わせていただきました! ご清聴ありがとうございます!」

 

[888888888]

[888888888]

[888888888]

[かつて色厳選しながら歌ったライバーがいただろうか]

[後ろでずっと自転車で柵に衝突しているのシュールで笑う]

 

 それからレオは日付が変わるまで卵を孵化し続けたが色違いは出なかった。

 次の日、また次の日と配信を重ねても色違いは出ない。

 折れそうになる心を奮い立たせ、レオは今日も配信を行う。

 

「ねえ、お願いですから夢特性何とかするアイテム出してくれませんか? マジで……」

 

[泣きそうになってて草]

[五連夢色外しは心折れるだろ]

[それでも作業の手を止めない辺りレオ君も狂ってるよなぁ]

 

 レオは既に引くに引けないところまで来ていた。

 ある意味、夢美のガチャ配信よりもタチが悪いと言えるだろう。こちらはお金ではなく、つぎ込んでいるのは時間である。

 そんなレオの願いが届いたのかとうとう色違いが生まれる。

 

「おっ、出た! 頼む頼む頼む」

 

 片眼を瞑り、懇願しながらも特性の欄を確認すると、そこには〝さいせいりょく〟の文字があった。

 

「キタ――――――!」

 

[おめでとう!]

[全袁傪が泣いた]

[これはめでたい!]

 

 レオが諦めずに卵を孵化し続けている様子を見ていたからか、袁傪達も自分のことのように色違いの誕生を喜んでいた。

 

「ニックネームは〝ゆみ〟だな」

 

[迷わず嫁の名前つけてて草]

[まあ、草タイプだし合ってるっちゃ合ってる]

[ちなみにバンチョーは最近育成したゴリラに〝バラギ〟つけてたぞ]

[それはダイソウゲン]

 

 レオの相棒だったモンスターは長靴のようなピンクの足を持ち、全身からツルが生えたような見た目のモンスターだった。ちなみに、進化系はいるのだが、レオはあえてこの進化前のモンスターを愛用していた。

 

「色違いも生まれたことですし、明日以降はまたランクマやっていこうと思いまーす」

 

[そういえばレオ君三桁代だった……]

[アクションゲームはあんまり得意じゃないイメージあったけど、頭使うゲームは強いよな]

[元々レート戦で戦ってたってことも大きいと思うけどな]

 

 レオはこのゲームをプレイしてすぐに、ネット上に載っているパーティをQRコードでレンタルしてインターネット対戦に潜っていた。

 かつてアイドルを引退してこのゲームの対戦にハマっていたレオは、最初こそ新システムに戸惑ったものの、すぐに順応してかなりの勝ち星を挙げていた。

 

「それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。おつ山月!」

 

[おつ山月!]

[おつ山月!]

[おつ山月!]

 

「本当に出て良かった……」

 

 配信を終えて満足感に浸っていると、スマートフォンが鳴る。

 画面を見てみれば、飯田からの着信だった。

 

『お疲れ様です。飯田です』

「飯田さん、お疲れ様です。どうしたんですか?」

『実はにじライブのライバー全員で行う大規模コラボの開催が決定したんですよ!』

「マジですか!」

 

 現在にじライブで活動しているライバーは十四名。活動休止中の勝輝は当然不参加である。

 その全員が参加する企画となればかなり大規模なものになる。

 レオはゴクリと唾を飲み込むと、飯田に企画の内容を確認した。

 

「……企画内容は?」

『その名もにじライブ剣盾杯です! 獅子島さん、優勝狙っちゃいましょう!』

「ええ、絶対優勝してやりますよ……!」

 

 レオは飯田の言葉に、獰猛な笑みを浮かべて答えるのであった。

 




とくせいパッチのおかげで作者の夢外しカムカメ5匹、ヒバニー2匹は救われた……。

ポケモンわからない人にも伝わっているか不安はありますね……。

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