まあ、出番はこの先いくらでもありますので……。
【しょくあたりはぜったいれいどをつかった!】
【いちげきひっさつ!】
【サニタロスはたおれた!】
【しょくあたりはぜったいれいどをつかった!】
【いちげきひっさつ!】
【カビタロスはたおれた!】
【ドラタロスのりゅうせいぐん!】
【しょくあたりにはあたらなかった!】
【しょくあたりはぜったいれいどをつかった!】
【いちげきひっさつ!】
【ドラタロスはたおれた!】
[こ れ は ひ ど い]
[神が甘やかした林檎]
[悪魔の果実で草]
[あまーいリンゴなんだよなぁ]
[あのアップルパイドラドンへ進化できるぞ!]
[三連続零度当てた上に90%の技かわすのは豪運がすぎる]
[30%×30%×10%×30%か……]
テレッテレレレー、という勝利のBGMが無情にも鳴り響く。
にじライブ剣盾杯、Bブロックの第二試合。
そこでは負けた方が気の毒になるような一方的な試合が繰り広げられていた。
『はぁぁぁぁぁ!? おかしいだろ! 命中率どうなってんだ!』
『はい、というわけで第二試合は白雪林檎さんの勝利ダゾ!』
「あっはは、勝っちゃいましたー。何かごめんねー、モモタロス」
『さっすが、まひるの妹だね!』
『これは酷いですな……』
Bブロックに参加しているライバーは、林檎、まひる、桃華、そしてまひるの同期でもあるハンプ亭ダンプの四名だ。
第一試合は、ダンプがまひるに敗北。すっかり対戦における安定行動というものを理解したまひるは手堅い立ち回りでダンプを完封したのであった。
ちなみに、今日の司会はサタンと同じくバーチャルリンク所属であるサラ・マンドラだ。
サラは炎のような髪と角、尻尾が特徴的で、性格としてはとにかく突っ走るタイプの考えなしのキャラとして当人は演じている。
よくサタンとは、魔王軍チャンネルのショートコントのようなミニアニメで絡むことが多く、冷静に指示を出すサタンに突っかかるサラの姿は、視聴者からも大人気なのだ。
実際のところ、サタンとサラはプライベートではほとんど話さないが、職場では普通に仲良く話す程度の仲だったりする。
『Bブロック第二試合も終了したことで、次はBブロック最終戦ダゾ! さあさあ、林檎さん! 意気込みのほどをお願いするゼイ!』
「そっすねー。遅くて固い奴ばっか入れてると一撃技のカモだから、みんなも気をつけようねー?」
『煽ってんじゃねぇぇぇ!』
『抑えてくだされ桃華氏!』
『うっせんだよ、一試合目で負けたダメタマゴがぁぁぁ!』
『キャッキャ』
[モモタロス暴れだしたぞw]
[誰かあかやん呼んできて!]
[ダメタマゴとか懐かしいwww]
[まひるちゃんニッコニコで草]
ハンプ亭ダンプは人外の男性ライバーで、名前の通りハンプティダンプティがモチーフとなっている。見た目はタマゴに手足が生えただけというシンプルな見た目をしているが、トークがうまく、にじライブの中でも地味に人気のライバーだ。
林檎に煽られて発狂している桃華や、ダンプが罵倒されてはしゃいでいるまひるを見て、サラは振り絞るような声で呟く。
『魔王様、助けて……!』
[サラちゃんだけ正常で草]
[サタマンドラてぇてぇ]
[こんなカオスな空間に常識人を放り込むなwww]
[この光景を見るといかにAブロックが平和だったかわかる]
[基本レオ君とバラギがいちゃついてるだけだったもんな]
サラはサタンの事情を聞かされていたため、気軽ににじライブ剣盾杯Bブロックの司会を引き受けた。普段から魔王軍のメンバーを引っ張ってくれていることもあり、サタンの力になりたかったという事情もある。
でも、こんなに混沌としているなんて聞いていない! 見るのと参加するのとじゃ全然違う!
にじライブの空気に翻弄されているサラはいっぱいいっぱいだった。
『そ、それじゃあ最後の試合ダゾ! 二人共準備するのダ!』
「りょーかいっすー」
『オッケー!』
Bブロック最終試合は林檎対まひるだ。
白組姉妹と呼ばれるこの二人の試合も、なかなかに注目度の高い試合だった。
林檎とまひるは定期的にコラボをしている。息ピッタリな掛け合いをする二人の姿は、視聴者である小人や雛鳥からも好評だった。
現実は先輩後輩は逆であり、天然ボケなまひるに何かと林檎が振り回されていることが多いのだが。
『さて、二人の準備も整ったことだし――Bブロック最終試合、開始!』
【リンゴはしょくあたりをくりだした!】
【まひるはのるなエースをくりだした!】
[何度見てもしょくあたりで笑ってしまうw]
[毒林檎食べて腹でも壊したのかな?]
[というか、まひるちゃんのエスバのニックネームwww]
[ハァ……ハァ……敗北者?]
林檎はカリューからもらった色違いのモンスターを、まひるはレオがバンチョーというニックネームで使用していたウサギがモチーフのモンスターを繰り出した。
先程の試合では使用しなかったモンスターを出してきたまひるだったが、インターネット対戦では使用率一位を誇るモンスターだ。どういう技構成をしているかはある程度予想はつく。
林檎は迷った。
まひるの事情は自分がよく知っている。出来れば勝ってほしいと思っている。
だが忖度をしたとわかれば、自分にもまひるにもよくない結果になることは林檎も理解していた。
その結果、林檎が選択した技は――
「私にはこれしかないんだゃぁぁぁ!」
>ぜったいれいど
[いちげきまつり再び]
[どうせ当たる]
[これは敗北者の予感]
一撃必殺技だった。
林檎には先程の試合で一撃必殺技に頼る癖があってもおかしくないと思われている。
当たれば取れ高的にはおいしいし、外れれば自分は一気に不利になる。
そこまで計算して林檎は一撃必殺技を撃ったのであった。
『甘いね林檎ちゃん! ダイマックスだぁぁぁ!』
「あっ、しまった!」
【しょくあたりはぜったいれいどをつかった!】
【のるなエースにはぜんぜんきいてない!】
[さすがランクマ耐久配信やってただけあってまひるちゃんは手ごわい]
[ダイマすれば一撃必殺は無効だもんな]
[これは賢い]
[むしろさっきのモモタロスが……]
[それ以上いけない]
まひるのモンスターが〝ダイマックス〟を選択していた。
モンスターが巨大化した状態になると一撃必殺技は無効になるため、三ターンの間は林檎の得意技を封じたことになるのだ。
【のるなエースのダイサンダー!】
【こうかはばつぐんだ!】
【しょくあたりはたおれた!】
「……………………ほ?」
このゲームには物理攻撃力と特殊攻撃力の二種類が存在し、防御値もそれぞれ対応したものが存在する。
林檎の〝しょくあたり〟は物理方面に耐久を厚くして育てたため、特殊技への耐性は物理方面に比べて脆かった。
そもそもまひるが使用しているモンスターも、本来は物理攻撃が高く特殊攻撃が低い。
それを技の威力やとくせいなどでカバーしているところもあって、林檎の〝しょくあたり〟は一撃で戦闘不能となってしまった。
[ダイサンダー!? 元技はエレキボールか!]
[出たよ特殊型の初手ダイマ]
[まさかまひるちゃんが使うとは思わなかった]
この意表を突いた型は一部の上位陣では流行っている意表を突いた型だった。インターネット対戦をとことんやり込んだ人間ならば、うんざりするような型でもある。
『おっと、まひるちゃんが意表をついてきたゾ! ダイマで一撃技を無効化したのもファインプレー! これは林檎さんピンチダゾ!』
『ざまぁみそらせぇぇぇ!』
[まーだモモタロスが発狂してるよ]
[いくら煽ったところで、お前が三タテされた事実は消えないぞ]
『ここでの林檎氏の立ち回りとしては、一撃技に頼らずにダイマしてキョダイセンリツで壁を張って暴れた後に控えのエースで全抜きした方が良かったですな。ダイマを切ればダイサンダーも耐えますし、返しのキョダイセンリツでオーロラベールを張って次のダイサンダーも耐えることができますな。ふむ、持ち物も〝ひかりのねんど〟ですし後続へのサポートも可能ですな』
[めちゃくちゃ早口で言ってそう]
[オタク特有の早口]
[こんなに語っているが、このダメタマゴ。先ほど完封されたばかりである]
[まあ、ハンプが言ってるのは結果論だからしゃーない]
まさかの展開に桃華は狂ったように歓声を上げ、ハンプは冷静に状況の分析を始めた。
「どうしよ……えっ! どうしたらいいのこれ!? 私のしょくあたりが……!」
[珍しく白雪が焦ってるw]
[これはいい林虐]
[何か魔王様にマリカでコテンパンにされたときを思い出すなw]
結局、混乱した状態の林檎の残りの手持ちもまひるの〝のるなエース〟に全て倒されてしまった。
『てなわけで、勝者は白鳥まひるダゾ!』
『イェーイ! 勝ったよ!』
「やー、完敗ですわー」
子供のように勝利を喜ぶまひるの様子を見て、林檎は安堵したように彼女の健闘を称えた。
願わくば、あの二人が仲良くゲームできますように……そんな思いを込めて。
『それではにじライブ剣盾杯Bブロック。これにて終了です!』
まひるが勝利したことで、にじライブ剣盾杯Bブロックの試合は全て終了した。
三タテし三タテされる。両極端な戦績となった林檎のバトルの様子も小人によって切り抜かれ、カリューからもらった〝しょくあたり〟は林檎のエピソードの中でも有名な存在となるのであった。
今回のお互いの手持ち
林檎:ラプラス トゲキッス ギルガルド
まひる:エースバーン ミミッキュ マリルリ
桃華:サニーゴ カビゴン ドラパルト
おそらく、次回は結構試合が飛びますね。