にじライブ決勝戦後に行われるサタンとまひるのエキシビションマッチ。
多くの視聴者達を熱くさせた激戦の数々。初心者から成長してそれを制したまひると絶対王者として君臨するサタン。
こんなストーリー性溢れる対戦カードに視聴者が盛り上がらないはずがなかった。
「魔王軍の諸君! それに雛鳥達よ! 今日はまひる嬢とのエキシビションマッチだ!」
『こんまひ! こんまひ! こんまひー! どうも、白鳥まひるです! 魔王様は強いけど、絶対に勝つつもりで頑張ります!』
[こんまひ!]
[最近、魔王様のコラボの輪がどんどん広がっていくなぁ]
[四天王のみんなは基本コラボしないからな]
[魔王様が一番出張しているという]
[お労しや魔王様……]
サタンを含めたバーチャルリンクのVtuberは基本的に外部のVtuber達とコラボをしない。
魔王軍の日常風景のミニアニメでは、板東イルカなどのトップクラスのVtuberと何度かコラボしたことはあるが、頻繁に行っているとは言えないであろう頻度だ。
魔王軍チャンネルの五人で動画を撮ったりはしているが、コラボで配信などを行っているのはサタンくらいなのである。
「それでは、早速対戦の方に入っていこう。よろしく頼むぞまひる嬢」
『オッケー! よろしくね、魔王様!』
いつも以上にまひるの声は弾んでいる。それだけサタンとのコラボを彼女は待ち望んでいたのだ。
まひるの目的はサタンも理解している。
彼女はただ弟であるサタンと一緒にゲームをしたかっただけなのだ。
サタンが事務所を通して、まひるにコラボNGを出した理由は二つ。
単純に姉弟であるため、口を滑らせる可能性があるということ。
もう一つは、一緒にゲームをしているうちにサタン・ルシファナが
「では、エキシビションマッチ開始だ!」
『対よろ!』
サタンは表情を引き締めて隣にいる元実況であるポンバーとアイコンタクトをとって試合を開始した。
それから行った二試合はサタンの圧勝だった。
まひるは戦法をパターンで覚えていたため、いざ択を迫られたときに安定行動を取る傾向にある。
そこをサタンに的確に突かれ、良いように掌の上で転がされていたのだ。
既に勝敗が確定した三戦目。
それでも、まひるは最後まで戦いたかったこともあり、必死にサタンの戦術に食らいついていた。
そんな実の姉の気持ちを理解していたサタンは、本当の対戦相手が自分ではないという事実に申し訳なくなっていた。
【まひるはジェット^^をくりだした!】
まひるが出したモンスターは、600族と呼ばれる大器晩成型のステータスが高いモンスターだ。
最新作の600族であるドラゴンは、素早さのステータスが異様に高く技も豊富なため、さまざまな型がいることで有名だった。
それに対して、サタンのモンスターはレオ、まひるも使用していたウサギがモチーフのほのおのモンスターである。
サタン、およびポンバーは付けられたニックネームから〝じゃくてんほけん〟を持ったダイジェットエースだと判断する。相手の攻撃を巨大化した状態で受け、アイテムの効果で効果抜群の技を受けて火力の二倍にするという型である。
しかし、そんな二人の予想は裏切られることになる。
【ジェット^^のメロメロ!】
にじライブ剣盾杯の一試合で夢美がレオに行った戦法。それをまひるは使用したのだ。
ニックネームからはまったく想像できない戦法に、サタンは素のまま叫ぶ。
「ちょ、ニックネーム戦法はずるいでしょ!?」
『えー、だってこの子見た目がジェット機っぽいじゃん? それに頭の部分が^^に見えるからピッタリかなって思って』
「言われてみればそうだけども!」
[こ れ は 酷 い]
[まひるちゃんが推しカプから学んだ結果]
[文句はいちゃこライオンとバラギに言ってどうぞ]
[まーたレオ君に流れ弾が飛んでる]
[ニックネームに^^がついてることで煽っているように見えて草]
まさかの戦法に動揺するサタンとポンバー。
不運なことに彼らの手持ちの性別はほとんどが♂だったため、そこから三匹ともメロメロで動けないところを一方的に倒されてしまった。
『やったぁ! 勝った!』
「嘘だろ……」
[運ゲーとはいえ前シーズン一位に勝つとは]
[まひるちゃん成長したなぁ]
[どうしてにじライブのライバーは伝説しか作れないのか]
勝敗だけを見れば、三戦一勝二敗。
だが、どんな形であれ、格上のプレイヤーから勝利をもぎ取ったという事実は視聴者達を大いに盛り上げた。
完全にしてやられたサタンは、振り絞るようにまひるへと賞賛の言葉を贈った。
「……見事だまひる嬢」
『えへへ、ありがとう魔王様』
「メロメロも立派な戦術。それをレオとバラギの試合から思いついて実戦レベルに昇華した。我が輩の手持ちが全て♂だと気づいていたのだろう? あなたは本当にすごい人だ」
『――――っ』
本心の混ざったサタンからの賞賛に、まひるは驚きのあまり言葉を失った。
「三本勝負というルールで見れば勝者は我が輩であるが、試合内容としては、完全にまひる嬢の勝ちだーーよってエキシビションマッチ勝者は白鳥まひるだ! 異論は認めん!」
[承知!]
[承知!]
[承知!]
「というわけだ、まひる嬢。最高の時間をありがとう」
『っ……こっちこそ、ありがとう! すごく楽しかった!』
こうして、にじライブ剣盾杯からエキシビションマッチまで全ての試合が終了した。
まひるとの通話を切り、ライブ配信も切ったサタンはため息をついて横にいるポンバーへと労いの言葉をかけた。
「ポンバーさん、今日はありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ楽しかったよ。三戦目は負けちゃってごめんね?」
「あはは、あれはしょうがないですよ」
サタンとポンバーは談笑しながらスタジオを出る。
デビューからずっと二人三脚でやってきた二人は、戦友のように息がピッタリだった。サタン・ルシファナは二人で一つ。レオや夢美とは違う意味で二人は一蓮托生の運命を背負っていた。
別れ際、サタンはポンバーにまひるへの伝言を頼まれた。
「司君。〝試合を見ていた一人の友人〟としてお姉さんに伝えてほしい――あなたは強かった、ってね」
「本場さん……」
「ゲームに真剣に向き合う姿勢。それがプレイ中もひしひしと伝わってきたんだ。いや、ゲームだけじゃない。君にもずっと真剣に向き合ってきたんだろうね。だから、あそこまで成長できたんだと思う。だから、今度は君が彼女に向き合う番だ」
真剣な表情を浮かべてそう告げるポンバーに、サタンは目頭が熱くなるのを感じた。
「本場さん……これからもサタン・ルシファナとしてよろしくお願いします!」
「うん、これからも頑張っていこう!」
自分の半身とも呼べる存在であり、兄貴分のような存在であるポンバーに別れを告げると、サタンは帰路についた。
帰宅すると、リビングでくつろいでいるまひるの姿を見つけたサタンは久しぶりに自発的に声をかけた。
「姉ちゃん、ただいま」
「司……おかえり!」
久しぶりに声をかけられたことで、まひるは一瞬驚いた表情を浮かべたものの、笑顔を浮かべた。
そんなまひるに、サタンはある提案を持ちかけた。
「姉ちゃん、その……ゲームでもやらない?」
「ほへ?」
サタンからされたまさかの提案に、まひるは間抜けな声を零した。
「今日は配信でバトルしたけど、あれは配信だからさ……その、テレビゲームじゃなくて、トランプとかボードゲームとか、昔みたいにさ……」
「司……」
「今まで意地張ってごめん。姉ちゃんが許してくれるのなら、昔みたいにまた一緒に遊びたい」
真剣な表情で謝罪するサタンの言葉を受けたまひるは、目尻に涙を浮かべながら、満面の笑みを浮かべた。
「もちろんだよ!」
そして、まひるとサタンは昔のように時間も忘れて夜通しゲームに明け暮れるのであった。
そんな中、サタンは自分を勇気づけてくれた林檎へと感謝のメッセージを送る。
[いろいろとありがとうございました]
[よくできました]
「……林檎さんにはかなわないな」
林檎からの簡素な返信にサタンは苦笑する。
このまま良いようにしてやられたままというのも癪だったサタンは、まひるに林檎のことを聞くことにした。
「ねえ、姉ちゃん。林檎さんの弱点って何かある?」
「お世話になった人に酷いことしちゃダメでしょ。今度会ったときは素直にお礼を言いなさい」
「……はい」
しかし、林檎の味方でもあるまひるには一蹴されてしまった。
「あと、司と林檎ちゃんはお互い素直じゃないから喧嘩ばっかりになりそうだし、もうちょっと林檎ちゃんには素直になるように!」
「わかったよ……今度できるだけ林檎さんには素直に対応することにする」
「よくできました!」
拗ねた表情を浮かべるサタンの頭を撫でるまひる。
その表情はいつもの子供っぽい表情ではなく、慈愛に満ちた大人の女性らしい表情だった。
これにてまひる周りの話は終わりです!
さて、山月記、白雪姫、みにくいアヒルの子……さて次は何が来るでしょうね(すっとぼけ)
そして、今回のFA紹介コーナー!
【挿絵表示】
これはいい焼き林檎……本当にいつもありがとうございます!