第二王女なので人生イージーモードだと思ってたら放逐された(笑) 作:山羊次郎
九話:お祭りで本気出すとか大人げないなオイ
放課後のアルザーノ帝国魔術学院二年次生二組の教室は、驚くほどに盛り下がっていた。
「じゃあ『飛行競争』の種目に出たい人、いませんかー?」
システィの呼びかけに、誰も答えようとしない。それどころか目も合わせない。
「……じゃあ『変身』の種目に出たい人ー?」
やっぱり無反応。全く、これじゃ私が暇だからさっさと決めてくれないかな?
すると、システィがこっちに視線を送ってきた。
いやどうせいっちゅうねん(唐突な関西弁)。
「無駄だよ二人とも」
すると、かませ眼鏡……じゃなくて、ギイブル君が口を挟んできた。心なしか、眼鏡が光っている気がする。
「女王陛下がご来賓されるのに、わざわざ不様を晒す必要はないだろう。お情けで全員に出番を与えようとするからこうなるんだ」
「でも、折角の機会なんだし……」
「それよりも、早く全競技を君や僕みたいな成績上位者達で固めるべきだ。そんなんじゃ、ハーレイ先生率いる一組には絶対に勝てないよ?」
「……なにも、勝ち負けが全てじゃないでしょ!」
「いいや、全てさ。魔術の技比べが滅多にできないこの学院において、誰が優秀か明白にできる数少ない機会が、魔術競技祭なんだ。それに、当日は魔導官僚や帝国軍からの来賓ががいらっしゃる。その絶好のアピールの機会を、僕ら成績上位者が多く貰えるのは当然の権利だと思うだろ?」
相変わらず凄い言いよう。けど、それでみんな納得しちゃうから質が悪いんだよなぁ。
大体、こんなお祭りにそんな本気になるって、ギイブル君どんだけ負けず嫌いなの? ちょっと大人げないよ?
「あなた……本気で言ってるの?」
「勿論」
僅かに怒気を滲まして問いかけるシスティに、即答するギイブル君。
そして、遂に堪忍袋の緒も限界のシスティが、教卓をバンッと叩くのと――
「ここは俺に任せろ! この、グレン=レーダス大先生様にな―――ッッ‼‼」
グレン先生が勢い良く教室の扉を開け、奇怪なポーズをとって入室してくるのは、全くの同時だった。
「……ややこしいのが来た」
システィが呟くが、多分この場の全員が思ってるよ。……えっ? 私? ……ノーコメントで。
「喧嘩は止めるんだ、お前達。争いは何も生まない。それに、俺達は優勝という目標を目指して共に戦う仲間じゃないか!」
きらきらと輝くような、爽やかな笑みを浮かべて言う先生。
「全く、もう他のクラスはとっくにメンバー決めて、練習始めてんだぞ? それなのになんだ、お前らのその体たらくは」
「先生が好きにしろって言った結果ですけどね」
「……あれ? 俺そんなこと言ったっけ?」
「いいました! やっぱり人の話ロクに聞かないで適当に流してたんですね!」
マジで分からないという顔をする先生に、システィが頭を抱えて怒鳴る。
「うーむ、そうか。まあいいや。おい白猫、リスト寄こせ。どうせこのままじゃ決まらないんだ。ここは俺が、超カリスマ魔術講師的英断力を駆使して決めてやろう。お前らを優勝させてやる。遊びは無しだ、勝ちに行くぞ」
そう言って、いつになく真剣な眼差しでリストを見つめ、分からないところや不明瞭な点をシスティに聞いていく。
システィも、いつもと違いやる気があるのは嬉しそうだけど、どこか残念そうだ。
そりゃ、本気で勝ちに行くということは、ギイブル君が言ったような、成績上位者で全種目固めるということだろう。
それが分かっているからか、ギイブル君も得意げに笑みを浮かべている。
「よし、心して聞けよお前ら!まず一番配点の高い『決闘戦』は白猫、ギイブル、そして
先生が指名した人物を聞いた瞬間、クラス全員がえっ? という声を漏らした。
これまたどういうことだろう。『決闘戦』は配点が高いから、クラス上位者で固めると思ってたのに。
まあ、私的には、さっさと書かせてくれるなら退屈しなくていいけど。
私は無言で『決勝戦』の項目に名前を書き込んでいく。
「んで次は……『暗号早解き』? こりゃウェンディ一択だな。『飛行競争』は……ロッドとカイが適任だろ。……『精神防御』? ……しゃーない。ルミア、頼むぞ。えっと、それから……」
えっ、嘘。
よりにもよって『精神防御』かぁ……私、白魔術は得意だけど、ツェスト男爵苦手なんだよね。
「そんで『グランツィア』は―――。……そんで『変身』は、リン頼むぞ! よし、これで全員だな! 誰か質問のあるやつは――」
「納得いたしませんわ!何で私が『決闘戦』の選抜から漏れていますの⁉」
先生が言いきる前にウェンディが先生に抗議した。
「あー。お前呪文の数も知識もすげーけど、不器用な上にどんくさい所あるからな。たまに呪文噛むし」
「んなッ⁉」
しかし、事実だから言い返せないウェンディ。
実際、土壇場で彼女はミスをする癖がある。
「だから、使える呪文は少ねえけど、運動能力と状況判断の良いカッシュの方が、お前よりも適任だと判断した。気を悪くしたならすまん。だけどお前の【リード・ランゲージ】の腕前なら『暗号早解き』はお前の独壇場だろ? ここは任せたぞ。たっぷり点数稼いできてくれ!」
「……そ、そういうことでしたら……。仕方ありませんわね……。言い方が癪に障りますが」
すると、それを歯切りに、他の生徒たちも次々と先生に、どうして自分がその種目なのか質問していく。
例えば、ロッド君とカイ君の出る『飛行競争』は、基本的にリレーみたいなものだから、中の良い二人なら適任だろう。
それにしても、意外と生徒の子と見てるんですね先生。
「……いい加減にしてくれませんかね? 先生」
すると、今までピクピクと肩を震わせ、額に青筋を浮かべながらも、ずっと黙っていたギイブル君が口を開いた。
「これ以上勝率が上がる編成ができんのか?」
「そんなことは決まっているでしょう。成績上位者だけで全種目を固めるんです! それが毎年の恒例で、全クラスがやっていることじゃないですか!」
「……えっ?」
すると、先生がポカンとした表情でギイブル君を見る。
どうやら、全生徒を使いまわしていい事には気づいてなかったらしい。
「ふむ。そういうことなら――」
「ちょっとギイブル! 折角先生が考えてくれた編成にケチを付ける気!? 先生はこのクラスを優勝に導くって言ってくれたわ。そしてそれはみんなでやるから意味があるのよ!」
すると、ギイブル君の発言で落ち込み気味だったみんなが、「そうかも」とか「確かに……」とか、凄い感動してた。
えっ、さっき編成変えようとしてなかった先生? 気のせい?
「ですよね! 先生!」
「……お、おう」
「やれやれ、好きにすればいいさ」
思いのほかあっさりと引き下がったギイブル君。どうやら、私が思っているほど子供じゃなかったらしい。
そんなこんなで、魔術競技祭のメンバーは決まり、放課後練習に励むこととなった。
私? 私の種目は練習の必要なんてないし。やることと言えば、ホラー小説でも読んで精神力を鍛えることくらいだ。
「にしても、先生とシスティ、なんか噛み合ってないような」
そんな私の呟きは、誰にも届くことはなかった。
これ他作品の話なんですけど、アンケミスったので一度投票してくださった方、もう一度お願いしていいですか?
本当に申し訳ありません!作品は『ロクでなしに憑依した』っていうのです