第二王女なので人生イージーモードだと思ってたら放逐された(笑)   作:山羊次郎

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しばらくはこのssをメインに活動することになりそうです


十話:迷惑をかけるのは他人より自分

「ふぅ……疲れた」

 

 自室のベッドに身を投げ出しながら、思わず呟く。

 

「……やっぱりシスティは先生のこと好きだよね。うん、間違いない」

 

 私の恋愛センサーにビビっと来たもん。

 まあ……でも、

 

「こんな生活も、もうすぐ終わりか」

 

 私はもうじき、この学院を退()()()()()()()()

 話は数週間前に遡る。

 

――――――

 

―――

 

 

 

「……どうして、これを?」

 

 学院長室で、リック学院長が私に問いかける。

 

「……今回の事件、その中心にいたのは私です」

「偶然じゃろう」

「学院長は知っているんですよね。私の事」

 

 その質問に、学院長はだんまりを決め込んだ。

 

「沈黙は肯定と受け取ります。……私がいたから、皆が狙われたんです。そんなの、嫌じゃないですか」

「……気持ちは分からんでもない。だが、本当にいいのかい?」

「ええ。もう迷いはありません」

 

 今回の事で、私がどれだけ危険な存在かはっきりした。

 ここに居てはみんなの迷惑だ。システィが危険な目に遭う、先生が危険な目に遭う、皆が危険な目に遭う……全部、私のせいで。

 

「……今まで、ありがとうございました」

 

 私は学院長に深々と頭を下げる。

 

「……分かった。手続きは通しておこう。じゃが、流石に急なのでな。(くだん)のテロで上ももたついている。退学はもう少し先になるが、いいかね?」

「構いません。……本当に、ありがとうございます」

 

 再び礼を言って、私は学院長室を出た。

 

 

 

―――

 

――――――

 

 

「これでいいでしょ。一応、ギリギリまで皆には内密にしてほしいって頼んでるし、皆に止められることもないし」

 

 まあ、止めてくれる人がいるとは思えないが。

 

「それに、このままいけば今まで賭けで手に入れたお金でギャンブルする時間も増えるし!」

 

 わざわざ変身魔術で姿を誤魔化してでもしないと、ギャンブルを行えないのは難点だけど。

 まあ、危ないときはイカサマすればいいし。

 

「じゃ、そろそろ寝ようっと」

 

 そう思い、私はベッドの中で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 

「給料三ヶ月分だ! 俺のクラスが優勝するのに給料三ヶ月分を賭ける!」

「貴様……正気か⁉」

 

 馬鹿がいた。

 えっ、何言ってんのこの人? いや無理でしょ。

 一応何があったか説明しておくと、二組で練習していると一組が出ていけという。それで揉めているのをグレン先生が仲裁するが、一組担任のハーレイ先生がやってきて、あーだこーだと皆を罵倒。

 それに怒ったのか、先生が啖呵を切って、売り言葉に買い言葉でなんやかんやでこうなった。

 そして、一つ疑問に思ったのだが、

 

「先生、元金あるんですか?」

「……あ、ありゅに決まってるだろ⁉」

 

 噛んだ。絶対ないよこの人。もしかして魔術競技祭への意欲が高かったのって、特別賞与が狙い?

 

「そこまでです! ハーレイ先生、貴方の練習場所に関する主張には、全く正当性が見られません。これ以上見苦しい真似を続けるなら、学院上層部で問題にしますがよろしいですか?」

「ぐっ……! こ、この、親の七光りがぁ……!」

 

 そしてここでまさかのシスティによる権力行使。

 完全に逃げ道を塞がれ、さらにやる気を出してしまったハーレイ先生に、グレン先生が戦々恐々としている。

 

「いいだろう! この私に立て付いたことを必ず後悔させてやる!」

 

 そう言って去っていく一組の面々。いや、練習は? あと、既に先生は後悔してると思うんですが。

 

「先生がここまで信じてくれてるんだもの。絶対に負けないんだから!」

 

 システィの言葉に、さらに練習に精を出すみんな。

 凄いカリスマあるんだね、システィ。まぁ、頑張ってください先生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 いよいよ魔術競技祭当日。私は精神強化の訓練……なんてのはもうめんどくさいのでやってない。というか、『精神防御』には確か前回の優勝者のジャイル君が出るはず。

 あの学生離れした怪物君に勝てるとは思わないので、ぶっちゃけ私は殆ど訓練をしていない。そもそも勝てると思っていない。

 先生には悪いけど、頑張った給料三か月払ってもらおう。

 

『それでは、アルザーノ帝国女王アリシア7世の名の下に、魔術競技祭の開催をここに宣言します』

 

 あ、始まった。

 女王こと我が母による宣言で、いよいよ競技祭が始まった。一瞬、母上がこちらを見た気がしたのでしゃーなしに手を振ってやった。ふっ、私の懐の深さに感謝しなさいお母様。

 え、さっきからお母さんの呼び方が安定してない? だってどう呼べばいいか分からないんだもん。

 

「えーっと、最初の種目は『飛行競争』だっけ? うちはどうなってるかなぁ……」

 

 急に便意を催してしまったのでお手洗いに行ってたせいで、ちゃんと状況を見れていないのだ。

 さてさて、うちは下から数えて何番目……は?

 

「え、嘘。三位? 十クラス中三位? 嘘でしょ?」

「それが嘘じゃないのよルミア!」

 

 私がまさかの結果に驚いていると、横から興奮した様子のシスティが話しかけてきた。

 なんでも、この結果もすべて先生の読み通りらしい。

 今回の『飛行競争』は前回の速度を競うのとは違い、一定の回数飛びきる持久戦のようで、それを読んでいた先生は『飛行競争』に参加する二人にペース配分に注意するよう指導したらしい。

 そしてその作戦が見事に嵌って今の状況という訳だ。え、何それ凄い。

 

「先生は実は策士だった……?」

「凄いわよね! これならきっと勝てるわ!」

 

 マジですか。てっきり完全に無策だと思ってたんですけど……。

 

「たまたまいい成績が出たからって、調子に乗りやがって」

「よせクライス。彼らもいい思い出になっただろう」

 

 一組のクライスくんとハーレイ先生が二組のみんなに聞こえるようにそう言う。

 すると、その言葉に対抗意識を燃やしたみんなが、毅然とした態度で言い返した。

 

「これはグレン先生の策なんだ! グレン先生がいる限り俺達は1組に負けない! そうだよなみんな⁉」

「「「おうッッ!」」」

 

 ドンドンやる気が漲っていく二組のみんな。そして、そんな彼らを遠巻きに見つめて白目をむくグレン先生。

 それを見て確信した。あ、さっきの全部偶然なんだ、と。

 

「……まあ、頑張ってください先生」

 

 私は本人に聞こえないくらいの声で、健闘を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハッ! やったな二組の連中!」

「はしたないぞセリカ君……」

 

 来賓席、それも女王陛下の座る席の隣にいる、黒いドレスに身を包む金髪赤目の女性、セリカ=アルフォネアが膝を叩いて大笑いし、そんな彼女をリック学院長が諫める。

 

「あー、いやすまん。悪かったな陛下、許してくれ」

「セリカ様。流石に陛下に対する……」

「構いませんよエレノア」

「しかし……」

 

 流石に看過できないのか、アリシア女王の侍女であるエレノアがセリカに物申そうとするが、それをアリシア女王本人が止める。

 それでも納得がいかなそうなエレノアだったが、女王自らの意向である以上、従うしかなかった。仕方なく、引き下がる。

 そして、アリシア女王はセリカに問いかける。

 

「楽しそうですね? セリカ」

「ああ、楽しいよアリス。実に胸がすく思いだ」

「それほど彼は……?」

 

 アリシア女王が、生徒たちに囲まれるグレンを見ながら言う。

 

「ただの凡人のくせにあいつはなぜかいつも予想外のことをやってくる。昔からそうだったろ?」

「……ええ、そうですね」

 

 そして、アリシア女王は、二組の生徒たちから離れた場所で、遠巻きに彼らを見つめるルミアを見て、複雑そうな顔をする。

 ルミア=ティンジェルの退学は、アリシア女王も既知である。だが、彼女にそれを止めることはできない。女王が一生徒の進退を決するなど、あってはならないのだ。

 だからこそ、歯がゆい思いが残る。彼女から幸せを奪ったアリシア女王は、彼女にそれを返してあげることが出来ないことに胸が締め付けられる思いになる。

 

(……ごめんなさい。エルミアナ)

 

 心の中で、ルミア……否、エルミアナへと謝罪を送るアリシア女王。

 叶うならば、それを己の口で、彼女に直接伝えたい。そう、切実に願うのだった。

 

 




あれ?ギャグ要素何処?まあギャグって言ってないし別にいっか
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