第二王女なので人生イージーモードだと思ってたら放逐された(笑)   作:山羊次郎

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なんかロクアカ書くの久し振りな希ガス……。
あとロクアカ18巻の意外な展開に仰天したので……こっち書きます。
いや意味不明と思った方、安心してください。私もです。
どうせなら憑依グレン書こうと思ったけど、なんかイマイチ筆が乗らないというか……まあそう言う訳で十一話、どうぞ


十一話:変態という名の紳士は結局変態

 魔術競技祭は順調に進んだ。

 出だしがよかったのか、私たち二組は『飛行競争』の後も乗りに乗り、皆好成績を叩き出したのだ。

 けど、このままでは一組には勝てない。いい成績を収めるだけでは駄目なのだ、先生の生活的に。

 一組がぶっちぎりの最下位で、私たち二組が必ず一位になるには……。

 

『さぁ、続いての競技は『精神防御』です!』

 

 音声拡散魔術により競技場に響き渡る実況のアースさんの声で、観客が盛り上がりを見せる。

 そんな中、私はチラリと右横に立つ、巨漢の……とても生徒とは思えない体つきの少年を見上げる。

 彼の名はジャイル、昨年の『精神防御』の覇者にして、今回の競技の優勝候補である。

 この人の精神防御力はすさまじく、この競技を担当する精神支配術の専門家とも言うべき存在、第六階梯(セーデ)の魔術師、ツェスト=ル=ノワール男爵の精神支配術に耐えきるほどだ。

 なので、基本的にこのジャイル君に勝てる生徒がいるとは、講師含め誰も思っていない。

 先生は勝つ気でいると思うけど、正直難しい。

 

「おい、そこの女。悪い事は言わねえ、棄権しな」

 

 考え込んでいた私に、隣のジャイル君がそう促してきた。

 なるほど、私が怯えてると勘違いしたのかな? 見た目と違って凄い紳士だね。

 

「ふっふっふ、この私の心配をするなど二万年早いぜ」

「あ?」

「まあ冗談は置いといて、人の心配してる余裕あるの?」

「……なんだと?」

「精神防御は心の強さ。見た目じゃ分からないもの……もしかしたら、私が貴方に勝っちゃうかもねぇ?」

「……へえ、面白れぇじゃねえか」

 

 今までつまらなさそうにしていたジャイル君が、獰猛な笑みを浮かべる。

 ふむ、勝つと分かってる試合はつまらないと考えるタイプか。

 

『さぁ只今より、『精神防御』の競技を開始します! 学院の魔術教授、精神作用魔術の権威、第六階梯(セーデ)・ツェスト男爵です!』

 

 実況の声とともに、音もなくツェスト男爵が虚空から現れた。

 短距離転移魔術。並どころか一流の魔術師でも扱えない、超高度な魔術だ。それをあれ程正確に、精密にコントロールして行えるのは、両手の指で数えるほどだろう。

 

「ふむ、小手調べに【スリープ・サウンド】から始めてみよう。《身体に憩いを・心に安らぎを・その瞼は落ちよ》」

 

 ツェスト男爵が呪文を唱えるのと同時に、場の全員が精神力強化の魔術、【マインド・アップ】を唱える。

 

「……ふう」

 

 何とか耐えた。少し焦ったが、いきなりやられるなんてことはなかった。

 ドサリ、と。端の方で何かが倒れる音がした。

 思わずその方向を見ると、なんと一組の生徒がいきなり眠っていた。

 幾らなんでも早すぎるでしょ。男爵小手調べって言ってたじゃん。ハーレイ先生やる気なさすぎでしょ。

 

『恐らくは主力温存作戦でしょう。昨年の覇者ジャイル君がいますからね。僕としては紅一点、二組のルミアちゃんに注目しているんですが、どうです男爵?』

「そうだな……可憐な少女が、どこまで私の精神操作呪文に耐えてくれるのか。いたいけの少女の心を、どのように汚染し尽くしてやるか、実に楽しみだ!」

「穢らわしい‼」

「ブヒッ⁉」

 

 思わず顔を真っ青にして叫んだ私に、豚のような声でなく男爵。うわっ、キモイ。

 観客もそのキモさにドン引きだ。何でクビにされないんだろう。

 

『つ、続いては【コンフュージョン・マインド】!」

「うわあああああああ‼‼ あ、暑いぃィィィィィいいいいいい―――ッ⁉」

 

 術を掛けた対象を混乱させる精神作用魔術だ。

 どうやら、今回は環境を熱いと誤認させる操作をしたらしい。術にかかった生徒が次々に服を脱ぎ去って……。

 

「男子はいらぬ。脱ぐならルミア君――」

『少しは欲望隠せよエロ男爵ッ‼』

 

 うん、何となくそんな気はしてた。

 次は【チャーム・マインド】。しかし、当然のように私は突破し、術にかかったほかの生徒が……。

 

「だ、男爵……俺、貴方の事が……!」

「男は要らんッッ!」

 

 まるで悟りを開いた賢者のような形相で、この世の真理を語るかのようにのたまう男爵。

 うん、正直キモいっス。いや、分かりきってたけど。

 さらに競技は進み、男爵の放った【マリオネット・ワーク】により、複数の生徒が煽情的なポーズをとる。

 ……これを私にやらせようとしていたのか。王女だぞこっち? 元だけど。

 その後も続々と脱落者が現れ……最終的に残ったのは、私とジャイル君だけになった。

 

『失格者続出! 残ったのは昨年の覇者ジャイル君と、ルミアちゃんの一騎打ちだ~~っ!』

「あれれ? 意外だね、私の予想ではそろそろジャイル君は地を舐めてるはずなんだけどなぁ?」

「言うじゃねえか。だが、地を舐めることになんのは果たしてどっちだろうな?」

 

 私とジャイル君は目線で火花をバチバチと散らす。

 

「ふむ……では、そろそろ【マインド・ブレイク】にいってみようか」

『とうとう来ました! 対象の思考を破壊し、放心状態にしてしまう、最も高度で危険な呪文の一つです!』

「棄権するなら今のうちだが?」

 

 今までと違い、真面目な表情をした男爵がそう言う。

 なるほど、この変態がここまで真面目な表情をするということは、本当に危ないということか。なら競技入れるなよ、と言うツッコミはナシである。

 魔術師は常に危険と隣り合わせなのだ。

 

「……ふむ、では」

 

 ツェスト男爵が【マインド・ブレイク】の呪文を唱え、私とジャイル君は【マインド・アップ】を唱える。

 ここも耐えた。それから、次々と威力の上昇した【マインド・ブレイク】が私たちを襲い、気が付けば三十三ラウンドに突入していた。

 いつの間にか、私の呼吸は荒くなり、冷や汗が滲んでいる。なのに、隣のジャイル君は手を組み、仁王立ちのままだ。

 思わず息を呑んだ。これが、昨年の覇者の実力……。

 

「……凄いね、ジャイル君は」

 

 それは、もう負けを認めている言葉だった。

 勝てない……次は耐えられるかもしれないが、そこから先は駄目だ。

 けど、ジャイル君はあと十ラウンドは余裕だろう……まさか、こんな凄い人が学院にいたなんて。

 

(……あー、先生になんて詫びれば……システィも怒るかなぁ?)

 

 思わず空を仰ぐ。

 そのせいか、バランスを崩してジャイル君にぶつかってしまった。

 

「あっ、ごめん……えっ?」

「むっ?」

『……あれ?』

 

 私にぶつかられたジャイル君は、何故か重力に従い倒れて、起き上がってこない。

 

「えっ、あれ⁉ ちょ、ジャイル君⁉」

「……なるほど」

 

 いつの間にか近くにやってきていた男爵が、ジャイル君を見て確信したように頷く。

 そして、壇上に戻って告げた。

 

「ジャイル君は失格だ。恐らく今までは、()()()()()()()()()()()()()()()

「へ?」

 

 思わず間抜けな声を出す。

 観客もしばらくはしんとしていたが、次の瞬間歓声が巻き起こる。

 

『な、ななな、なんと⁉ 意外や意外、『精神防御』優勝は、二組のルミアちゃんだぁぁぁぁぁあああーーッ‼』

 

 マジか……立ったまま気絶って、凄すぎるでしょ……弁慶ですか?

 

「ルミア!」

「うわっぷ⁉」

 

 私が呆然としていると、いつの間にかやってきていたシスティが飛びついてきた。

 

「もう! 心配したじゃない!」

「ったく、変なところで意地張りやがって……よく頑張ったな」

 

 ……………。

 

「ま、まぁ⁉ わ、私に掛かればこの程度ちょろいちょろいって! う、うん……っとと」

「ルミア⁉ やっぱり体調が……」

「……こ、この程度何ともないよ……」

 

 そう、だから私の足が生まれたての小鹿のように震えてるのも気のせいなのだ。

 

「アホか。相当負担が募ってんだろ。一度休んだ方がいい」

「うぐっ……まあ、先生が言うなら……」

 

 そう言う訳で、午後は保健室で休憩することになりました。

 

「……暇」

 

 とにかく真っ白な部屋を見渡してぼそりと呟く。

 正直、体調はもう万全だが、セシリア先生が大事を取ってもう少し休んでいろと言うので、仕方なく休んでいる。

 だが、今はそのセシリア先生もいない……抜け出すなら今しかないだろう。

 

「抜け足差し足忍び足」

「こらっ、ダメでしょう? まだジッとしていないと」

「ひっ⁉ す、すみませんすみません……ん?」

 

 一瞬、セシリア先生に見つかったと思いへこへこするが、声がセシリア先生のものではないことに気づく。

 というか、とても懐かしい声だった。

 

「お、お母さま⁉」

「エルミアナ……」

 

 私の目の前にいたのは、何故か護衛もつけずにこんなところにやってきていた母上こと、アリシア七世だった。

 

 

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