第二王女なので人生イージーモードだと思ってたら放逐された(笑)   作:山羊次郎

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六話:ほんの僅かなやる気

「昨日は、すまなかった」

 

 早朝、珍しく遅刻することもなく教室にやってきたグレン先生は、開口一番、システィに向かってそう言った。

 ちゃんと覚えててくれたんですね。

 

「えっ……?」

 

 突然の先生の謝罪に、システィは困惑している。

 

「……俺は確かに魔術が嫌いだし、今でも人殺しの道具(そういう)モンだと思ってる。でも、それをお前に押し付けるのは筋違いというか……まぁ、なんだ、その……悪かった」

 

 そっぽを向いて、頬を染める先生可愛い。

 

「それじゃ、授業を始める」

 

 そう言って、先生は教科書を開いたのだが、何を思ったか、それを窓から放り棄てた。

 

「えっ」

「あー、授業の前にお前らにまず言っておくことがある」

 

 一拍置き

 

 

「お前らって、ホンッッとに馬鹿だよな?」

 

 

 いきなり煽ってきた。

 

「「「はぁぁぁぁああああああああ――ッ⁉」」」

 

 その言葉に、クラスのみんなはガチギレ状態。そらそうだ。

 

「ずっと授業態度見てきて分かったよ。お前ら魔術の事なーんも分かっちゃいない」

「ふざけるな!」

「お前にだけは言われたくないんだよ!」

「そうよ三流魔術師!」

「【ショック・ボルト】程度も一節詠唱できない奴が何言ってんだ!」

 

 最後の言葉だけは聞き逃さなかったのか、先生は

 

「ま、正直それを言われると耳が痛い。俺には魔力操作の感覚と略式詠唱のセンスが壊滅的になくてね。お陰で学生時代は苦労したぜ。……だがな、【ショック・ボルト】()()とか言ったか?やっぱ馬鹿だお前ら。じゃあ、今日はその【ショック・ボルト】について教えてやるよ」

 

 すると、先生は黒板に【ショック・ボルト】の呪文を三節で書き、実際にそれを唱えた。

 

「フン、相変わらず三節詠唱かよ」

「とっくに極めてますわ。【ショック・ボルト】なんて」

「……はぁ。アホのお前らは、こいつを省略することばっかり考えてるが、じゃあ問題」

 

 先生は、呪文を、《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》に改変した。

 

「こいつを唱えるとどうなる?そこの如何にも勉強してますって雰囲気の眼鏡君。答えて見たまえ」

「……やれやれ、何を言うかと思えば……その呪文はまともに起動しませんよ。必ず何らかの形で失敗します」

 

 呆れたように、ため息をつきながら答えるギイブル君。

 

「んなこたーわかってんだよバーカ。俺はその失敗がどういう形で現れるか聞いてんの。ちゃんと聞いてる?」

「そんなの!ランダムに決まってますわ!」

 

 今度はウェンディが叫ぶが

 

「ランダム?お前らこの術極めたんじゃねぇの?」

 

 先生はどこか舐めた態度でそう答えるのだった。

 

「なんだ?全滅か?」

 

 先生が教室全体を見渡すが、誰も先生の態度にイラついても、答えようとはしなかった。

 

「はぁ……。もういい、答えは”右に曲がる”だ。《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》」

 

 先生は黒板に向かって、四節で【ショック・ボルト】を発動。

 すると、放たれた紫電は、黒板に当たる前に直角に右に曲がった。

 

「そんな馬鹿な!?」

「あり得ませんわ!」

 

 先生の質問に答えようとした二人が驚愕する。

 

「ち・な・み・に、こいつを……」

 

 先生は呪文を《雷・精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》と、五節に変えた。

 

「こうすると、射程が落ちる」

 

 先生が呪文を唱えると、本当に射程が、今までと比較にならないほど低下していた。

 

「そして」

 

 今度は、先生は《雷精よ・紫電の  以て・打ち倒せ》と、一部を消した。

 

「こうしたら、今度は威力が激減する」

 

 先生は呪文を唱え、生徒の一人に向かって【ショック・ボルト】を撃つも、撃たれた本人は、何事もなかったかのように、不思議そうにしている。

 先生は私たちの様子を見て満足そうにうなずき

 

「まっ、極めたって言うなら、これくらいはできねぇとなぁ」

 

 ここぞとばかりに、先生はドヤ顔をする。

 

「いいか?魔術ってのは超高度な自己暗示だ。呪文を唱える時に使うルーン語ってのは、それを最も効率よく行える言語で、人の意識を変革させ世界の法則に介入する」

 

 先生は胸をトンっと叩きそう言う。

 

「お前らは魔術を世界の心理を追い求める物なんて言うが、そりゃ間違いだ。魔術はな、人の心を突き詰めるものなんだ」

 

 そこからは、すごかった。

 言葉巧みにシスティの顔を真っ赤にさせたり(何があったかは記入しない)、先生が教科書でド突かれたり、意味不明な三節詠唱で【ショック・ボルト】を発動させたりと。

 

「魔術にも文法と公式みたいなもんがあんだよ。深層意識を自分が望む形に変革させるためのな。それがわかりゃ、あの程度の改変は難しくない」

 

「要は連想ゲームさ。例えばそこの白猫の名前を聞いて何を連想するか。呪文と術式も同じだ」

 

 白猫……ソシャゲかな?

 

「それが分かれば、あの程度の呪文改変は難しくない。だが、その基本をすっ飛ばし、このクソ教科書で、とにかく覚えろと言わんばかりに、書き取りだの翻訳だの。それが、お前らが今までやってた、お勉強と分かりやすい授業ってやつだ。ハっ、アホかと。今のお前らは、単に魔術が使える魔術使いに過ぎん。魔術師を名乗りたいなら、自分に足りないものが何かよく考えろ。じゃあ、今からそのド基礎を教えてやるよ。興味ない奴は寝てな」

 

 しかし、その後の授業を寝ているものは、誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?どうしたのシスティ?」

「あっ、ルミア……あいつ、どこ行ったか知らない?」

「先生?多分屋上にいると思うんだけど……どうかしたの?また説教?」

「ち、違うわよ!その……今日の授業で分からないところがあって……それで」

「先生に聞きたいと。でも、なんか聞きに行くのは恥ずかしいと」

「な、なんでそこまで分かるの⁉」

 

 だって、全部顔に出てるし。

 

「うぅ……前まではこんなことなかったのに……!」

「それはだねシスティ。……自分で見つけ出さないといけないんだよ」

「わ、分分かってるわよ!と、取りあえず、付いてきてくれない?」

「うん、いいよ」

 

 仕方ない。友人の頼みなのだ。

 

「あっ、でも、あくまで、ルミアが分からないところがあるって言う体でね⁉分かった⁉」

「はいはい」

 

 その後、結局私がネタバラししたので、システィは先生におちょくられたのだった。

 

 




 そろそろズドンさん出番ですかね。
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