第二王女なので人生イージーモードだと思ってたら放逐された(笑)   作:山羊次郎

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こっちではお久しぶりです。
それでは、どうぞ!


八話:いい最終回だった……えっ、まだ終わりじゃない?

 

 ふと、私は瞼を開く。どうやら眠らされていたようだ。だが、妙に頭が痛むのは何故だろう。

 

「こ、ここは……?」

 

 そして目を開けた私の視界に入ってきた光景。

 私の周囲のある魔法陣……それは、本来「転送塔」にある転送法陣だった。

 

「おや、目覚めましたか」

 

 突如声を掛けられ、その方向を振り向く。

 

「……ヒューイ先生」

「えぇ。お久しぶりですねルミア」

 

 ヒューイ=ルイセン。

 かつての私たちの担任であり、一か月前に突如退職した講師。その人物がなぜここに……?

 

「……いや、そもそも学院にあの人たちが簡単に侵入できたことがおかしい。……先生、貴方は……」

「流石ですねルミアさん。その聡明さ、普段から発揮してほしかったですよ」

 

 それはすみません。

 

「生憎、脳細胞がトップギアにならなかったので」

「こんな状況でも変わりませんね貴女は」

 

 正直、状況が状況でなければ、普段と何ら変わりない、ただの日常会話だ。

 しかし、彼は恐らく、あのテロリストたちの内通者だろう。一か月前に突如退職したのはこのための準備。

 

「そうまでして、私に何を求めるんですか?」

「分かりません。ですが、上は貴女を必要とした。……少しだけ、貴女に文句を言ってもよろしいでしょうか?」

 

 どうぞご勝手に、とそう言って、私はヒューイ先生の愚痴を聞くことにした。

 

「元々、僕は王族や政府関係者が学院に入学した場合、その人物を自爆テロで殺害するための人間爆弾でした」

「……大変ですね」

 

 それは素直な言葉だった。

 なにしろ、実際に王族や政府関係者が入学してくる割合など考えるのも億劫だし、それ以前にヒューイ先生が死ぬことを前提にした計画なのだ。

 

「今貴女と僕を繋ぐ魔法陣……、これは白魔儀【サクリファイス】といい、所謂換魂(かんこん)の術式です。僕の魂を食いつぶして錬成した莫大な魔力で、この学院を僕諸共破壊する」

 

 そして、ヒューイ先生は私のほうを見ていった。

 

「しかし、貴女の言う通り、実際に王族や政府関係者が入学してくるなど、一体いつになるかは分からない。もしかしたら、僕が残りの寿命を終えるまで無事にいられるかもしれない。そんな考えを頭の隅で考え始めた時、貴女が現れた」

「……、」

「貴女が居なければ、僕はもっと講師を続けられた……いや、もしかしたらこんな方法(ばくだん)ではなく、人として人生を終えられたかもしれない。……何故、この学院に来たのですか?」

 

 そんなこと言われても困ります。

 っていうか、さっきから聞いてると私、爆殺されるの?

 

「いいえ、貴女は事情が異なり、生け捕りという形ですね」

 

 ということは、ヒューイ先生の恨みには、そこも含まれているのだろう。

 なにしろ、本来なら道連れのはずが、私だけ生き残れるのだ。恨まない方がおかしい。

 

「……別に、理由なんてありませんよ。友達と一緒に居たいって言うのは、誰だってそうでしょう?」

「……それは、()()()()()()()()?」

 

 …………。

 

「……貴女は別に、友人といられなくても良かったのではないのですか?」

「……そんなことは」

「ない、とは言い切れない。……知っていますよ。貴女が何度も、退()()()()()()()()()()()()のを」

 

 ……見られてたか。

 

「いつかこうなることが分かっていた……、だからこその行動でしょう?」

「……、」

 

 分っていた、何となくだけど。……それでも、決心がつかなかった。

 もしかしたら大丈夫なんじゃないか?自分が想像するようなことは起こらないんじゃないか?……そんな希望的観測ばかり常に心を占めていた。

 でも、()()()()()()()

 

「だらっしゃぁー!」

 

 突如、そんな叫びとともに転送塔の扉が蹴り破られる。

 そして、扉の先から現れたのは、

 

「先生! いつから顔色悪い系の主人公に⁉」

「……なんか一気に助ける気がなくなったんだが……ん? テメェが黒幕か?」

「えぇ、そうです」

「……もうさ、イケメンってだけで有罪なのにこんな余罪重ねちゃあなぁ……心優しいグレン先生も堪忍袋の緒がブチ切れなんだよ!」

 

 イケメン罪……とんでもない独裁ですね。

 すると、先生は懐からカードのようなものを取り出した。

 

「先手必勝……決まったな」

「……なるほど、それが(くだん)の固有魔術ですか。確か、魔術を封殺するという……」

「ああ。残念だが、俺の勝――」

「僕の勝ちです」

 

 被せるようにヒューイ先生がいい、先生がずっこけそうになる。

 

「……どう言う意味だ?」

「あと10分で転送法陣の書き換えが終了し、ルミアさんは僕達の組織に送られます」

 

 そして、ヒューイ先生は私にした説明と同じことをグレン先生にもした。

 

「……王族や政府関係者……つまり、やっぱルミアはやんごとなきお方だったってことか」

 

 ……先生。

 

「そんな顔するなって。似合わねえぞ?」

「どうします?確か、【愚者の世界】……でしたか。その魔術の効力切れを待つタイムロスでは、時間内での解呪(ディスペル)は絶望的……。あぁ、言い忘れてましたが、僕を殺すのは無しですよ。僕が死ねばその場ですべての工程がクリアされ術式が発動してしまいます。……そういえば、この学院の地下迷宮……、あそこなら貴方一人は助かりますよ。尤も、生徒たち全員は無理でしょうが」

 

 その話を聞き、先生は目を瞑っていた。

 暫くそうしていたが、突然目を見開いたかと思うと、自身の手首を噛み出血させた。

 

「《原初の力よ・我が血潮に通いて・道を為せ》!」

 

 黒魔【ブラッド・キャタライズ】。自身の血を魔力処理&触媒化させる魔術だ。これにより、魔力を使って文字を書かずとも、魔術式の文字を書くことが出来る。

 そして、最初の式を書ききった先生が叫ぶ。

 

「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》!」

 

 瞬間、魔法陣の外側の部分が剥がれ、消失した。

 

「早い……もう第一階層の解呪を……! なるほど、先の間に解呪ルートをイメージしていましたか」

 

 ……いや、ダメ。

 

「先生! その体じゃ最後までは無理です!」

「知るか。ちょっと黙ってろ!」

 

 そう言って、第二階層を解呪する先生。

 残り三つ。

 

「……にしても、なんで俺がこんな目に……ちゃんと労災降りるんだろうなオイ」

 

 そんな気の抜ける言葉とともに術式を書き終え、再び詠唱、解呪する先生。

 残り二つ。

 

「……お金なんて出ないのに頑張らないで。……もう大丈夫です、貴方がこれ以上頑張っても、何も残りません。例え一人生き残っても、誰も責める事だってしませんよ。私も怒りませんから、早く脱出を……」

学院(ここ)に残ってるのは俺やお前だけじゃねぇんだよ! 見捨てられるわけねぇだろ! ……それに、思い出しちまったからな」

「思い出すって……何を?」

「……なんで俺が魔術師になったのか……その原点……正直、あのみょうちくりんな夢を見るまで忘れてた」

 

 先生が解呪に手間取っている。どうやら、段階が進むにつれて術式が複雑になっているようだ。

 

「お伽噺に出てくるような『正義の魔法使い』……そんなモンに憧れて、俺は魔術をやっていた。……システィーナ(アイツ)と同じ、叶いもしねえ夢の為に、一体何年費やしたのかなんて、バカバカしくてもう数える気にもならねえ。……けどな、ここで逃げたら、俺の人生は本当に無価値になる。そりゃ無意味だったさ。ちゃんとわかってる。……でも、それだけで終わらせたくない! ああ、そうさ! ただの夢見がちなガキの、下らねえ意地だ! でも、そのために……俺自身の為に戦う! ここで誰も救えないまま終わるなんて、そんなふざけた結末は要らねえ‼ 最後はハッピーエンドで終わらせる、それが『正義の魔法使い』ってもんだろ‼ いいから黙ってろ、ここで全部片づける!」

 

 そして、四つ目を解除した……その瞬間、

 

「ゴハッ⁉」

「先生⁉」

 

 突如、グレン先生が血を吐いて倒れた。マナ欠乏症に加え、出血多量や裂傷……むしろ今まで動いていたのが奇跡と言えるだろう。

 

(……何かないの⁉ このままじゃみんなまとめて……!)

 

 今の私には【スペル・シール】が施されていて魔術が使えない。先生も魔力不足でまともに動くことも……魔力不足?

 確か、私の『異能』の力は……

 

「! ……と、どいて……!」

 

 私は魔方陣の中からグレン先生へと手を伸ばす。

 

「る、みあ……」

 

 先生が朦朧とした意識の中、私の手に触れた。

 残り一層……この段階でなければ、きっと届かなかった手。

 それが、届いた。

 

「……なら、先生の幻想(ゆめ)を守る為に、この力を使います」

 

 すると、先生の体が黄金の光に包まれる。

 

「……魔力が……漲ってくる……⁉」

 

 バッと飛び起きる先生。驚愕の表情で私を見ている。

 

「お前……、『異能者』だったのか……?」

 

『感応増幅者』。触れただけでその触れた相手の魔力を何十倍にも膨れ上がらせる異能。

 まさしく魔術師を助けるためにあるような異能だ。

 

「……いつまで呆けているつもりですか?」

「……へっ、助けられる奴のセリフじゃねぇだろそれ!」

 

 そういった先生は、先ほどの潰れかけのロボットのような動きが嘘のように、気力に満ちた動きで術式をくみ上げていく。

 スピードも今まででダントツに早い。

 

「うぉぉぉぉぉぉおおおお―――ッッッ!!! 《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》―――ッッッ!!!」

 

 渾身の叫びとともに、黒魔儀【イレイズ】を発動。

 瞬間、光と衝撃が、周囲を包み込んだ。

 

「……僕の負け、ですか」

 

 計画は失敗した。にも拘らず、ヒューイ先生はとても落ち着いていて……どこか安心しているようだった。

 

「やっぱり、死ななくてよかったですか?」

「そうですね……」

 

 私の質問に、ヒューイ先生は少し考えていった。

 

「確かにそれも嬉しいです。……けどそれ以上に、生徒たちが無事でよかった……そう思っている自分もいる」

「……、」

「結局、僕はどうすればよかったのでしょうか。組織のいいなりとなって死ぬべきだったのか、組織に逆らって死ぬべきだったのか……、それともただ逃げればよかったのか。……今でも答えが出ません」

 

 達観したようなヒューイ先生の言葉に、グレン先生は、

 

「知らねえよ。お前の境遇には同情するが、自分の道を自分で決めなかったのはお前の不始末だ。それくらい、テメェで何とかしやがれ」

「手厳しい……ですが、その通りですね」

「……そんじゃ、歯ぁ食いしばれ」

 

 そう言って、グレン先生はヒューイ先生の顔を殴りつける。ヒューイ先生はそれこそプロペラのように回転しながら、地面へと倒れ伏した。

 その姿を見届けたグレン先生も、限界が来たのか、ゆっくりと地面に倒れていく。

 

「おっと」

 

 それを私は肩で支えた。

 

「……『正義の魔法使い』か。……私も……ううん、やっぱり……」

 

 似合わないな。そんなものは。

 私は密かにそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、あの事件が正しく報じられることはなかった。

 社会的不安を考慮した帝国による徹底的な情報統制により、真実は知られないまま、学院には平和が戻った。

 あと、私の素性をグレン先生とシスティが知ることになっちゃった。

 

「失礼します」

「むっ、ルミア君か」

 

 ある日、私は学院長室を訪ねた。

 

「何か用かね?」

「はい……これを」

 

 そして、私はリック学院長にとある封筒を渡す。

 

「これは……退()()()か?」

 

 ……楽しかった時間は、終わりだ。

 

 




ルミアちゃんまさかの展開。
辞めないでルミアちゃん!貴女が学院をやめたら、これから先のストーリーはどうなるの!?
まだチャンスはある。軍の上層部が圧力を掛ければ、この退学を取り消せるんだから!
次回、ハーレイ先生(毛根が)死す! デュエルスタンバイ!
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