かわいそうなのはぬけない   作:かまぼこ

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 タイトルオチです。


虐待ネカマお兄さんではぬけない

 親戚付き合いというものは実に厄介なものだ。

 そんなことを考えながら、ある男が黒装束を纏いとある邸宅に赴いていた。

 

 集まっては一見和気藹々としているように見えても、家庭によっては言葉の裏が飛び交う。

 やれ夫が管理職になったとか、やれ息子が医大に合格したなど社会的地位の自慢大会が多い。このような不毛なやり取りでも、近所付き合いの多い田舎では村八分にならないための生命線になるのだから尚の事タチが悪い。

 

 彼にはもう一人身内がいるが、性格が色々とアレなせいもあり、いつものように代表として単独で向かっていた。

 

 幸い、男は著名人であったためか、他の親戚は大いに歓迎した。幾多の親戚が、少しでも名前を覚えてもらおうと男に話しかけてくるのに対し、そつなく対応する。

 ……葬式という不幸が(・・・・・・・・)きっかけに集まった(・・・・・・・・・)というのに、どこまでも利己的な奴らだと内心で見下しながら、喪服の襟をいじる。その不幸の真っ只中にいるはずの者たちも同じような態度であったためか、さすがに辟易した男であった。

 

 そんな場を、お手洗いと言って席を外して廊下を歩く途中。益のない宴会に巻き込まれる前に、そろそろお暇しようかと考えていた時のことであった。

 

 男は中途半端に開いた襖が気になり、ふと視線を見やる。

 そこには少女がいた。畳張りの部屋の隅で体育座りで俯いたまま、微動だにしない。

 

 体調を崩しているのか気になったため、近くの親戚に聞いてみた。喪服すら着ていないことから、この邸宅の子どもかと考えていたが、実態は想像を超えていた。

 

 

 曰く、よくわからない新興宗教にハマった家族の子供らしい。

 保護者の親も、他の親戚たちに勧誘ばかりしてくるせいで、親戚一同からも鼻つまみ者として扱われているようだ。

 そんな子供も当然に居場所はなく、かといって親に付いて行かせるのも憚られるため、仕方なく部屋でじっとしてもらっているとのことだった。

 

 こんな時も勧誘活動するなんて肝の据わった根性だな、と苦笑いを浮かべながら。

 

 その話を聞いた後、男は改めて例の少女を見やる。

 俯いて隠れていた頭に、一部だけ変色した髪が見受けられた。

 そして、あれは染めているのではなく、地毛であることも理解してしまった。

 

 少女は怒っているのか。

 泣いているのか。

 恥じているのか。

 それとも、何もかも諦めているのか。

 

 その光景に対し、男は何を思ったのか。

 それを確かめる前に──────時間切れとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は、邸宅を後にする。

 結局、少女と言葉を交わすこともなかった。

 ……ただ、男は後に、誰かにこのように語った。

 

 

 

 

 思えば、あれが俺たちの分岐点だったと思う、と。

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ランドソルでの生活基盤においてギルドとの結びつきが強い国だ。

 遠くない未来でも、どこかの腹ペコ娘が「ギルド専用の飲食店がある」と言う理由でギルド結成に奔走していたりする。貴族の令嬢だったり、学園の生徒たちだったり、非公認ではあるが構成員全員の合計年齢27歳の子供たちですら「とりあえずギルド結成しておこうぜ」とランドソルではぽこじゃかと生まれるものだ。数が増えすぎることにより、管理側であるギルド管理協会も認可の制限を設け始めているが、それは別の話。

 

 とにかく、活動目的がどうあれ、何かしらギルドという組織に属しているか否かで生活の幅が大きく変わってくるのだ。

 

 そんなランドソルの外れ。

 森という森、地下という地下を潜りぬけ、常人どころか魔物すら寄り付かないような僻地で、なおかつその中にある仕掛けを越えた先にも、とあるギルドの活動が行われていた。

 

 書斎……もはや図書館と見間違うほどの蔵書が敷き詰められた棚に囲まれるように、一つの長机がぽつんと立っている。その上座に座る少年のような、それでいて青年のような男は、騒がしくなった外の様子を察して、沈黙を切った。

 

 

「えー、というわけで、これから我ら【アストルム帰宅部】の定例会議を始めたい、と、思うんだけど──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い! 遅れた!」

 

「すまない! 遅れた!」

 

「二時間遅刻だブゥワッカヤロウ!!!!」

 

 

 身長の二倍ほどの高さの本棚も倒れそうなほどの圧が込められていた。図書館ではないが、常人なら静かにしなければならない気がする雰囲気でも関係なしにブチ切れた。

 そんな空気を読まない圧力を受けたノウェムとマサキは「あっこれはまずい」とヘラヘラした顔を引っ込める。

 

 

「お前らぁ……一応弁明聞いておこうか……?」

 

 

 ボリボリと、メッシュがかかった白髪を掻く。

 怒ってしまったが、なんだかんだこのギルドの皆は厄介な事情を抱えている者たちだ。

 追手などを撒くために時間がかかっていたのであれば、さすがに責められないなと冷静になろうと──────

 

 

「オクトーの様子を見てたらすっかり忘れてた!」

 

「うむ! ネネカ様のお伴をしていたらすっかり失念していた!」

 

「よーし、拳骨いくぞー。歯ぁ食いしばれー」

 

 

 

 完全に杞憂だったのでお仕置きすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、ゆるーく行こうと思っているけどよ、さすがに連絡なしに二時間待ちぼうけってのはどうかと思うんだよ。父ちゃん涙出てくるわ」

 

 

 

 街中であれば数百メートル圏内であれば誰もが聞こえるような大声を出しても、外に漏れることはない。元よりこの拠点は、ランドソルどころかアストライア大陸全土を監視しても見つからない場所に位置している。構成員が構成員のため、半端な隠匿性では拠点として困るのだ。

 こうして、涙目で変な悲鳴を上げたノウェムの声も、外に聞こえる心配はなかった。

 

 

「ノウェムはともかく、せめてマサキは頼むぜ。お前、普段そんなだけど一応国家公務員だろ? つーか、ネネカのやつはどうしたんだ?」

 

「面目ない! ちなみに、ネネカ様なら『どうせ無駄な会議なんでしょうし、貴方に任せます』と仰っていた! ご多忙な身故、何卒容赦してほしい!」

 

「そもそも出る気なかったと。俺、そんな人望ないのか……?」

 

「なーシャルルー。アタシもう行っていいかー?」

 

「自由かお前ら」

 

 

 シャルル、と呼ばれた青年は盛大にため息をつくも、誰もフォローしてくれないことにさらに落ち込む。

 これから要件話すからちょっと待ってろ、と気を取り直したのはいいが、ノウェムはえー、と不服そうにする。

 

 

「だって、またギルド名のことだろー? ずっと【天楼覇()剣】で良いって言っているじゃんかよー」

 

「うむ! ネネカ様ではないが、私個人も毎度無駄な会議に時間を割く必要はないと思う! ちなみに私は【ネネカ様と讃える私〜その他を添えて〜】が良いと何度も言っているではないか!」

 

「うるせぇよ。お前ら自分のアイデンティティー主張しすぎだっつーの。特にマサキとかなんだ? 料理か?」

 

 

 このギルド、構成員の我が強いせいか、まだギルド名すら決まっていないのだ。ちなみに、ここに居ないネネカはこの件に関しては特に関心を示していないが、マサキの案だけは却下していた。無念。

 

 確かにそれも重要な議題であるが、本題はそれではなかった。

 シャルルは先ほどまでの苦笑いを引っ込めると、一変して空気が変わった。ノウェムもマサキも、何かを察したのか即座に口を閉ざし、身構えるように彼に視線を向ける。

 

 

「マサキ、【迷宮女王(クイーンラビリンス)】のプリンセスナイトが見つかったってマジなんだな?」

 

「……うむ! ネネカ様からの情報だ! 間違いない!」

 

「そうか。俺も情報に聞いた特徴の少年が落ちていったのを観測した」

 

 

 裏付けが取れたな、と口にするシャルルは納得した。彼自身は、その少年との直接の面識は一回しかない。

 理由あって一部の記憶が無くなっている彼としては、何度も戦ったと聞いているネネカの情報と照らし合わせてから動きたかった。その件の少年こそ、このギルドの目的にとって重要なピースだから。

 

 そんな朗報を聞き、ノウェムの顔が一気に明るくなった。彼女も相棒───今は離れ離れになっているが───とともに何度も少年と戦い、最後は結託した腐れ縁とも言える仲だ。特に、完全に記憶を保持している彼女こそ、少年の力をこの場の誰よりも理解している。

 

 

「いよっし! アイツがいるなら──────」

 

「ただ、他の者と同じく記憶がさっぱり無くなってしまっているようだ」

 

 

 途中でマサキの割り込んだ言葉には、期待しているところ悪いという色が見えた。ノウェム自身、予想はしていたことだが少しばかり落胆する。

 覚えている身としては、忘れられることはどうしても辛いのだ。

 

 

「それどころか、一般常識や身についた基礎的な生活習慣も失ってしまっている。ネネカ様は肉体だけ蘇ったようだ、と形容されていた」

 

 

 他の者は、こちらの世界との整合性を合わせられているが、過去や生い立ちなどはあちらの世界と大きく乖離することはないようにされている。

 少年は過去のどの事例よりも酷い状態であった。

 もはや、赤ちゃんと例えても過言ではない。そんな彼に再び立ち上がってもらうには、相応の準備が必要になるに違いない。

 

 それでも、とシャルルは口を開いた。

 

 

「──────これで状況が動く。晶も真那のヤロウも、もしかしたら他の【七冠】も動き始めるかもしれない」

 

 

 こちらの世界で、実質的な支配者として君臨している者。

 彼女らの動きも本格的になることは充分に想像できる。シャルルはギルドの構成員たちを見渡すと、二人とも力強く頷いた。

 

 

「ネネカ様は引き続き情報収集と、加えて彼の支援をされるご意向だ。私もそれにお伴する!」

 

「アタシはこのまま他のヤツらの記憶の状況を調べるぞ!」

 

「なら、俺も他の【七冠】とそのプリンセスナイト探しを継続か。ま、やることは今までと変わんねぇか」

 

 

 己の意図を視線だけで理解した二人に満足そうに笑うシャルル。

 この世界の創始者の一人であるネネカと、彼女のプリンセスナイトであるマサキは、分身などを使った諜報活動。

 ノウェムは、己があちらの世界にいた時に調べた者たちについて、こちらの世界での生い立ちの調査と比較。

 そして、シャルルはこの世界に他にもいるだろうこの世界におけるキーパーソンたちの捜索。

 

 今までどおり、やることは変わらない。

 こちらの世界からの脱出、およびあちらへの帰還──────彼らの目的は多々あるが、このギルドの最も重要な課題である。

 

 

 

「いよっし! 皆! 俺たちは必ず現実に帰還するぞ! 【アストルム帰宅部】!健闘を祈──────」

 

「【天楼覇団剣】!また会おうぜ!」

 

「全てはネネカ様のため! 諸君! 頑張ってくれたまえ!」

 

「ギルドマスター、俺なんだけどな!?」

 

 

 

 なお、ギルド名はまだない。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 そんな会議を終えた【ネネカ様と讃えるアストルム帰宅天楼覇団剣(仮称)】。

 ノウェムもマサキも出て行き、再び一人となったシャルルは、おもむろに本棚からひとつの本を取り出す。そこにはピンク色の一枚の栞が挟まれていた。

 

 

「終わったぞー、ネネカ」

 

 

 栞を机に投げ、更にその先のソファに着地すると、突如栞が光に包まれる。瞬きをする間に人の形へと戻り、足を組みながら無気力そうな視線を向ける。

 

 子供のような容姿と侮るなかれ。

 彼女こそ、この世のあらゆるものに成れる【変貌大妃(メタモルレグナント)】。

 世界の支配者【七冠(セブンクラウンズ)】のひとりに連なる存在──────ネネカである。

 

 

「よくわかりましたね。ここに居ることはマサキにも伝えていないのですが」

 

「この程度見抜けなきゃお前の相手は務まらねーよ。つーか、マサキにも嘘ついたのかよ。お前のプリンセスナイトだろ」

 

「嘘はついていませんよ。実際、他の私は別件の対応をしています」

 

 

 しれっととんでもないことを口にしているが、今更シャルルは驚くこともない。分身と変身──────彼女の権能は相変わらず便利だなと片付けるだけにして、シャルルは本題を口にした。

 

 

「──────で、わざわざこんな回りくどいことをするってことは、俺と内緒話をしたいってことでいいんだよな?」

 

 

 ノウェムやマサキがいる場では話せないことがあるからこそ、この状況を作った。

 会議に参加しないと嘯いてまで、本の栞に姿を変えて待っていたことを鑑みれば、この意図は充分に察することができるだろう。

 

 

「予想通りの反応、ありがとうございます」

 

「おっ、まあ、一応ギルドマスターだしな」

 

「ええ。ただ、集まるまであれほど時間がかかったのは予想外でした。結果論ですが、これなら始まる前に私の意図を察してくれれば効率的でした。次からは直前にもリマインドしなさい」

 

「……へいへい。ご助言どうも、ネネカ先生」

 

 

 ダメ出しを受けたシャルルは不貞腐れながら頬杖をつく。そんな態度は意に介さず、フォローもせず、さて、とネネカは無視した。

 

 

「先ほど話があったとおり、かのプリンセスナイトがこの地に降りました。貴方が言ったとおり、これから状況が大きく動くことでしょう。だからこそ、改めて確認させてください」

 

 

 一息呼吸を挟み、さらに本題に切り込む。

 

 

「本当に千里真那と敵対するのですか?

 ──────元々は真那の側に居た貴方(・・・・・・・・・・・・)が」

 

 

 空気が重くなる。

 ネネカは真っ直ぐと、シャルルの目を射抜くように見つめている。その瞳には、一切の虚偽をも見逃さないと言う確かな意志が宿っていた。そんな世界の支配者に睨まれていても、シャルルは臆することなくいつもの調子で答えた。

 

 

「おいおい、今更聞くかそれ? ネネカだって、前はアイツの協力者としてあのプリンセスナイトと戦ったって聞いたぞ?」

 

「……最後に切り捨てられましたが。真那の企みは今の私の目的に反しますし、今回は対立するでしょう」

 

 

 目を閉じれば、あの時の記憶が甦る。

 世界の再編により、無くなってしまった前世と現実の記憶。シャルルとノウェムの協力により、ある程度復元させることができた。その中にも前世の最後の戦い──────ソルの塔で、背後から真那に切られたことはネネカの中で少なからず私怨として燻っている。口にはしないが。

 

 

「私はともかく、貴方の場合は違います。このアストルムの前──────いえ、ウィズダムで私達が手を取り合う前から、真那の味方であった貴方だからこそ、確認しなければなりません」

 

 

 そういうことか、とシャルルは納得した。

 形はどうあれ──────ネネカが目の敵にしている千里真那と共にいたからこそ、慎重にもなるのは理解できる。事実、世界の再編後のしばらくの間は、実際に行動を共にしていたのだから。

 

 

「言うまでもない。前世では不干渉を貫いたが、今世は違う。この世界で、俺とアイツはある一点において(・・・・・・・・)決定的に対立した。それは今も変わらない」

 

 

 シャルルは断言した。

 今までの緩かった雰囲気を一変させ、固い決意を示す。覇気が込められ、纏う空気はネネカにも決して劣らない存在感であった。

 

 ……ほんな僅かで、それでいて永遠のように思える沈黙。

 それを破ったのは、ネネカのため息だった。

 

 

「……いいでしょう。以前、聞かせてもらった対立の理由と、今まで貴方から受けた支援、そして貴方のその珍妙な状態に免じて、今日はこのあたりにしておきましょう」

 

「そうか……おい、なんかお仕置きみたいになってねぇか? しかも最後、普通に“変なヤツ”って言ったよな? 悪口か?」

 

「気に障ったのなら謝りません」

 

「いや謝れよ」

 

 

 用が済んだとばかりに立ち上がり、部屋を後にするネネカ。この会話で何か状況が進展するわけではないが、彼女にとっては重要なことだったのだろう。シャルルはそういうものなのだろう、と完結させる。

 

 ただ、と言い忘れたことを思い出したのか、ネネカはシャルルの方を振り返らないまま言葉を紡いだ。

 

 

「できれば、この関係が続くことを祈っていますよ」

 

「……ああ。一度真那に裏切られたお前が、限定的とはいえ、こうして俺と手を組んでくれたんだ。その期待に裏切らないように、俺なりに筋は通し続けるさ」

 

「……やはり、貴方からそんなお人好しの好青年のような言葉が出てくると寒気がしますね。調子が狂うので、その口を閉じてください」

 

「さてはお前俺のこと嫌いだな……ってもう居ねえし」

 

 

 少し目を離した隙に、ネネカは消えていた。

 元々分身だったのか、それとも何か小さいものに変身したのかはわからないが、特有の気配がなくなったので、今度こそこの部屋で一人になったことを確認し、背もたれに深くもたれかかる。

 

 どっと疲れが押し寄せる。

 前の世界でも、とあるギルドのマスターをしていたが、こんな経験は初めてかもしれない。構成員の変人振りは今の方がマシなはずなのに、何が違うんだろう、と考えたが、止めておくことにする。実は彼自身も、好き勝手行動して迷惑をかける側であったことを思い出したからだ。

 今は亡き……否、現実(あちら)で何とか生きてくれているはずであろう、かつての常識人枠の仲間に心で敬礼をしながら、椅子から立ち上がった。

 

 

「さてと、行きますかね」

 

 

 彼もまた、当面の目的のために拠点を後にする。

 目指すは首都ランドソル。彼の探す【七冠】や【プリンセスナイト】が誰か居るかもしれないと軽く考えながら、街から大きく外れた洞窟の中に降り立った。

 

 丘を登った先に見える白い城、ランドソル城を眺めながら、シャルルは王宮でのかつての主君とのやり取りを想起した─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや、お前さすがにアレはないんじゃねぇか? よくもまあ、あんなに必死に頭下げているヤツの首をすっ飛ばすとか言えるよな。クリスだってあそこまで言わねぇぞ?』

 

『いちいちうるさいわね。キャルは私の忠実な下僕として仕えられる、私はキャルを玩具にする、お互い合意の上じゃない』

 

『合意って言葉をもう一度データで調べなおせよ天才様。というか、少しは可哀想だなとか思わないのかよ』

 

『可哀想だからいいのよ。むしろあっち──────まあそこはどうでもいいわね。貴方こそ、甘やかしすぎて鬱陶しがられてるのに気づいていないのかしら?』

 

『……いや別に、誰かさんのフォローしてやっているだけだし。はー、これからまたフォローしないといけねーじゃん。加減しろバカ』

 

『とか言いつつ満更でもないのでしょう? 父親面しているように見えて、実のところ年下相手に媚び売っているだけじゃない。はっきり言って気持ち悪いわよ。一昔前はパパ活って言ったのかしら? 牢屋だったら好きな部屋を選ばせてあげるわよ?』

 

『人の皮を被った悪魔め……いや、今は女の皮を被ったネカマ野郎か……』

 

『あ゛? ぶっ殺されてぇのか?』

 

『なんだァ、テメェ……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、互いにキレた二人は王宮が半壊する寸前まで戦い、怒りのあまり我を忘れた真那がシャルルを盛大に吹き飛ばして終わりとなった。

 

 その後、飛ばされた先が魔物たちの巣窟となった海上の塔だったり、上階から下階へ降りる際に居た魔物やシャドウがまともに相手したら敵わないほどに強力だったりして本気で死を覚悟したシャルルであったが、本人としてはこうして生き延びた以上、捕まって魔力を生み出すだけの苗床にされなかっただけ何十倍もマシと割り切っていた。

 

 ただ、真那との間には決定的に確執が生まれてしまった。今更戻るつもりもないため、こうして現実(あちら)の世界に居た頃に面識のあった者たちを集めた。

 別に、前世のように面白おかしく暮らすだけなら結成しなくても良かったが、真那からの追手に対抗、自衛するため、非公式ではあるがギルドを結成したわけだ。ネネカとの接触など問題は色々あったが、こうしてなんとか無事にやれている。

 

 ただ、彼の中には懸念がひとつ。

 それは真那ではなく、真那の側に仕えるひとりの少女のこと。本人は知らずに、今まで共にいた主君と決別するきっかけとなった存在。彼女と戦うことになるのは、本当に気が進まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『や……やった! ついに魔物を操れるようになったわ! これで陛下もお喜びに──────え、記念に美味いもん食べに行く……って、ちょっ!? いきなり腕引っ張んな! 頭撫でるな〜! ぶっ殺すぞ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつに、剣、抜けるかな……」

 

 

 ポツリと溢した独白は、風の中に消える。

 堂々巡りになると考えたシャルルは思考を止めて、芝生の上に寝転ぶことにした。




 キャ虐 vs 反キャ虐 ファイッ!
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