Gerthena   作:mashi

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違和感
芸術家の子孫


やっと冬が明け、春に入った頃合いであろうか。とある美術館はいつもの閑古鳥が鳴いている静けさとは打って変わって、大勢の人で溢れかえっていた。

 

 

それもそのはず、この美術館では現在とあるイベントが開催されていたのだった。

 

 

「ゲルテナ展」

 

 

故人、ワイズ・ゲルテナの残された作品の展覧会が行われていた。

芸術家としての彼は、マイナーな部類ではあるが、彼の描く作品たちはどれも独特であり、見たものを惹きつける。そんな魔力をも持つような作品であり、熱狂的なファンも少なくはなかった。

 

 

そんな彼の作品も年を経るごとに、次第に評価され始め遂にはこの市営美術館にて展覧会が実現したのだった。

 

 

そんな展覧会の初日のことであった。この美術館はお世辞にも業績がよろしいは言えないといったところであったが、そんな不況を脱するべく意を決したゲルテナ展の開催を息をのむようにし見守っていたのは館長であった。

 

 

いくら話題に上がってきた芸術家とはいえ、まだまだマイナーな部類であることは確か。これが不発に終われば、自分の立場もとい美術館の経営すらも危ぶまれるのは必至であったが、この客入りを見てそれも杞憂に終わったことを確信し一安心ついた時であった。

 

 

そこに見た目の若い男性が一人館長へ近寄る。

 

「・・・どうも、館長」

その男はゲルテナの作品には目もくれずに館長と接触をした。

「おお!ゲルテナさん!いらしていたのですね。」

「ミッシェルと呼んでください。ゲルテナは曽祖父のブランドです。」

「おっとこれは失礼しました。しかし・・ご覧くださいよこの盛況ぶりを・・・いやぁ、いつ以来かなぁ。」

 

 

館長はその老化でしわの増えた顔を伸ばしたかのようににこにこ笑顔で大勢の来客を見る。

「・・・それは結構」

「ええ、それもあなた様のおかげですよ。ゲルテナ氏の作品の展示は国内でも初のことでしたから。あなたの協力無ければ実現しなかった。さすがは唯一のご親族だ。」

館長はミッシェルの手をがっちりと握った。

ミッシェルはふうと息をつくと本題へと話を飛ばした。

 

 

「館長。以前もお伝えしてると思いますが、来場者と退場者のチェックを絶対に忘れないでください。異常があったらすぐに私に連絡を」

「ええ、ええわかっておりますとも。その報告書を見てあなた様も驚かれることでしょう」

館長はミッシェルが客入りをかなり気にしているものだとでも思っているのだろう。

 

 

「むしろ驚きたくないんですよ」

その意を見抜いたかのようにミッシェルは続ける。

 

 

「はて、何故退場者まで確認をなさるのでしょう。そんな例はあまり聞きませんが。」

「曽祖父の作品は曰く付きだからですよ」

「またまた御冗談を。確かにゲルテナ。あなたのおじい様の作品はどれも魅力的で、人として例えるのなら妖艶であります。」

 

 

「ですが、これらの作品がとても呪われているとは・・とてもとても・・・」

館長にとってはいわくつきだのそんなことはただの与太話に過ぎなかった。そんなことよりもこの来場者の数にホクホク顔を隠せない様子でいっぱいだった。

そんな館長の態度に呆れたミッシェルはその場を後にすることを決めた。

 

 

「まぁ、私もそうであってほしいとは思っています。では、なにかあったら連絡を。」

「はいはい」

 

 

別れ際にも館長の瞳に映っていたのは来場者の波であった。

ミッシェルが美術館を後にした際、一組の家族とすれ違った。両親と白いシャツに赤いスカートを着た女の子がエントランスに向かって歩いて行った。

 

 

そういえば、あのくらいの女の子の絵だったよな。名前は・・・

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