Gerthena   作:mashi

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ちょっと薬物表現が出ますのでご注意


ようこそゲルテナの世界へ

初めてぶっ飛んだ日の出来事って覚えてるか?

 

 

たしかまだガキの頃だったよな。トニーとかいう今なら顔見ただけでも容赦なくタマをブッ潰してやるようなクソ野郎と俺はツルんでた。

 

 

ある日、いつもの場所で屯ってたらよ、こいつはいつもの紙タバコじゃなくて葉巻なんて取り出しやがったんだ。

最初は葉巻なんてスカしたことができるような奴じゃねぇだろと、ヤツを小突いてやったらそれはマリファナだったんだと。

 

 

こんなんも吸えねぇなんてガキだと言わんばかりに自慢げに見せつけてくるこのクソッタレに、俺は腹が立ってソレをブンどって口へ運んだ。

 

 

一息吸ってみると、別に驚かなかったな。妙な味はするけど、所詮ハッパなんてこんなもんかと見くびってたのさ。でも一息おいた瞬間、一気に世界が変わった。目に入る全てのモノが芸術作品だ。アタマは霧が晴れたように青天井に突き抜け、高揚感は常にフルバースト状態さ。

 

 

まるで夢に住んでる。そんな心地だ。だけどよ、その夢から覚めちまうと、待ってるのは大体地獄なのさ。

 

 

つまり何が言いてぇかって言うとな、今それとちょっと似てるんだ。

 

 

何がって言いたいんだろ?まぁ俺もこれをなんて呼ぶべきかはわからねぇ。

 

 

確かに俺とコイツは絵の中へ飛び込んだ。状況が状況だ。ヘンな躊躇いはなかったよ。

 

 

ただそこからだ。不思議とうねったわけのわからん空間に俺たちは包まれた。

 

 

そこはちょっと不思議でさ。上下左右もなければ時間も、重力も空間も希望も絶望もない。そんな気がしたよ。でも無の世界とかそういうのとはちょっと違うんだ。ここは妙に心地が良い。体が浮いてどこかへ流されるその感覚はまさに、初めてハイになったあの時さ。

 

 

それに流され続けると、いろんなものがスクリーンのように見えてくるんだ。それはこの世界の始まりなのか終わりなのか。過去なのか未来なのか。とにかく俺の脳内に直接投げ込んでくるように、いろんなものが一気になだれ込んできたんだ。

 

 

その中で少し俺の過去が見えた気がしたな。何が見えたって?ガキの頃の俺だよ。

 

 

ああ、懐かしい景色だローズストリートの裏路地、ここがいつもたまり場だった。ああ、アンソニー、お前、20になる前に死んじまったんだよな・・・。

 

 

これは?ああ、確かサンセット少年院だな。覚えてるよ。15で初めてぶち込まれた。あれはなんでだったかな。喧嘩相手を病院送りにしたんだったか。おお、看守に掴みかかったりして、荒れてんな俺・・。

 

 

・・・これは?・・・これ、俺だよな?ずいぶんと幼い・・・10歳くらいの頃か?で、どこにいるんだお前・・いや、俺?

 

 

薄暗くて、埃かぶって汚ねぇ所。どこかの地下か?え?俺、こんなところ来た事あったのか?

 

 

そしたらよ、そいつというか俺は俺の目の前に手をかざしてきやがったのさ。だから俺も手を添えてやった。そしたらその景色は、一瞬で泡みてぇにはじけ飛んで俺はその世界のどん底へ落ちていった。

そこで俺は何かに掴まれ、揺さぶられるんだ。

 

 

ああ、俺はこれからまた、地獄へ落とされるのかな。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・ィラ!ヴィラ!起きろ!」

 

 

ミッシェルはヴィラの身体を揺さぶり、彼の覚醒をせかした。

 

 

「あっ・・・・くっ・・・あぁ、クソみてぇな目覚めだ。」

 

 

けだるそうに起き上がったヴィラは少しぼうっとして辺りを見渡す。

 

 

「なんだ?ここ、美術館じゃねぇか。」

 

 

「そうみたいだな」

 

 

「俺たち、絵の中に飛び込んだんだよな?それで、なんだ戻ってきたってことか?」

 

 

辺りは来た時と同じ美術館。展示してあるものも同じなら、レイアウトも同じ。では先ほどのあれは何だったのか?

 

 

「じゃあ、失敗か?一旦外出ようぜ。」

 

 

二人は美術館内を歩いた。だが、隠しきれない違和感が彼らの第六感を襲う。

二人のものでない、誰かの足音、赤子のかすかな鳴き声、見えない大衆の笑い声など、それは確信を持てない程度のものだが、どこか否定もできない。

 

 

「・・・・・なぁ。さっきから、足音とかが聞こえてくる気がするんだけどよ、俺らの足音じゃねぇよな?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

ミッシェルは険しい表情で周りを見渡す。

 

 

「急ごう」

 

 

二人は小走りでエントランスにたどり着く。

 

 

そしてヴィラが手をかけてドアを引くが

 

 

「ああ?開かねぇ?おい!館長さんよ!俺らだ!開けてくれよ!」

 

 

扉の向こう側へ問いかけるも、何の返事もない。

 

 

「なんだってんだ?この!」

 

 

思いっきり扉に蹴りを入れるが、結果は変わらない。

 

 

その後ろから、ガンガンと音がする。その音の先にはミッシェルがエントランスの窓を叩いていた。

 

 

「・・・ダメか。カギはかかってないはずだが、開かない。」

 

 

「どいてみろ!」

 

 

ヴィラは近くにあった椅子を持ち上げて窓に思いきり投げつけた。

 

 

ガコンッ!椅子はと大きな音を立てる。しかし、窓は割れず、椅子は壊れて跳ね返り、窓の下に力尽きた。

 

 

「じゃあこいつでどうだ?」

 

 

ヴィラは懐に手を入れ、拳銃を取り出す。セーフティーを解除して窓に照準を合わせ、引き金を引いた。

 

 

心臓に突き刺さるような火薬の破裂音が館内へ鳴り響き、その後の静寂の時間を薬莢がカツンと彩った。

 

 

「・・・まじかよ。」

 

 

銃撃を受けた窓は割れるどころかヒビ一つ入らなかった。

 

 

「45口径だぞ?VIPカー並みの強度だな」

 

 

「・・・・ヴィラ!」

 

 

ミッシェルの声に引かれ振り向くと、エントランスの大きな壁に赤い絵の具が滝のように一面に流れ込む。そしてそれはとある文字を形成した。

 

 

 

 

「・・・・なるほど。パーティーには遅刻しないで済んだみたいだな。」

 

 

それを見たミッシェルは強くはぎしりをした。彼はとうとう。あの時のトラウマと対峙することとなったのだ。

 

 

そんな二人の下へ何かがストンと落ちてきた。それは見るものを魅了する花。

 

 

「・・・なんだこれ?薔薇じゃねぇか」

 

 

「ヴィラ。これは大事にしろ。これは俺たちの命に等しい。」

 

 

「命・・?これが?」

 

 

ヴィラは自身の足元に落ちた紫色の薔薇を拾い上げ、それをまじまじと眺める。

 

 

「薔薇が枯れれば、命も枯れるか。なんかの映画にありそうだ。」

 

 

ミッシェルも彼の下に落ちた緑色の薔薇を拾う。

 

 

「またこの色か・・。だが今度は、そうはいかない。」

 

 

二人はその薔薇を安全なコートの内側にしまうと、先ほどの文字が映し出された壁は姿をすうっと消し、地下への入り口を示した。本来この美術館に地下は存在しない。それはわかりやすい程に地獄への入り口であることを示唆していた。

 

 

「・・・お先にどうぞ、お嬢さん?」

 

 

ヴィラがそこに向かって手を指し伸ばす。

 

 

ミッシェルは息を整えるとそこへ向かって歩きだした。

 

 

 

 

 




特殊タグを使うのに結構苦戦しました。
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