Gerthena 作:mashi
「圏外かよ。そりゃあそうだよな。」
ヴィラは最新式の携帯電話を眺めながらミッシェルの後をつける。
「携帯ってのは電波ありきだよな。電波がなけりゃただの鉄クズだ。」
「そんなことはない。いろいろ役に立つ。」
「ほぉ、例えば?」
「この先の暗い道を照らしてくれたりだ。」
地下に続く階段を下りた二人の先には、真っ暗で何も見えない通路が大口を開けて待っていた。
「なるほどな。役に立つ鉄クズもあるわけだ。」
そういい、ヴィラが携帯のライトをつける。が、その光は何も照らさなかった。
「ああ?んだよこれ?照らしても先が見えねぇぞ」
すると通路の壁にじわっと文字が浮かぶ
この先フラッシュ禁止
「あっそ。ったく、黒い絵の具を照らしてるみてぇだ」
「仕方がない。このままいくぞ・・!」
「手でも繋いどくか?」
二人はそのまま暗闇の中へ突き進んでいった。しかし以外にもその暗闇は一瞬だけだった。その先には明るい空間が開けた。いや、相対的に明るいと言ったほうが正しいだろう。
ただその開けた世界に希望があるかと言われれば、怪しいところだ。
そこは意外にも、普遍的な美術館を踏襲したような場所だった。
そこにはいくつもの絵が飾られ、モニュメントが展示さていた。
その絵や作品たちの中には、あの美術館には展示されていなかったものも多存在した。
「なんだ?普通の美術館っぽいな。」
「気を抜くな。ここは」
「わーってるって。これでも敵の本拠地に赴くのは初めてじゃないのさ」
その時、二人が通過しようとした通りに飾ってあった赤い顔のような絵が、彼らに向かって唾のようなものを吐きつけた。
「うをっと!」
二人は間一髪それを避けた、その絵はその様子を面白がるかのように舌をぺろぺろ振りながら二人を見ていた。
「てめぇ!こんにゃろ!この俺に唾吐きやがったな!ふざけんじゃねぇぞ!ぶっ殺されてぇか!!」
そんなヴィラの怒りをぶつけられようと、絵は変わらず呑気に舌をぺろぺろ動かしていた。
「ああそうか!なら俺がもっと良いデザインにしてやるよ!」
ヴィラは拳銃を取り出そうとするが、
「落ち着け!相手にするな。それ以上の害はない。」
ミッシェルになだめられ懐に入れた手を何も掴まずにそっと出した。
「チッ!こいつ、アメリカ人の絵だろ。」
不貞腐れたヴィラは反対側の壁に背を預け、タバコを取り出す。
「・・・・ヴィラ!!」
そんなヴィラの方を見たミッシェルは、急に血相を変えて叫んだ。
「あ?」
口にタバコを加え今火をつけようとしたヴィラはミッシェルのその声を聞いてポカンとする。しかし直ぐにその意味を理解した。
ヴィラがもたれた壁から複数の腕が出てきて、ヴィラをこちらの世界へ引きずりこむかのように彼の身体を抱え込むように掴んだ。
「クソ!なんだってんだこの!」
ヴィラは必死に腕を振り払う。
ミッシェルもそれに加勢し一本一本腕を外した。
その時、腕の一本がヴィラの顔を覆うような形で手のひらを大きく開いて掴みかかった。
「ああクソ!キメェんだよ!」
ヴィラはその手の薬指をあらぬ方向へへし折った。
そうするとその腕は力を弱め、おとなしくそのまま壁へと消えていった。その時にヴィラの加えていたタバコも一緒に壁の中へと消えていった。
「・・・・タバコを取られた。最後の一本だったってのに。」
壁を見つめそうつぶやく。
そうすると壁に
館内禁煙
という文字が浮かび上がる。
「・・・・俺、ここ嫌い」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人はその空間を突き進んだ、果たしてこの道で何かがあるのか。それとも空振りに終わるのか。確信なき探索は続いた。
「●×●-●=?なんのこった?」
「鍵を探せだと?開けとけよ!」
「この絵のタイトル?知るか!!」
二人の行く手を阻むのは首のない石像などだけではなかった。
一つ一つ先に進もうにも、やたらに面倒な謎解きじみた仕掛けが彼らを待ち受けた。
ヴィラはそれにいちいち腹を立てるが、ミッシェルは冷静にそれらを対処する。
「深海の夜だ。美術館にもあったものだ。」
「おお、流石だな。お孫さん」
「ここへ来たことはあるんだ。仕掛けの勝手はわかってる」
扉をくぐった瞬間に例の石像が襲い掛かってくるも、ヴィラはそれを軽々しく受け流す。
「はは、ちょっと慣れてきたな」
「・・・・お前が居てつくづく良かったと思ってるよ。」
「俺に惚れるなよ。・・・・・?」
ヴィラは何故かキョロキョロと周りを見渡す。360度、天井や床、部屋の隅々まで、それは探偵さながらに。
「どうしたんだ?」
「なぁ、この空間ってのはどっかの美術館をトレースしてんのか?」
「それはわからないな。」
「さっきから妙に懐かしい気がするんだ。例えば、なんて言おう。4歳くらいの頃に見た映画とかって久しぶり見返すと、内容覚えてない割には懐かしさはあるんだよな。そんな感じ」
「本でならあるかもしれないな。だが、俺にはここは懐かしいどころか、思い出したくもない所だが。」
「まぁ、そうだよな。でもよ俺の親は美術館に連れてってくれるような連中じゃなかったしな。ま、気にしねぇが吉か」
そういいながら次の通路へと出る。その時、額縁から上半身だけ出た女たちが2体、それぞれ赤と青の色違いが、何かに群がっていた。
「バーゲンでもあってんのか?」
その群がる中に居たものにミッシェルは絶句する。
「・・・!人か!?」
それは遠目から見てもわかる程の人間の横たわった姿。
「まさか・・・!」
「おいお前ら!そっから離れろ!」
ヴィラが大声で彼女らに呼びかけるが。
その女たちは二人を見ると、妙な殺気を立たせて二人の方へととてつもない勢いで迫ってきた。
「応戦するぞ!」
二人は彼女らへ銃を向ける。
ミッシェルは引き金を引くのを少し躊躇うが、ヴィラは問答無用で引き金を引いた。
それに続いてミッシェルも引き金を引く。
火薬の炸裂する音が彼らの耳を刺激する。ミッシェルの撃った弾は二発外れたが、一発は青い女へ命中した。
ヴィラは二発で赤い女をしとめる。
女たちは呻き声を上げ、すぅっと額縁の中へ消えていった。
「爺さんの絵って今いくらで取引されてんだ?」
「人物像なら、かなり値がつくのは確かだな・・。」
ミッシェルは肩をさすりながら答える。銃の衝撃は思ったよりも肩を刺激する。
「あとで請求書が来ないことを祈っとこう」
二人は銃を下げることなく、構えた状態でその横たわったヒトへ近づく。
その横たわったヒトは成人の男性であると確認できた。
「なぁ、こいつって・・」
うつ伏せになっている状態をひっくり返し、あおむけにする。そしてその男の顔を確認した。
「・・・・間違いない。ギャリー。彼だ!」
「・・ビンゴか」
すぐさま二人は銃をおろし、彼の状態を確認する。
しかし、脈はなく、心音も聞こえない。ただ体温がわずかに感じられる程度だった。
「やっぱ・・・死んでんのか・・・?」
「どうだろうな。ヴィラ、携帯のライトを!」
「ああ?」
ヴィラはわけもわからずに携帯のライトをつけ、それを差し出す
それを受け取ったミッシェルはギャリーの瞼を開き、瞳に直接ライトを当てる。
「・・・瞳孔拡大は起きてない。そして対抗反射も機能している・・?」
「つまり・・なんだ?」
「少なくとも、彼はまだ完全に死んだわけじゃない。所謂仮死状態だ・・・と思う」
「よーく知ってんな、流石作家だ。」
「だが、これは長くは続かない、早い所解決策を。」
ミッシェルは立ち上がってヴィラに携帯を返した。
「こいつにも薔薇があるんじゃねぇのか?」
「だろうな。だけど、それがどこにあるのか・・。」
「とりあえずここはヤベェ。どこか場所を移すべきだろ。」
そういうと、ヴィラはギャリーを抱え、背負った。
「よし。俺の背中でホトケになんなよ!」
ミッシェルは安全な場所を探すために次のドアを開けた。ヴィラがギャリーを背負っている為、彼はそのリードを努めなければならない。銃を構えて念入りにクリアリングを施す。
その時、一つの扉がバン!と音を立てて勢いよく開く。
「!!?」
ミッシェルは銃をすぐさま構えてその方向を注視した。
なんとそこからは灰色の囚人服を着たような成人の男と思われるものが足を引きずりながら出てきた。その男は手に手錠を掛けられ、頭には大きなボロい布が掛けられてあり、顔を確認することができなかった。
『ギャアアアアアアアアアア!!!』
とその男は耳を突き刺すような声で悲鳴にも似た声を上げる。
「こりゃあ、ガチのマジでヤベェ奴だろ」
「ヴィラ!退くぞ!」
二人はその男から背を向け、走り出した。その瞬間、脇道から出てきた石像にミッシェルが捕まる。
「ぐっ!邪魔をするな!」
「ミッシェル!うおっ!!」
それに気を取られたヴィラは男の恰好の的となってしまう。
彼は左半身から男のタックルをもろに受けてしまった。
「クソ!痛ってぇ!」
懐から落ちた紫色の薔薇の花弁がハラリと散った。
それに追い打ちをかけるように男はヴィラの足を掴んで引っ張ろうとする。
「クソッタレが!調子のんな!」
ヴィラは男に銃撃を遠慮なく浴びせた。それに怯んだ男は足を引っ張る力を弱める。
隙を見たヴィラは反対の足で男を力いっぱい蹴った。そしてなんとか態勢を整え治す。
そして落ちた薔薇とギャリーを回収する。
ミッシェルもなんとか投げ捨てるような形で石像を倒すと、再び銃を構えてヴィラの背中を援護する。
「行くぞ!」
ヴィラはギャリーを肩で担ぐと一目散に走った。ミッシェルもそれに続く。
二人は角を角を曲がって走り続ける。一体どこへ向かえば安全なのか。
その時、ヴィラが立ち止まった。
「ヴィラ!」
少し何かを考えるように動きを止めたヴィラだが、次の瞬間
「ミッシェル!こっちだ!」
何かを確信したように走り出した。
ミッシェルもそれに続く。彼そしてその先には一つのドアがあった。
この先は安全なのか?それを考える余地すらもなく、ミッシェルはドアを開ける。
勢いよくその部屋に飛び込んで、ドアを閉めると二人は膝をついた。
「くっ・・・・・はぁ!!あー!しんどいぜ!」
「はぁ・・はぁ・・ヴィラ、無事か?」
「お前の方はどうなんだよ。」
お互いニヤリと笑い、互いの無事を示す。
「ただ、薔薇が少し散ったな」
ヴィラはギャリーをおろしてあぐらをかく。
「なら、その花瓶に花を活けてみろ」
「これか・・?」
ヴィラはそれに自身の薔薇を差すと、たちまちそれは逆再生のように復活を果たした。
「おお、すげぇ。はは!チカラも漲るな!」
『ウオオオオオ!!!』
その時、あの男の声が遠くから轟いてくるのがはっきり分かった。
「・・・ここも危険か。」
「いや、ここなら大丈夫だ。」
ヴィラは自信ありげにいう。
「何故そう言い切れる?」
「あー、なんでだっけな。無我夢中で走ってたらなんでかこの部屋のことが思い浮かんでな。」
「どういうことなんだ?」
「俺にもわからん」
そういうとヴィラは床に大の字で横たわった。
いろいろ疑問が残るミッシェルだが、今はそれを忘れて、ヴィラに倣って横たわった。
この話において、「失敗作」の見た目はバイオハザードの「リサ・トレヴァー」をイメージしてます。