Gerthena   作:mashi

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悪夢は再び

「....はぁ、はぁ、...ヴィラ!!どこなの!?」

森を一人掛けるギャリーは必死にその名を呼ぶ。

 

確か二人でこの世界に入ったことまでは覚えている。

だが、気が付けばここにいたのは自分ひとりだけだった。

きっとどこかではぐれたのだろうが...単独行動は危険だ。

 

この暗い森は、獣や虫などといった存在こそはないが、何か得体のしれない気配がずっと彼の第六感を刺激していた。

 

「ま...まったく!また変な化け物が出てきたら、アタシどうすればいいってのよ!アタシはアンタみたいな野蛮人じゃないのよ!」

不安そうに吐き出すギャリー。自身のその言葉にふと気づかされる。

 

彼はおもむろに自身の懐を探る。そして出てくるのは、人をも殺せる鉄製の武器。

「く...くるなら来なさいってのよ!」

ギャリーはヴィラに習った通りに銃を両手で握る。

そして銃身を下に向けたまま、また一歩踏み出した。

 

その時、彼の視界の隅を何かが駆けていった。

敵かとも思うが、どうもそれは違うと彼の直感が語る。

 

どちらかといえば、幼い子供のような気配だった。

「ま...まさか...。」

彼のその不安が的中すれば、悪夢は再びになる。

いても立っても居られない彼は、そこへ向かって走り出した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

誰かが住んでいる。というよりは物置として使われていた。と言われたほうがしっくりくるその古い小屋の扉をヴィラはゆっくりと開ける。

それはギシギシと音を立てて、まるで動くのが億劫だと言わんばかりの建付けの悪さだった。

 

開けた拍子に少々の埃が彼を纏うが、彼は意にも介さない。

そして一歩、一歩と歩を進める。

闇夜で見通しが悪い小屋であるが、奥の小さい小窓から差し込む月の光が、ほんのりとそこで膝を抱える少女を照らした。

 

月の光に反射するその金髪は、周りが暗がりなだけに、より輝いて見えた。

そんな彼女にヴィラは静かに近づいた。

 

「...よぉ、メアリー。」

その言葉にはっとしたメアリーは、すぐさま立ち上がってヴィラを睨みつける。

「.....」

少女と男にしばしの沈黙が訪れたあと、先に口を開いたのはメアリーだった。

 

「何...こんなところまで追ってきて...。」

お前たちのせいで、何もかもめちゃくちゃだという恨みを彼にぶつける少女だが、ヴィラは視線をずらしてため息をつく。

 

「メアリー...。」

そうとだけつぶやいて言葉を切らす。

「何..なんなの!?あなたは..」

「いつかお前を、外の世界へ連れ出してやる。」

その言葉にメアリーは目を丸くする。

 

「そう無責任な言葉を吐いたガキだよ。」

メアリーは記憶をたどる。そして一つだけ合点のいく記憶と結びつける。

 

「.....ベネット?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ワイズがすべてを吐き出したあと、彼らに待っていたのは沈黙だった。

ワイズは再び筆を執ると、引き続いて失敗作の修復にあたった。

 

とうのミッシェルは、ワイズの内なる真実を知り、考え込んでいた。

自分の知らなかった曾祖父の真実。そして自分が彼に抱いていたものは、大きな誤解だったのではと気づかされ始める。

作家である彼でも、この複雑な心境を形容するのは難しく感じた。

 

その時、作業台に横たわっていた失敗作はむくりと体を起こす。

それに反応したミッシェルは、椅子から飛び降り、銃を取り出し臨戦態勢をとるが。

 

「ンな品のねぇモン出すんじゃねぇ。もうお前らを襲うことはない。」

その言葉を信じるべきか一瞬迷ったが、彼は銃を下した。

ワイズの言葉通り、失敗作は体を起こしたあと、ミッシェルに一切の関心を寄せずその部屋を後にした。

 

「...」

ミッシェルはただその様子をぼんやり見ることしかできなかった。

「あいつはな。あの青年を守っていただけだ。」

そうワイズはつぶやく。

 

「どういう意味だ?...!!」

と言葉を出した彼だが、すぐに意味を理解する。

「...だから、ヤツがバラを持っていた?」

「そういうことだ」

「なぜあんたが助けなかった?」

「俺がこちら側の存在だからだ。あの薔薇は、生きた存在が活けなければ、回復はしない。」

 

ミッシェルは今までの作品たちの行動を、ふと振り返る。

「まさか、奴らはギャリーを守るために動いていた?」

「かもしれねぇな。」

「かもしれないって。」

ワイズが恍けていることはすぐに分かった。

 

ギャリーに群がっていたあの女たちも、ギャリーを回収してからより活発化した作品たちも、そう考えれば幾分腑に落ちた。

「いや、でもそれはあり得ない。だってあいつらは、俺や、イヴ、ギャリー達にも襲ってきたはずだ。」

ミッシェルは自ら導き出した解を自ら否定する。

 

「お前...俺が前になんて言ったか覚えてるか?」

ワイズが前に言ったこと、関連する言葉をたどる。

 

『....攫う?馬鹿いうな。なんで俺が自分の世界に見ず知らずの馬鹿どもを連れてくると思うんだ。』

 

その言葉から、彼は一つの仮説を思いつく。

「まさか、メアリーによって引き込まれた人たちを追い出すため?」

「あいつらにとっても、他人が土足で上がり込むことは嬉しくないってことだ。モチロン俺もな。」

 

そのままワイズは続ける。

「ましてやそのまま死なれちゃ余計に厄介だ。」

「だが、奴ら何かと乱暴だった。帰る方法もわからないのに、無理に追い出そうだなんて。」

「そりゃあ、知能が発達してるわけじゃないからな。お世辞にも利口とはいえん。」

「てことは、ギャリーを匿ったのはアンタの指示で?」

「まぁな。」

 

ワイズは道具の手入れをする。

「ここで死んだらどうなるんだ?」

ミッシェルは一つの疑問をぶつける。それはただの興味本位でもあった。

「試してみるか?」

「...やめとく。」

 

 

 

 

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