魔王と救世主で世界最強   作:たかきやや

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転移先はアニメ版を参考にしました。


お外と初チェンジ

 

 

 

 魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

 

 やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは……

 

 

 

 

 

 空中だった

 

 

「なんでやねん」

 

 

 魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたハジメは、あり得ない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃ驚いている。

 

 

「いや、ツッコミより着地着地!」

 

 そう言いながらショウとハジメと香織は空力で、ユエは魔法で、アシストはショウにお姫様抱っこされて着地した。

 

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 

 【ライセン大峡谷】と。

 

 

 ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

 

 たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。

 

 

「……戻って来たんだな……」

 

「うん」

 

「……んっ」

 

「だな!」

 

「ですね」

 

 みんなは、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、そして円陣を組むように、思いっきり抱きしめ合った。

 

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

「オーー!!」

 

「んっーー!!」

 

「YEEEEES!!」

 

「いぇーい!!」

 

 ショウ達はしばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中、地面の出っ張りに躓つまずき転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、二人してケラケラ、クスクスと笑い合う。

 

 

 ようやく全員の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。

 

 

「はぁ~、全く無粋なヤツらだな。……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

 ドンナー・シュラークを抜きながらハジメが首を傾げる。座学に励んでいたハジメには、ここがライセン大峡谷であり魔法が使えない場所であると理解していた。

 

 

「……でも力づくでいく」

 

 ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

 

つまり、ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。

 

 

「力づくって……効率は?」

 

「……十倍くらい」

 

 

 どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。

 

 

「あ~、じゃあ俺がやるからユエは身を守る程度にしとけ」

 

「うっ……でも」

 

「いいからいいから、適材適所。ここは魔法使いにとっちゃ鬼門だろ? 任せてくれ」

 

「ん……わかった」

 

 

 ユエが渋々といった感じで引き下がる。せっかく地上に出たのに、最初の戦いで戦力外とは納得し難いのだろう。少し矜持が傷ついたようだ。唇を尖らせて拗ねている。

 

 

――ドパンッ!ドパンッ!ザジュ!ザジュ!

 

 ハジメとユエが話している間にショウ、アシスト、香織が片手間で片付けた。

 

 

 魔物達は撃ち抜かれたり、焼き切られたりと無惨に倒れていった。

 

 

 ドンナー・シュラークを太もものホルスターにしまった香織は、首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 

 

 その傍に、トコトコとユエが寄って来た。

 

 

「……どうしたの?」

 

「いや、あまりにあっけなかったから……ライセン大峡谷の魔物って相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かな?と思って」

 

「確かに弱いな。アシストここが何処だか解説できるか?」

 

「まごう事なき、【ライセン大峡谷】です」

 

「……みんなが化物」

 

「ひでぇ言い様だな。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいよな。ハジメ」

 

「ああ、そうだな」

 

 そう言って肩を竦めたハジメは、もう興味がないという様に魔物の死体から目を逸らした。

 

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

 

「……確かに」

 

「わかったよ」

 

「賛成だ」

 

「左に同じく」

 

 ハジメの提案に、皆も頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。ハジメ達の〝空力〟やユエの風系魔法を使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

 

 ハジメは、【宝物庫】からバイクを取り出す。別パーツでサイドカーが付けられるが特に使う機会はないので倉庫入りもとい【宝物庫】 入りだ。

 

 

 ショウは異空間収納からカードの様な物を取り出し、それを空へ投げる。

 

 するとカードは大きくなり、ショウを通って、そのまま下に降りて通り過ぎる。

 

 

 するとショウの姿は一新、白い執事服から黒いスーツに蒼いラインが入った大きな機械の翼が付いたバックパックと右腕に継ぎ目の入った両刃の剣――所要、蛇腹剣の〝アーティファクト〟を装備し、左腕には魔法吸収と空間魔法が付与された八角形のシールドを装備。バックパックの翼から桃色の羽のエフェクトが舞い上がった。

 

 ―アシスト、解説よろ!―

 

 ―はい!―

 

 ―プレート型アーティファクト フォームチェンジャー ―

 

 ―このアーティファクトは、ショウとハジメの合同制作アーティファクトで、このように装備の瞬間変更──フォームチェンジが出来るといるロマン六割、実用性三割の変更アイテム的なアーティファクトです。そして、このフォームチェンジシリーズは全12種で豊潤な戦闘スタイルを生みます―

 

 

 ―そしてこれがショウの12のフォームの内の一つ、『デスティバーンフォーム』です!―

 

 

「祝え!邪神を駆逐し、ハジメ等を故郷へ導く我らがメシア!その名もアオイ ショウ ディスティバーンフォーム!運命灼熱の救世主がこの地に降り立った瞬間です!」

 

 と、某預言者の如く祝ってもらった所で

 

 

「よし!じゃあ移動するよ。アシスト」

 

「はい!」

 

 そうしてショウとアシストは飛んで、ハジメ達はバイクで移動を始めた。

 

 

 ハジメが運転するバイクに前にユエ、後ろに香織を乗せて走行する。こころなしかユエはハジメに寄りかかり鼻をひくひくさせたり、 香織はハジメの身体をさわさわして固く抱き締めて首筋に顔を埋めてるがハジメはここ最近上がったスルースキルでスルーした。

 

 

――グルアアァア!!

 

 

「あ!魔物の声」

 

「さっきのザコよりかはマシな感じだな」

 

 後ろから気配を感じたハジメ達はその大きな魔物をすぐに見つける。

 

 

「おーおーデカいデカい」

 

「ハジメ、何かいるか?」

 

「なに?アレ?」

 

 それはなんか色々と危うい格好のウサミミ少女だった...どうやら後ろの大きな魔物から走って逃げてるらしい。

 

 

「やっどみづけまじだ~!!だずげでくだざ~い!!」

 

 全員はお互いに顔を合わせて 知り合いか確認する。目と目で会話を終わらせた皆の結論は見なかったことにしてスピ ードをあげてその横を通り過ぎる。だった...

 

 

 何故なら関わったら面倒なタイプ!!っという奇跡の一致により少女をスルーしたのだ。 その様子に魔物もおろかウサミミ少女も呆然と固まった。

 

 

「えーーーーーーーー!?」

 

 ウサミミ少女の運命やいかに。

 

 

清水どうする?

  • 殺れ
  • 助けて

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