道すがらショウはハジメと香織に何故敵を殺すのに手を出したのか問う
「俺とアシストだけでもよかったのに、何で参加したんだ?【纏雷】も使わずに?」
「まぁ一言で言えば実験だな…これからは街中で戦う場面も出てくるかもしれない。」
「敵をレールガンで殺すのはいいけど背後の民家や住人までふっ飛ばすわけにはいかないでしょ?」
2人は「それに」と続け、
「「人間を殺しても何も感じなかった『が/けど』無差別の殺人鬼になるつもりはない(からね)。」」
ハジメ達の後半の台詞には心配そうにするが先程の会話を聞いてたユエは何も言わずに戻ろうとする。
「あ…あのっ!…皆さんのこともっと教えてくれませんか?…旅の目的とか今までしてきたこととか、ハジメさんや香織さんとユエさん達ののこと…もっと知りたいです!」
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「う…うぅ…つらい…つらすぎます…皆さんに比べたら私なんて恵まれて…自分が情けないですぅ!」
すべてを話し終えた結果
シアは号泣してた。ハジメはその勢いに軽くドン引きしてるとシアが覚悟を決めた顔をしてこちらを見る。
「私決めました!!このシア・ハウリア。皆さんの旅のお供をさせていただきます!!…私たちはたった六人の同類…いや仲間!共に苦難を乗り越えましょう!」
現在進行形で守られてるシアがそんなことを言っててハジメ達は呆れた顔を浮かべる。
「なんて図太いウサギ…というかお前、安全が確保できたら一族から離れるつもりだからだろ?」
ハジメの言葉にシアは図星をつかれた顔を浮かべるが変にごまかさずに開き直った顔でハジメの言葉に頷く。
「そのつもりですが…私は本当に皆さんを…」
変に期待を待たせないように香織はその続きを遮る。
「理由はなんだっていいのよ。だが変な期待はしないで。私達の目標は七大迷宮の攻略よ。貴方じゃ瞬殺されて終わりね…同行を許すつもりは毛頭ないわよ」
香織の言葉にシアはシュンとし、耳も下がっていた
「…………」
だが、ショウは目の前の少女に何かしらの力を感じていた………が、確証は無いので確認した。
―アシスト、シアはんってダイヘドアから逃げられるくらいの早さや白崎はんのアイアンクローに耐えられてたけど、兎人族はそこまでスペックが高いの?―
―いえ、そんなはずは無いです。もしかしたらシアは、魔力操作の派生技能か何かで身体強化の魔法を使えるのかもしれません。―
―化物レベルの攻撃に耐えられて、早くて、未来が見える。鍛えれば間違い強くなるな。―
確証を得たショウはそう考えながらニヤついた。
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それから数時間して、遂に一行はハルツィナ樹海と平原の境界に到着した。ハジメはシュタイフを仕舞い、ショウは執事姿に戻った
樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい
「では行き先は森の深部…大樹のもとでよろしいですな?」
森の入口近くでカムは確認の為にハジメに聞く。ハジメは前を見据えて頷く
「あぁ、おそらくはそこが迷宮の入口だ」
「そうだね」
「だな」
「…樹海が迷宮じゃないの…?」
「あぁ、俺達もそう思っていたんだがオルクス大迷宮にいたような魔物が樹海にいるとしたら…亜人たちが住める場所にはならない…族長から聞いたのだが最深部にある巨大な樹、大樹ウーア・アルト。そこは聖地として近づく者は滅多にいないらしい。迷宮があるとしたら多分そこだ。」
「お話中のところ申し訳ない。これより先はできる限り気配を消してもらえますかな。我々はお尋ね者の身。フェアベルゲンの者に見つかると厄介です。」
カムの申し訳ない言葉にハジメ達は頷き迷宮で訓練して取得した【気配遮断】を発動する。かなりのレベルの【気配遮断】にカム達は驚きの声をあげる。
「我々、策敵や隠密行動はかなりと得意と自負していたのですが…ハジメ殿…できれば我々くらいにしてもらえますかな?そのレベルだとこちらが見失いかねません。」
ハジメ達の実力に再び感心するカム
「いやはや兎人族の立つ瀬がありませんな」
「いや…もうその必要はないみたいだぞ」
ハジメ達の視線が鋭くなってることに気づいた兎人族達はすぐにハジメの台詞の意味に気づいた。
「そんな…!まさか感づかれていたのか…!?」
「ううん。多分、運悪く見つかっちゃったみたいだよ。」
「これは少々面倒だな」
もうスピードでこちらにくる気配の正体に兎人族達はざわめく。
「そんな…よりによってなんで…」
武器を持ってた亜人族の男達が姿を見せる。隊のリーダーであろう亜人族がこちらを鋭く睨み大声を上げる。
「動くな!なぜここに人間がいる!!」
冷や汗をかきながらカムは周りの兎人族を庇うように前に出る。
「あ…あの、私たちは…」
言い訳を口にする前に亜人族のリーダーはめざとくシアの存在に気づく。
「白髪の兎人族の女…貴様ら、報告にあったハウリア族か!…忌み子を匿い続けた亜人族の面汚し共め!今度は人間を招き入れるとは…生きては帰さんぞ!!全員この場で処刑して…」
――ドパンッ!!
亜人族のリーダーのすぐ横を何かが通りすぎ、その後に大きな音を立てて後ろの木が抉れる。亜人族達はその木を確認し、音の発生源と見慣れないモノを持つ白髪の少年を見る。少年、ハジメは冷めた目で亜人族達を睨み付ける。
「こいつらを殺るというのなら容赦はしない。ただの一人でも生き残れると思うなよ。」
ハジメの宣言に亜人族のリーダーは絶句した。それは先ほどの宣言にではなくその圧倒的なまでの力と瞳に…
―…今、何をした…?いや…それよりも…この力…コイツ、本当に人間か…!?―
思考が定まらないうちにさらにハジメは選択を迫る。
「敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか、…好きな方を選べ。こいつらの命は俺が保証している。」
ドンナー&シュラークを亜人族達に向けるとリーダーは舌打ち混じりにハジメ達を睨み殺気を納める。
「貴様ら…何が目的だ?」
「…目的は七大迷宮の攻略。〝大樹ウーア・アルト〟にその入口があるかもしれない。」
「…何を言ってる?…この樹海そのものが七大迷宮の一つであるはずだ。」
「いや、それはおかしい。」
「なんだと?」
「大迷宮ってのは〝解放者〟たちが残した〝試練〟なんだよ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ?それじゃあ試練になっていない」
〝解放者〟?〝試練〟?一体なんのことかわからんが…
「…つまり国や同胞に危害を加えるつもりはないのだな」
「ああ」
亜人族のリーダー…虎族の男は目をつむりすぐに決断した。
「であれば大樹へ向かうのは構わないと私は判断する。」
「隊長!そのような異例は…「だがこれは部下の命を考えた私の独断。本国からの指示を仰ぎたい」 」
部下の言葉を被せるように言う虎族の男は続けて言う。
「お前の話も長老方なら知っておられるかもしれん。伝令が行くまで私とこの場で待機しろ。」
「…ちゃんと言った通りに伝えろよ?」
エルフ族の男が数人こちらにきた。若いエルフ族の中心に落ち着いた雰囲気の男がハジメ達の前に出る。
「私はアルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。…お前さんの話は聞かせてもらった。…一つ、話の前に聞いておきたい。…〝解放者〟という言葉。どこで知った?」
ハジメは【宝物庫】から指輪を取り出す。
「手を出してくれ…オスカー・オルクスの指輪だ。」
アルフレリックは指輪を持ち中の紋章を見つけた。
「…なるほど、この紋章はまさしく…信じがたいがオスカー・オルクスの隠れ家に辿り着いているようだ。」
指輪をハジメに返すとアルフレリックはもときた村の道を向き話し出す
「よかろう。フェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。」
「ちょっと待て」
ハジメは勝手に決めてくる男に待ったをかける。
「俺たちは大樹に用があるだけでフェアベルゲンに興味はない。問題ないならこのまま向かわせてもらう。」
「いや、それは無理だ」
「なんだと?」
アルフレリックはハジメ達…特に兎人族達を見てため息を吐きハジメの疑問に答える。
「大樹の周囲は特に霧が濃くて亜人族でも方角を見失う。一定周期で訪れる霧が弱まった時でなければならん。…亜人族なら誰でも知っているはずだが…」
ショウ、アシスト、ハジメ、香織、ユエは後ろの兎人族達…ハウリア族を見る。全員が青白い顔で冷や汗を流し出した。
「「おい、どういうことだ?」ウサギさん達」
「あっ…」
ハジメとショウの威圧に思わず後ろに下がる兎人族達。カムは言い難そうに頬を掻きながら視線を反らす。
「え…いや…なんと言いますか…色々ありましたし。つい忘れていたというか…その…ええいお前たち!なぜ途中で教えてくれなかったのだ!」
「な…父様、逆ギレですか!?私は父様が自信たっぷりだったからちょうど周期なのかと…」
「そうですよ僕たちもおかしいなとは思っていたけど族長が…」
「お前たちそれでも家族か!?これはそう…連帯責任だ!!」
「父様汚い!」 「あんたそれでも族長か!!」
「そうだ!そうだ!」
ワイワイガヤガヤ
ハウリア族達の互いに互いが悪いなどというそんな責任転換の押し付け合いにハジメのイライラが限界を突破した。
清水どうする?
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殺れ
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助けて