魔王と救世主で世界最強   作:たかきやや

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ハウリアの特訓

     

 

 

 

「「さて、お前等/あなた達 には戦闘訓練を受けてもらおうと思う(わ)」」

 

 【フェアベルゲン】を追い出されたハジメ達が、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、ハジメと香織の第一声がこれだった 拠点といっても、ハジメがさり気なく盗ん……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。その中で切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべていた

 

「え、えっと……ハジメさん、香織さん。戦闘訓練というのは……」

 

 困惑する一族を代表してシアが尋ねる

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

「な、なぜ、そのようなことを……」

 

 ハジメの据わった目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突なハジメ達の宣言に当然の如く疑問を投げかける

 

「あなた達は弱い。悪意に対して逃げる事しか出来ない そんな中【フェアベルゲン】という隠れ家を失った。逃げ場の無いあなた達は魔物や人の格好の餌だし、このままだと間違いなく全滅するし。折角拾った命も無駄になるし。それで良いの?」

 

 香織の言葉に皆、俯く。彼等には、もう故郷すら無くしたのだ……

 

「そんなの……良いわけ…ありません!」

 

 シアが怖がりながらも答える

 

「なら答えは簡単だ。強くなれば良い。約束までの十日間なら手助けくらいしよう」

 

  それを待っていたという表情でハジメはカム達に言い、更に続ける

 

「俺はかつての仲間から“無能”と呼ばれていた」

 

「え?」

 

「“無能”だ“無能”。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱 戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達は俺を“無能”と呼んでいたんだよ。実際、その通りだった」

 

「そんなこと無いよ!蒼くんや雫ちゃんの武器作ったりベヒモスを一人で足止めしてたじゃない」

 

「そう言えば俺も無能呼ばわりされてたっけ?」

 

「いや、あんたは偽装してただろ!ぶっちゃけ勇者より強かったんじゃ無いか?」

 

 

 ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を表にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物を苦もなく一蹴したハジメが“無能”で“最弱”など誰が信じられるというのか

 

 

 

「だが、奈落の底に落ちて俺は強くなる為に行動した。出来るか出来ないか何て頭に無かった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った……気がつけばこの有様さ」

 

「ハジメくん、そこは〝俺達〟でしょ」

 

 淡々と語られる内容に、しかし、あまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったという事だ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ

 

 実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。自分達なら絶望に押しつぶされ、諦観と共に死を受け入れるだろう。長老会議の決定を受け入れたように

 

「俺達も手助けする。それなりにきついけど、確実に強くなるぞ」

 

「私もお手伝いします」

 

 二人の言葉に、カム達は覚悟を決めて頷く

 

「やります!!私達に戦い方を教えてください!!」

 

 

訓練開始の一日目

 

「シアはユエによる魔法訓練がある。なので残りの内半分にして片方は俺と香織が、あとはショウとアシストが担当する まずは武器を支給するから全員取りに来い」

 

 そう言ってハジメは宝物庫から手習いの一貫として錬成した小太刀を渡す

 

 手渡された小太刀を見てカム達が顔を青くしていた

 

「どうした?」

 

「いえ……この鋭さ……こんなので斬られたら痛いに決まってるじゃないですか……」

 

ゴチン!!

 

「それが一族の生死がかかってる時に出てくる台詞か?」

 

 途端にハジメの拳骨がカムの脳天に落ちた

 

「申し訳ない……」

 

「お前らなあ、これはお前らの戦いだ!お前ら自信が強くなる事でしか解決出来ない!お前らは今まで、帝国兵や他の亜人どもに大切な家族が目の前で敵に蹂躙されて悔しくなかったのか」

 

「………悔しいに……決まってるだろ!」

 

 ハウリアの一人が叫ぶ。彼も同じ境遇なのだろう

 

「だったら殺せ。強くなきゃ何も護れない お前達の強みは索敵や隠密行動だ。ならば、敵より早く敵を見つけて殺せ!どんな手段でもかまわない!!敵に容赦はするな!容赦すれば仲間が死ぬ!!死なせたくなくば、敵を殺せ!!!」

 

 ショウは煽動する様にハウリア達に告げる。敵は自分達を搾取するのが普通だと思っている……ならば、此方は敵の首を刈る獣の群と成れば良い

 

 

 

 

 

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訓練開始から五日目

 

 

「………96、97、98、99、100!皆~五分間休憩だよー!」

 

「はい!先生」

 

 ショウの掛け声でハウリア達は休憩に入る。ちなみに、ここ六日間でハウリア達は命のやり取りに抵抗感がなくなったり戦い方や、トラップのアドバイス、メンタルケアに洗濯に料理等を教え、この樹海で生きる術を叩き込んだ。

 

 

 もちろん、これらはショウの素の技術だけでなく、新フォームのお陰である。

 

 

 黒に赤いラインの入った鎧に緑のマントを身につけ、かわいいアホ毛が踊っている。

 

 

 彼こそショウの四つ目のフォーム、シールド・オブ・ガーディアンフォームだ。

 

 

 

 

 ―あとは応用術を教えれば問題無いだろう―

 

 

「さて、ハジメ達は……」

 

 

 そう言いながらハジメ達の方を見ると、ハジメと香織はハートマン式の教導をしていた。罵詈雑言は当たり前、銃声が飛び交い、狂戦士が量産されていく!

 

「あれは、………………………やり過ぎだな」

 

「間違い無くやり過ぎです。」

 

『ウワァ………………………………………』

 

 その有り様にショウとアシストだけでなく、ショウ達が担当しているハウリア達もドン引きしていた………

 

 

 

清水どうする?

  • 殺れ
  • 助けて

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