魔王と救世主で世界最強   作:たかきやや

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アニメばりに縮みます


短縮と再会

 

 

 広大な平原のど真ん中に、北へ向けて真っ直ぐに伸びる街道がある。街道と言っても、何度も踏みしめられることで自然と雑草が禿げて道となっただけのものだ。この世界の馬車にはサスペンションなどというものはないので、きっとこの道を通る馬車の乗員は、目的地に着いた途端、自らの尻を慰めることになるのだろう。

 

 

 そんな、整備されていない道を有り得ない速度で爆走する影がある。黒塗りの車体に四つの車輪か付いた大きな箱の様な物が凸凹の道を苦もせず突き進む。

 

 

 ハジメ御一行だ。かつてライセン大峡谷の谷底で走らせた時とは比べものにならないほどの速度で街道を疾走している。時速八十キロは出ているだろう。魔力を阻害するものがないので、魔力駆動四輪も本来のスペックを十全に発揮している。座席順は、いつもの通り、ハジメの隣に香織、その隣にユエ、後ろにシアとショウとアシストという形だ。

 

 

「このペースなら後一日ってところだ。ノンストップで行くし、休める内に休ませておこう」

 

 ハジメ達は今、とある事情によりギルドの支部長直々の依頼で冒険者のウィル一行の捜索依頼を受け、北の山脈地帯に一番近い町まで後一日ほどの場所まで来ていた。このまま休憩を挟まず一気に進み、おそらく日が沈む頃に到着するだろうから、町で一泊して明朝から捜索を始めるつもりだ。急ぐ理由はもちろん、時間が経てば経つほど、ウィル一行の生存率が下がっていくからだ。しかし、いつになく他人のためなのに積極的なハジメに、ユエが、上目遣いで疑問顔をする。

 

 

 ハジメは、腕の中から可愛らしく首を傾げて自分を見上げるユエに苦笑いを返す。

 

 

「……積極的?」

 

「ああ、生きているに越したことはないからな。その方が、感じる恩はでかい。これから先、国やら教会やらとの面倒事は嫌ってくらい待ってそうだからな。盾は多いほうがいいだろう? いちいちまともに相手なんかしたくないし」

 

「……なるほど」

 

 

 報酬は日本組以外のメンバーのステータスプレートの秘匿や支部長が必要な時に便宜を図ってくれると盛り沢山で、ほんの少しの労力で獲得できるなら、その労力は惜しむべきではないだろう。

 

 

「それに聞いたんだがな、これから行く町は湖畔の町で水源が豊かなんだと。そのせいか町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだそうだ」

 

「……稲作?」

 

「おう、つまり米だ米。俺の故郷、日本の主食だ。こっち来てから一度も食べてないからな。同じものかどうかは分からないが、早く行って食べてみたい」

 

「うん、久しぶりのお米。楽しみだなー」

 

「あー、それは確かに。何か聞いたらはら減ってきたな」

 

「……ん、私も食べたい……町の名前は?」

 

 

 遠い目をして米料理に思いを馳せるハジメ達に、微笑ましそうな眼差しを向けていたユエは、そう言えば町の名前を聞いてなかったとハジメに尋ねる。ハッと我に返ったハジメは、ユエの眼差しに気がついて少し恥ずかしそうにすると、誤魔化すように若干大きめの声で答えた。

 

 

「湖畔の町ウルだ」

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

ハジメが頑張った甲斐もあり、町についたハジメ達はウルの町の一番といわれる高級宿【水妖精の宿】に入った

 

この水妖精の宿は、一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている 内装は、落ち着きがあって、目立ちはしないが細部まで拘りが見て取れる装飾の施された重厚なテーブルやバーカウンターがある また、天井には派手すぎないシャンデリアがあり、落ち着いた空気に花を添えていた。“老舗”そんな言葉が自然と湧き上がる、歴史を感じさせる宿だった

 

 

 

 

「もうっ、何度言えばわかるんですか。〝香織〟さんはまだしも、私を放置してユエさんと二人の世界を作るのは止めて下さいよぉ。ホント凄く虚しいんですよ、あれ。聞いてます? 〝ハジメ〟さん」

 

「聞いてる、聞いてる。見るのが嫌なら別室にしたらいいじゃねぇか」

 

「んまっ! 聞きました?〝香織〟さん、〝ショウ〟さん、アシストさん、ユエさん。〝ハジメ〟さんが冷たいこと言いますぅ」

 

「……〝ハジメ〟……メッ!」

 

「へいへい」

 

「〝ハッくん〟もうちょっと優しくしてあげて?」

 

「前向きに検討する」

 

「〝ハズィメェ〟………」

 

「おい、〝ショウ〟。それやめろ」

 

「まあ、良いじゃないですか。〝ショウ〟の持ちネタなんですから」

 

 

 そんなここ最近の日常ともいえる会話をしている時だった すぐ近くのカーテンで仕切られた席からガタリと音がし、シャアァァァーー と、カーテンを引いて誰かが姿を現した

 

 

「南雲君!白崎さん!蒼君!」

 

「あぁ? ……………………………………………先生?」

 

「え?何でここに先生が!?」

 

「あ………………………………お久です…………………」

 

 彼らの前に現れたのはこの世界に一緒に召喚された社会担当の教師。「畑山愛子」先生だった。

 

 

「……やっぱり皆さんなんですね? 生きて……本当に生きて…」

 

「いえ、人違いです。では」

 

「へ?」

 

ハジメが厄介ごとは勘弁と言わんばかりに誤魔化して立ち去ろうとした。

 

 

「ちょっと待って下さい! 南雲君ですよね? 先生のこと先生と呼びましたよね? なぜ、人違いだなんて」

 

「いや、聞き間違いだ。あれは……そう、方言で〝チッコイ〟て意味だ。うん」

 

「それはそれで、物凄く失礼ですよ! ていうかそんな方言あるわけないでしょう。どうして誤魔化すんですか? それにその格好……何があったんですか? こんなところで何をしているんですか? 何故、直ぐに皆のところへ戻らなかったんですか? 南雲君! 答えなさい! 先生は誤魔化されませんよ!」

 

ハジメは尚も誤魔化そうとしているが、

 

 

「諦めろ、ハジメ。俺がいる時点でアウトや」

 

 と、ハジメに告げる

 

 

「………はぁ~~~、久しぶりだな、先生………」

 

ハジメは苦笑いしながらそう答える。

 

 

「やっぱり、やっぱり南雲君なんですね……生きていたんですね……」

 

「まぁな。色々あったが、何とか生き残ってるよ」

 

「よかった。本当によかったです」

 

 

 

先生は心底ホッとしたように息を吐いた。すると、愛子先生はこちらに振り返り、

 

「蒼君と………髪と瞳の色が違いますが白崎さんですね?」

 

「はい。お久しぶりです」

 

「お久です。先生」

 

と挨拶をしたその時

 

「先生!蒼から離れて!」

 

先生が出てきた個室からクラスメイトの宮崎奈々が飛び出してキッと目付きを鋭くすると、俺を睨み付けながら先生を護るような立ち位置になると

 

 

「先生!彼は殺人者なんですよ!〝なんの罪も無い檜山〟を殺したんですよ!危険ですから下がって!」

 

その言葉を聞いて俺は遠い目になった。

 

 

―チッ、糞之河、どんな説明したんだよ。まあ、殺した事には間違い無いけど―

 

と、内心舌打ちしながらクラスメイトの方を見る。ドイツもこいつも糞之河の言葉を鵜呑みしてるらしい。仕方無い

 

 

「そうか。なら邪魔したな」

 

そう言って立ち去ろうとすると

 

「待て、ショウ」

 

 ハジメから制止の声がかかった。ハジメはクラスの奴らの方を向いて

 

「話しを聞いた限り、〝罪の無い檜山〟と聞こえたがそれは本当だと思うのか?」

 

ハジメの問いかけに個室にいた『愛ちゃん護衛隊』の一人、相川昇が出てきて

 

 

「当たり前だろ!そうだって「天之河が言っていた。か?」!?」

 

言おうとしたことを当てられて黙る昇。だがハジメは続けて放つ。

 

 

「んなわけねえだろ俺を落としたのは檜山だ。落とされた俺が言うんだ。間違い無い」

 

すると『愛ちゃん護衛隊』の菅原妙子が

 

 

「で、でも「それが殺す理由にならないって言いたいの?あるんだよ」!?」

 

香織の言葉に絶句する

 

 

「私たちは戦争に呼ばれたよ。つまり、人殺しをするために召還されのよ。それに檜山くんはハッくんを殺そうとした。、だから殺したんでしょ?ショウくん」

 

「ああ、ハジメを殺した檜山が許せなかった。だからそうした」

 

「そう言うことだから。じゃ、私達はこれで。行こう、ハッくん。みんな。」

 

「ああ」

 

「……ん」

 

「ですぅ」

 

「「御意」」

 

 そう言い残して俺達はその場を後にしようとした

 

清水どうする?

  • 殺れ
  • 助けて

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