「ショウ、今日は何処に行きますか?」
「お前と一緒なら何処でも行くぞ?」
とやり取りをしながら、俺達は町を歩く。取りあえず、何か食べ歩くのも悪くないだろう。
「では、アソコで鳥串を買って歩きませんか?」
アシストの提案に賛成し、鳥串を六本ほど買って二人で訳ながら食べ歩く。中々旨かった。
「では、次はアソコに行きませんか?」
と、アシストは古本屋を指差す。そう言えば、この世界の本をあまり読んだこと無いような気がする。そう考えながら俺達は古本屋へ立ち寄る。
「そう言えば『言語理解』って本も分かるんだな。」
「そうですね………所でこの本のこのページに面白い事が書いてあるのですが」
と、アシストが読んでいる歴史の本を覗き込むと、ソコには〝吸血鬼〟の絶滅について書かれていた。
「『神の信託によって滅ぼされた』…………………アシスト、ここ詳しく調べといてくれないか?ネットワークも使って」
「かしこまりました。さて、次は……」
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ー服屋にてー
「コッチとコッチの服、どっちが似合いますか?」
「コッチもアリだぞ?」
「むむっそう来ましたか………」
「つーか、アシストなら何着ても綺麗か可愛いの二択だろ?」
「なら今回はセクシー系が良いですかね?」
「止めとけ。血溜まり沼が出来る」
ーアクセサリー店にてー
「あ、この指輪。オルクスで取れたグランツ鉱石の指輪ですって!」
「懐かしいな………」
「そうですね………」
「俺達は強くなった。守ろう、今度こそ」
「はい。私達、二人で………」
ー水族館にてー
「何か事件が起きてるね。ハジメかな?」
「どうでしょうか………有り得そうですけど………他の所を回りましょう!」
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「……まるで雛に餌をやる親鳥の気分だ」
「でも、幸せな事には変わりませんよね」
俺達は店のテラスでパスタを食べている。上の台詞から察しの通り、現在「はい、あーん」しています。え?リア充爆発しろ?フッ、俺もそんな事を考えた時期がありました………
と、楽しんでたのに、それに水を刺す様に遠くから爆破音が聴こえた。
「他のリア充さんが爆発しましたか?」
「………なら良いんだけどな………良くないけど」
『おーい、蒼くん。聴こえるかな?かな?』
と、白崎はんから念話が入った。
「『白崎はん、今のは一体………』」
『実はこんな事があってね………』
白崎はんの説明を要約するとこうだ。
ハジメ達がデート中に「ミュウ」と言う海人族の幼女を、保護して一通り介抱したら、妙になつかれてしまい、連れて行く事も出来ないので保安署へ半ば強引に預けることにしたがその後、【フリートホーフ】と言う組織が保安署を襲撃して、ミュウを攫った。
更に、そこには白髪の兎人族………シアはんを連れてくるようにと壁に伝言が書かれていたのだ。
つまり、裏の組織はハジメに喧嘩を売った様な物だ。で、それを滅ぼすと
『で。指定された場所に行ってみれば、そこには武装したチンピラがうじゃうじゃいて、ミュウ自身はいなかったんだよ。たぶん、最初からハッくんを殺してシアだけ頂く気だったんだろうね。取り敢えず数人残して、皆殺しにした後、ミュウちゃんがどこか聞いてみたんだけど……知らないらしくて。拷問して他のアジトを聞き出して……それを繰り返している時に私達も合流したところなの。それで蒼くんの主からの命令だよ。「ミュウを探すの手伝え。ついでに裏組織を潰すのも。」だって』
「『御意』」
俺はそう返して、アシストの方を向く。
「話は分かりました。子供を食い物にする汚物の掃除ですね」
「フッ、つくづく良い女だよ。お前は」
そのまま俺とアシストは『融合』し、『全事象把握』で、ミュウはんの居場所と、組織の関連施設全てを掴み、ハジメに『念話』を繋ぐ
『ハジメ、話は聴いたよ。見つけたから情報は直接頭に送るから』
『分かった。ミュウや他の子供を保護次第、一気に潰す』
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―三人称視点―
オークション会場は、一種異様な雰囲気に包まれていた。
会場の客はおよそ百人ほど。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずに、ただ目当ての商品が出てくるたびに番号札を静かに上げるのだ。素性をバラしたくないがために、声を出すことも躊躇われるのだろう。
そんな細心の注意を払っているはずの彼等ですら、その商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。
出てきたのは二メートル四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウだ。衣服は剥ぎ取られ裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。海人族は水中でも呼吸出来るので、本物の海人族であると証明するために入れられているのだろう。一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。小さな手足には酷く痛々しい光景だ。
多くの視線に晒され怯えるミュウを尻目に競りは進んでいく。ものすごい勢いで値段が上がっていくようだ。一度は人目に付いたというのに、彼等は海人族を買って隠し通せると思っているのだろうか。もしかすると、昼間の騒ぎをまだ知らないのかもしれない。
ざわつく会場に、ますます縮こまるミュウは、その手に持っていた黒い布をギュッと握り締めた。それは、ハジメの眼帯だ。ミュウと別れる際、ミュウを宥めることに忙しくてすっかりその存在を忘れていたハジメは、後になって思い出し、現在は予備の眼帯を着けている。
そのハジメの眼帯が、ミュウの小さな拠り所だった。母親と引き離され、辛く長い旅を強いられ、暗く澱んだ牢屋に入れられて、汚水に身を浸し、必死に逃げて、もうダメだと思ったその時、温かいものに包まれた。何だかいい匂いがすると目を覚ますと、目の前には片目に黒い布を付けた白髪の少年がいる。驚いてジッと見つめていると、何故か逸らしてなるものかとでも言うように、相手も見つめ返してきた。ミュウも、何だか意地になって同じように見つめ返していると、鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いに気が逸れる。
その後は聞かれるままに名前を答え、次に綺麗な紅い光が迸ったかと思うと、温かいお湯に入れられ、少年に似た、しかし、少し青みがかった白髪のウサミミお姉さんに体を丸洗いされた、温かなお風呂も優しく洗ってくれる感触もとても気持ちよくて気がつけばシアと名乗るお姉さんを〝お姉ちゃん〟と呼び完全に気を許していた。
膝の上に抱っこされ、食べさせてもらった串焼きの美味しさを、ミュウは、きっと一生忘れないだろう。夢中になってあ~んされるままに食べていると、いつの間にかいなくなっていたハジメと名乗る少年が帰ってきた。少し警戒心が湧き上がったが、可愛らしい服を取り出すと丁寧に着せてくれて、温かい風を吹かせながら何度も髪を梳かれているうちに気持ちよくなってすっかり警戒心も消えてしまった。
だから、保安署というところに預けられてお別れしなければならないと聞かされた時には、とてもとても悲しかった。母親と引き離され、ずっと孤独と恐怖に耐えてきたミュウにとって、遠く離れた場所で出会った優しいお兄ちゃんとお姉ちゃんと離れ、再び一人になることは耐え難かったのだ。
故に、ミュウは全力で抗議した。ハジメの髪を引っ張ってやったし、頬を何度も叩いたし、目に付けた黒い布だって取ってやったのだ。返して欲しくばミュウと一緒にいるがいい! と。しかし、ミュウが一緒にいたかったお兄ちゃんとお姉ちゃんは、結局、ミュウを置いて行ってしまった。
ミュウは、身を縮こまらせながら考えた。やっぱり、痛いことしたから置いていかれたのだろうか? 黒い布を取ったから怒らせてしまったのだろうか? 自分は、お兄ちゃんとお姉ちゃんに嫌われてしまったのだろうか? そう思うと、悲しくて悲しくて、ホロリと涙が出てくる。もう一度会えたら、痛くしたことをゴメンなさいするから、黒い布も返すから、そうしたら今度こそ……どうか一緒にいて欲しい。
「お兄ちゃん……お姉ちゃん……」
ミュウがそう呟いたとき、不意に大きな音と共に水槽に衝撃が走った。「ひぅ!」と怯えたように眉を八の字にして周囲を見渡すミュウ。すると、すぐ近くにタキシードを着て仮面をつけた男が、しきりに何か怒鳴りつけながら水槽を蹴っているようだと気が付く。どうやら更に値段を釣り上げるために泳ぐ姿でも客に見せたかったらしく、一向に動かないミュウに痺れを切らして水槽を蹴り飛ばしているらしい。
しかし、ますます怯えるミュウは、むしろ更に縮こまり動かなくなる。ハジメの眼帯を握り締めたままギュウと体を縮めて、襲い来る衝撃音と水槽の揺れにひたすら耐える。
フリートホーフの構成員の一人で裏オークションの司会をしているこの男は、余りに動かないミュウに、もしや病気なのではと疑われて値段を下げられるのを恐れて、係りの人間に棒を持ってこさせた。それで直接突いて動かそうというのだろう。ざわつく客に焦りを浮かべて思わず悪態をつく。
「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しのごときが!」
そう言って、司会の男が脚立に登り上から棒をミュウ目掛けて突き降ろそうとした。その光景にミュウはギュウと目を瞑り、衝撃に備える。
が、やってくるはずの衝撃の代わりに届いたのは……聞きたかった人の声だった。
「そのセリフ、そっくりそのまま返すぞ? クソ野郎」
次の瞬間、天井より舞い降りた人影が、司会の男の頭を踏みつけると、そのまま脚立ごと猛烈な勢いで床に押しつぶした。ビシャアア! と司会の男から破裂したように血が飛び散る。まさに圧殺という有様だった。
衝撃的な登場をした人影、ハジメは、潰れて一瞬で絶命した男の事など目もくれず義手で水槽を殴りつけた。バリンッ! という破砕音と共に水槽が壊され中の水が流れ出す。
「ひゃう!」
流れの勢いで、ミュウも外へと放り出された。思わず悲鳴を上げるミュウだったが、直後ふわりと温かいものに受け止められて、瞑っていた目を恐る恐る開ける。そこには、会いたいと思っていた人が、声が聞こえた瞬間どうしようもなく期待し思い浮かべた人が……確かにいた。自分を抱きとめてくれていた。ミュウは目をパチクリとし、初めて会った時のようにジッーとハジメを見つめる。
「よぉ、ミュウ。お前、会うたびにびしょ濡れだな?」
冗談めかしてそんな事を言うハジメに、ミュウは、やはりジーと見つめたまま、ポツリと囁くように尋ねる。
「……お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんかどうかは別として、お前に髪を引っ張られ、頬を引っ掻かれた挙句、眼帯を取られたハジメさんなら、確かに俺だ」
ハジメが苦笑いしながらそう返すと、ミュウはまん丸の瞳をジワッと潤ませる。そして……
「お兄ちゃん!!」
ハジメの首元にギュッウ~と抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。ハジメは困った表情でミュウの背中をポンポンと叩く。そして、手早く毛布でくるんでやった。
と、再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達がハジメとミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。
「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」
二十人近くの屈強そうな男に囲まれて、ミュウは、首元から顔を離し不安そうにハジメを見上げた。ハジメは、ミュウの耳元に顔を近づけると、煩くなるから耳を塞いで、目を閉じていろと囁き、小さなぷくぷくしたミュウの手を取って自分の耳に当てさせる。ミュウは不思議そうにしながらも、焦燥感も不安感もまるで感じさせない余裕の態度をとるハジメに安心したように頷くと、素直に両手で耳を塞いで目を瞑り、ハジメの胸元にギュッと顔を埋めた。
完全に無視された形の黒服は額に青筋を浮かべて、商品に傷をつけるな! ガキは殺せ! と大声で命じた。その瞬間、
ドパンッ!!
そんな乾いた破裂音と共に、リーダー格と思われる黒服の頭部が爆ぜた。誰もが「えっ?」と事態を理解できないように目を丸くして後頭部から脳髄を撒き散らして崩れ落ちる黒服を見つめる。その隙に、ハジメは更に発砲。誰もが何をされているのかわからず硬直している間に、連続した発砲音が響き渡り、彼等が正気を取り戻す頃には十二体の頭部を爆ぜさせた死体が出来上がった。
その時になってようやく、目の前の少年を尋常ならざる相手だと悟ったのか、黒服たちは後退り、客達は悲鳴を上げて我先にと出口に殺到し始めた。
「お、お前、何者なんだ! 何が、何で……こんなっ!」
混乱し、恐怖に戦きながらも、必死に虚勢を張って声を荒げる黒服の一人。奥から更に十人ほどやってきたがホールの惨状をみて尻込みしている。
そんな彼等をハジメは鼻で笑う。
「何で? 見りゃわかるだろ? 奪われたもんを奪い返しに来ただけだ。あとは……唯の見せしめだな。俺の連れに手を出すとこうなるっていう。だから、終わりは派手にいかせてもらうぞ?」
ハジメはそう言うと、『空力』を使ってホールの天井まで上がって行き、いつの間にか空いていた穴に飛び込んでそのまま建物の外まで空いた穴を通って地上へと出た。
『ユエ。ミュウは無事確保した。そっちはどうだ?』
『……ん、避難完了。後は、客がワラワラ出てくるところ』
『そうか、じゃあフィナーレは派手に行こう』
『んっ!』
ハジメは、〝空力〟で更に上空に駆け上がりながら、ミュウに話しかけた。律儀にハジメの言いつけを守り耳を塞いでハジメの胸元に顔を埋めていたミュウは、ハジメの「もういいぞ、ミュウ」という言葉に目をパチクリさせながら周囲を見渡し……「ふわっ!?」という驚きの声を上げた。
それはそうだろう。目を開けてみれば、周囲は町を一望できるほどの上空なのである。地平の彼方には、まさに沈もうとしている夕日が真っ赤に燃え上がりながら空を赤く染め上げており、地上には人工の光が点々と輝きだし、美しいイルミネーションを作り上げていた。その初めて見る雄大な光景にミュウは瞳を輝かせてワーキャー言いながらハジメの胸元を掴んではしゃいでいる。
「お兄ちゃん凄いの! お空飛んでるの!」
「飛んでるんじゃなくて跳んでるだけなんだが……まぁいいか。それより、ミュウ、今から凄い物を見せてやる」
「凄い物?」
「ああ、行くぞ?」
「みゅ!」
ハジメはユエと『念話』でタイミングを合わせて放つ
「『紅雷龍』」
「…『雷龍』」
すると、黄金の龍頭4つと紅の龍頭5つが、まるで九頭竜の様な姿で現れる。九頭竜は雷鳴を轟かせながら【フリートホーフ】各拠点を同時に
「………お兄ちゃん凄すぎるの」
この時ミュウは若くして呆れと言う物を覚えた。
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―ショウ視点―
「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、行方不明者百十九名……で? 何か言い訳はあるかい?」
「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔もない」
「後始末お願いします」
「はぁ~~~~~~~~~」
冒険者ギルドの応接室で、ハジメと白崎はんがイルワ支部長に報告していた。
そのハジメの膝にはミュウはんが座っている。
「まさかと思うけど……メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話……関係ないよね?」
「……ミュウ、これも美味いぞ? 食ってみろ」
「あ~ん」
―アレもお前らだったんかい………―
と、俺は遠い目で明後日の方向を見つめる。
「それで、そのミュウ君についてだけど……」
そうしている間に話は進み、イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスのように食べているミュウに視線を向ける。ミュウは、その視線にビクッとなると、またハジメ達と引き離されるのではないかと不安そうにハジメやユエ、シアを見上げた。ティオに視線がいかないのは……子供が有害なものを見ないようにするのは年長者の役目ということだ。
「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」
誘拐された海人族の子を、公的機関に預けなくていいのかと首を傾げるハジメに、イルワが説明するところによると、ハジメの〝金〟と今回の暴れっぷりの原因がミュウの保護だったという点から、任せてもいいということになったらしい。
「ハジメさん……私、絶対、この子を守ってみせます。だから、一緒に……お願いします」
シアが、ハジメに頭を下げる。どうしても、ミュウが家に帰るまで一緒にいたいようだ。ユエとティオは、ハジメの判断に任せるようで沈黙したままハジメを見つめている。
「お兄ちゃん……一緒……め?」
自分の膝の上から上目遣いで「め?」とか反則である。というより、ミュウを取り返すと決めた時点で、本人が望むなら連れて行ってもいいかと考えていたので、結論は既に出ている。
「まぁ、最初からそうするつもりで助けたからな……ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にしねぇよ」
「ハジメさん!」
「お兄ちゃん!」
満面の笑みで喜びを表にするシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、そこでショウが「俺が預かるから行ってこい!」と、名乗り出てくれたのでミュウの同行を許す。
「ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないか? 普通にハジメでいい」
ハジメがそう言うと、ミュウは少し考えて、
「……じゃあパパ!」
「………………な、何だって? 悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」
「パパ!」
「……そ、それはあれか? 海人族の言葉で『お兄ちゃん』とか『ハジメ』という意味か?」
「ううん。パパはパパなの!」
「うん、ちょっと待とうか」
ハジメが目元を手で抑えると、
「何で『パパ』なんだ?」
「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」
「何となくわかったが、何が『だから』なんだとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁してくれ。俺は、まだ17なんだぞ?」
「やっ、パパなの!」
「わかった。もうお兄ちゃんでいい! 贅沢はいわないからパパは止めてくれ!」
「やっーー!! パパはミュウのパパなのー!」
その後、あの手この手でミュウの〝パパ〟を撤回させようと試みるが、ミュウ的にお兄ちゃんよりしっくり来たようで意外なほどの強情さを見せて、結局、撤回には至らなかった。こうなったら、もう、エリセンに送り届けた時に母親に説得してもらうしかないと、奈落を出てから一番ダメージを受けたような表情で引き下がったハジメ。
イルワとの話し合いを終え宿に戻ってからは、誰がミュウに〝ママ〟と呼ばせるかで紛争が勃発し、取り敢えず、ハジメはミュウに悪影響が出そうなティオだけは縛り付けて床に転がしておいた。当然、興奮していたが……
結局、〝ママ〟は本物のママしかダメらしく、香織もユエもシアも一応ティオも〝お姉ちゃん〟で落ち着いた。
ちなみに俺はと言うと
「ミュウはん、もし良かったら俺の事は叔父ちゃんって呼んでくれないか?」
「?………ショウ叔父ちゃん?」
「うん!よろしくね!」
この日、十七歳でパパになった
「ハッくん」
「ん?何だ?」
「子供が欲しい」
「………いつかな」
「うん!」