魔王と救世主で世界最強   作:たかきやや

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リア充が爆発しないかな………変わりに使徒さん。爆ぜて下さい


無能/最強

 

―雫サイド―

 

空から舞い降りたその存在は、天使とも悪魔とも似つかなかった。

 

 

先ず目につくのは背中から生えてる様に見える機械の羽。そこからは燦々と燐く深紅の光が羽毛の形を成している。

 

 

次に目に入るのは赤いコートの上から動きを阻害しない様な漆黒の、鎧の様な物を纏っていた。

 

 

大まかな特徴としては、形は殆ど同じだが、左だけ人間味の無い左右非対称な腕。胸部装甲に静かに輝く紅いクリスタル。腰辺りの両横に装備された折りたたみ式のレール砲。そして、SFチックなエッジとスネまで覆う程の長い靴の様な鎧。

 

 

その顔は逆光で見えないけどそれが持つ瞳は異質的なものだった。

 

 

右目は紅い結晶の義眼で血涙を流し、左目は虹色と金の八色が煌いているけどその瞳に光が無い。

 

 

その異質な存在の正体が気になる中、それは口を開いた。

 

 

「相変わらず苦労しているな。八重樫」

 

ソレは何処かで聞いた事のあるような声で、私の苗字を呼んだ。

 

 

私は何故私を知っているのかとか、相変わらずってどういう事とか色々混乱し始めたが、それは直ぐにどうでも良くなった。

 

 

「雫ちゃん!」

 

天井の穴から一人の少女が私の名を呼びながら現れ、私を抱きしめる。それは誰なのかすぐにわかった。

 

 

髪が白くなって、目が赤くなって、体付きも変わってるけど間違いない。

 

 

「…………香織っ………!」

 

4ヶ月前に想い人を追いかけ奈落へ落ちた私の親友だ

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

―他者視点―

 

 

香織と雫が再会を喜び合う中、天井の穴からユエ、シア、ティオ、そして真っ黒い服を着た少年の順番で降りてくる。

 

 

「皆………! 助けを呼んできたぞ………!」

 

その少年、遠藤がそう言った。

 

 

「「「「「遠藤(君)!?」」」」」

 

クラスメイト達が驚く。すると、ハジメが一通り辺りを伺うと、

 

 

「香織、怪我した奴らや石化してる奴を治療してやれ」

 

香織に向かってそう言う。

 

 

「うん、分かったよ。〝ハッ〟君!」

 

香織の口から出たその名呼び方に雫は驚愕した。

 

 

「へ?ハッくん?えっ?なに?どういうこと?」

 

雫はハジメを見つめる。

 

 

よく見るとその顔立ちには確かに彼の面影が伺えるが、その豹変ぶりは凄まじく、『透き通る世界』で中身まで見える雫でさえ街ですれ違ったら気づかないレベルだ。

 

 

 

「えっ?えっ?南雲君?ホントに?ホントに南雲くんなの?えっ?なに?ホントどういうこと?」

 

「どうした?勇者(笑)パーティーの気苦労に耐えられなくなっておかしくなったか?」

 

「おかしくなって無いわよ!ってか、南雲君変わり過ぎでしょ!?」

 

その事実に混乱していた雫はハジメのボケにツッコミを入れて冷静さを取り戻す。

 

 

「ッ………! っぅ〜~~~~!」

 

血を吐き出す程の大ダメージを受けていた上、限界を超えて動いたのだ。その反動の痛みで声も出ない。

 

 

「あっ、ごめん雫ちゃん! すぐ治すね!」

 

それに気づいた香織はそう言って立ち上がるとドンナーを取り出し、祈る様に額に当てる。

 

 

「『回天』『万天』!」

 

詠唱も魔法陣も使わず、その二言だけで香織は魔法を2つ同時に行使した。

 

 

リボルバーに光が宿り、そのままトリガーを引くとクラスメイトとメルド団長だけを包み、傷を癒していく。

 

 

「これは…………」

 

「傷が…………」

 

「……………う……生きているのか………俺は………」

 

あるものは体の痛みが嘘のように無くなり、四人の石化は解け、瀕死の重傷を負って事切れる寸前だったメルド団長でさえも、ほぼ完璧と言えるほどにまで回復させていた。

 

 

「メルドさん………!」

 

光輝が安堵した表情でその名を呼ぶ。

 

 

 

「……一瞬であれだけの人数を回復させただと………死にかけの騎士まで………!?」

 

 

 

魔人族の女が香織の治癒魔法の力に驚きの声を漏らす。しかも、今彼女が使ったのは、中級範囲回復魔法の『回天』だが、それが並の治癒師達が使う上級回復魔法以上の回復力を見せたのだ、魔人族の驚きもその為だろう。でも、南雲君はそんな事は当然とでも言うようにハジメはそれぞれに指示を飛ばす。

 

 

「ユエ、シア、ティオ。香織と一緒にあいつらの御守りを頼む」

 

「…ん!」

「はい!」

「のじゃ!」

 

ユエは遠藤の首根っこを引っ掴み、シアは血を大量に失って貧血を起こしているメルド団長をヒョイと担ぎ上げる。

 

 

「うおっ?」

 

メルド団長が驚く。まあ、当たり前だ。

 

本来、非力な兎人族が、しかもあんな細腕で大柄で鎧も纏っているメルド団長を『ヒョイ』って擬音が聞こえてきそうなほど簡単に担ぎ上げたのだから。

 

 

そのまま彼女達は光輝達が固まっている場所へ駆けていく。

 

 

「雫ちゃん、私達も」

 

「ちょ、ちょっと………!」

 

 

魔人族の強力な戦力が居る中に南雲君を一人で置いて行く香織を雫は呼び止めようとするが、

 

 

「雫ちゃん。ハッくんなら大丈夫だから」

 

そう言う香織からは、南雲君への絶対の信頼が伺える。

 

 

「……………」

 

そんな香織に逆らうことが出来ず、雫は言われるままに光輝達が居る所まで下がった。すると、

 

 

「香織!」

 

光輝が香織に向かって嬉しそうに声を掛ける。

 

 

「………光輝君」

 

「無事だったんだな、香織! 本当に良かった!」

 

 

回復して貰ったとは言え、あんなに戦っていた雫じゃなく香織の心配をする光輝に、雫は失望感を覚える。

 

 

「………久しぶりだね、皆も」

 

香織は微笑みながらそう返すが、雫にはその微笑みが上辺だけの様に思えた。

 

 

「まさか自ら地獄に踏み入るとは、いい度胸じゃないか」

 

ようやく我を取り戻した魔人族の女は新たに使徒を召喚しながら余裕そうにハジメに言う。

 

 

どうやら使徒の力を過信している様だ。確かに使徒は一騎当千の化け物で、それが1万。更に隠業に特化したキメラも何体か残っており、奇襲も出来る。

 

 

だが、ハジメの口から出た言葉はこの場にいる誰もが思いもしない言葉だった

 

 

「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと消えろ」

 

「……何だって?」

 

それは、魔人族の女が、まだハジメの敵ではないが故の慈悲だった。

 

思わずそう聞き返す魔人族の女。それに対してハジメは、呆れた表情で繰り返した。

 

 

「戦場での判断は迅速にな。死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」

 

 改めて、聞き間違いではないとわかり、魔人族の女はスっと表情を消すと「殺れ」とハジメを指差し魔物に命令を下した。

 

 

 この時、あまりに突然の事態──特に使徒が正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。

 

 

 ハジメの物言いもあったのだろうが、普段の彼女なら、もう少し慎重な判断が出来たはずだった。しかし、既にサイは投げられてしまった。

 

 

「なるほど。……〝敵〟って事でいいんだな?」

 

 

ハジメがそう呟いたのとキメラが襲いかかったのは同時だった。ハジメの背後から「南雲君!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。

 

 

が、次の瞬間、キメラは一条の閃光と共に爆ぜた。

 

 

ドグシャ!

 

 

 そんな生々しい音を立てて、キメラの頭部が粉砕される。

 

 

再度、誰もが驚く中、閃光を辿って上を見上げるとソコには黒い十字架──【クロスビット】が複数展開されていた。

 

 

 

「おいおい、何だ? この半端な固有魔法は。大道芸か?」

 

とハジメは呆れながらドンナーを抜き、空へ飛翔する。

 

 

クロスビットと同じ位置まで上昇すると、虚空から大型兵器【エクステンド】と【ヒュベリオン】を取り出し、エクステンドを装備。ヒュベリオンを偏光射撃状態に設定。更に、『紅雷龍(九頭竜バージョン)』も降臨し、殲滅フルセット状態。

 

 

そして、探知系の技能を使い、魔物も使徒も全て見つけ、複数照準に入れる。

 

 

「フルバースト」

 

無慈悲な宣告と同時に引き金は引かれ、使徒は…実弾で貫かれた者。レーザーで焼き滅んだ者。荷電粒子砲で消し飛ぶ者にミサイルで爆散する者やパイルバンカーで串刺しになった者等など死屍累々。死山血河を築き上げる。

 

 

あり得べからざる化け物の存在に体の震えが止まらない。

 

 

―あれは何だ?なぜあんなものが存在している?どうすればあの化け物から生き残ることができる!?―

 

魔人族の女の頭の中では、そんな思いがぐるぐると渦巻いていた。

 

 

 それは、光輝達も同じ気持ちだった。彼等は、白髪眼帯の少年の正体を直ぐさまハジメとは見抜けず、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。

 

 

「何なんだ……彼は一体、何者なんだ!?」

 

 

 光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲だよ」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

 

 遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。遠藤は、無理もないなぁ~と思いながらも、事実なんだから仕方ないと肩を竦めた。

 

 

「だから、南雲、南雲ハジメだよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ! って俺も思うけど……事実だよ」

 

「南雲って、え? 南雲が生きていたのか!?」

 

 

 光輝が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……やはり一斉に否定した。

 

 

「どこをどう見たら南雲なんだ?」

 

「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」

 

と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

 

 皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物達が現れた。

 

 

「んなわけねぇだろ!アイツは落ちた!確かに死んだんだ!」

 

「そうだ!皆も見ただろ!あの時、ベヒモスに巻き込まれて………」

 

「生きてる筈がねぇ!そうだろ!?」

 

斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の元小悪党組が狼狽を上げ、遠藤に迫る。が、そんな彼らに比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。

 

 

「……大人しくして。鬱陶しいから」

 

 

ユエからの絶対零度の視線がつきささり、思わず言葉を呑み込んだ。

 

 

そうこうしている間に使徒の殲滅は完了し、ハジメは手刀を構え義手から新機能のビームサーベルを展開し、魔人族の女に接近。そのまま両足を切り落とす。

 

 

「あがぁあ!!」

 

 悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。魔物が息絶え静寂が戻った部屋に悲鳴が響き渡る。情け容赦ないハジメの行為に、背後でクラスメイト達が息を呑むのがわかった。しかし、ハジメはそんな事は微塵も気にせず、ドンナーを魔人族の女に向けながら話しかけた。

 

 

「さて、普通はこういう時、何か言い遺すことは? と聞くんだろうが……生憎、お前の遺言なんぞ聞く気はない。それより、魔人族がこんな場所で何をしていたのか……それと、あの魔物を何処で手に入れたのか……吐いてもらおうか?」

 

「あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに? バカにされたもんだね」

 

 嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。そして、何の躊躇いもなくドンナーを発砲し魔人族の女の両肩を撃ち抜いた。

 

「あああっあ!」

 

再び悲鳴が響く。ハジメはそんな事をお構いなしに魔人族の女を踏みつけ、ドンナーを向けて再び話しかける

 

 

「人間族だの魔人族だの、お前等の世界の事情なんざ知ったことか。俺は人間族として聞いているんじゃない。俺が知りたいから聞いているんだ。さっさと答えろ」

 

「……」

 

「ま、大体の予想はつく。ここに来たのは、〝本当の大迷宮〟を攻略するためだろ?」

 

と、沈黙を貫く魔人族の女に勝手に推測を話し始めた。

 

魔人族はハジメの言葉に眉をピクリと動かした。その様子をつぶさに観察しながらハジメが言葉を続ける。

 

 

「あの魔物達は、神代魔法……いや、変成魔法か。図星みたいだな。なるほど、魔人族側の変化は大迷宮攻略によって変成魔法を手に入れたからか……とすると、魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか……」

 

「どうして……まさか……」

 

「正解だ」

 

「なるほどね。あの方と同じなら……化け物じみた強さも頷ける……もう、いいだろ? ひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね……」

 

「あの方……ね。魔物は攻略者からの賜り物ってわけか……」

 

「もういいだろう?殺りなよ。こんな所で死ぬのは悔しいが………」

 

 

 魔人族の女は、道半ばで逝くことの腹いせに、負け惜しみと分かりながらハジメに言葉をぶつけた。

 

 

「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

 

その言葉に、ハジメは口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「敵だと言うなら神だって殺す。その神に踊らされてる程度の奴じゃあ、俺には届かない。安心しろ、あの世で仲良く再会させてやる」

 

 互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。

 

 

 しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかる。

 

 

「待て! 待つんだ、南雲! 彼女はもう戦えないんだぞ! 殺す必要はないだろ!」

 

「……」

 

ハジメは、ドンナーの引き金に指をかけたまま、「何言ってんだ、アイツ?」と訝しそうな表情をして肩越しに振り返った。光輝は更に声を張り上げた。

 

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

 

 余りにツッコミどころ満載の言い分に、魔人族は嘲笑する様な目を勇者に向けてハジメに言う

 

「人間族は厄介なのを抱えているね」

 

「言っただろ?人間族なんて知らねえよ」

 

 

ドパンッ!

 

 

 乾いた破裂音が室内に木霊する。解き放たれた殺意は、狙い違わず魔人族の女の額を撃ち抜き、彼女を一瞬で絶命させた。

 

 

 静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。

 

 

だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

 

 ハジメは、香織達の方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には、そもそも答える必要ないな! と考え、さらりと無視することにした。

 

 

 もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題である……

 

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