魔王と救世主で世界最強   作:たかきやや

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砂漠と病気

 

 

 

雫を仲間に加え、【グリューエン大火山】を目指して砂漠を魔力駆動四輪で突っ走っているときの事だった。

 

 

「ん? なんじゃ、あれは? ご主人様よ。三時方向で何やら騒ぎじゃ」

 

不意に、そんな様子を面白げに見ていたティオがハジメに注意を促した。窓の外に何かを発見したらしい。

 

 

 ハジメが、言われるままにそちらを見ると、どうやら右手にある大きな砂丘の向こう側に、いわゆるサンドワームと呼ばれるミミズ型の魔物が相当数集まっているようだった。砂丘の頂上から無数の頭が見えている。

 

「? なんで、アイツ等あんなとこでグルグル回ってんだ?」

 

 

 そう、ただ、サンドワームが出現しているだけならティオも疑問顔をしてハジメに注視させる事はなかった。ハジメの感知系スキルなら、サンドワームの奇襲にも気がつけるし、四輪の速度なら直前でも十分攻撃範囲から抜け出せるからだ。異常だったのは、サンドワームに襲われている者がいるとして、何故かサンドワームがそれに襲いかからずに、様子を伺うようにして周囲を旋回しているからなのである。

 

 

「まるで、食うべきか食わざるべきか迷っているようじゃのう?」

 

「まぁ、そう見えるな。そんな事あんのか?」

 

「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが……」

 

 ドMの変態であるティオだが、ユエ以上に長生きな上、ユエと異なり幽閉されていたわけでもないので知識は結構深い。なので、魔物に関する情報などでは頼りになる。その彼女が首をかしげるということは、何か異常事態が起きているのは間違いないだろう。

 

 

 しかし、わざわざ自分達から関わる必要もないことなので、ハジメは、確認せず巻き込まれる前にさっさと距離を取ることにした。

 

 

 と、そのとき、

 

 

「っ!? 掴まれ!」

 

 ハジメは、そう叫ぶと一気に四輪を加速させた。直後、四輪の後部にかすりつつ、僅かに車体を浮き上がらせながら砂色の巨体が後方より飛び出してきた。大口を開けたそれはサンドワームだ。どうやら、不運なのはハジメ達も同じだったらしい。

 

 

 ハジメは、さらに右に左にとハンドルをきり、砂地を高速で駆け抜けていく。そのSの字を描くように走る四輪の真下より、二体目、三体目とサンドワームが飛び出してきた。

 

 

「きゃぁあ!」

 

「ひぅ!」

 

「わわわ!」

 

「べブス!」

 

雫、ミュウ、シア、そして荷台でアシストの膝枕で半分寝てたショウの順に悲鳴が上がる。そんでもって現在進行形でサンドワームの奇襲を受けながらも、ハジメは最近向上しつつあるドライビングテクニックを駆使し、避けまくる。

 

 

「南雲君!貴方の事だからこの車にも色々武装が積んであるのよね!?」

 

と、雫がハジメに問うと、当の本人はニヤリと笑い

 

 

「そんじゃあリクエストにお応えするとしますか!」

 

「おー!」

 

 

特定部位に魔力を流して特殊ギミックを作動させる。

 

それと同時に車にドリフトをかけてサンドワームに車体前面をむけると、ボンネットの一部がスライドして開き、その中からライフルの様な形状の武器が展開される。

 

 

ライフルはカクカクと動いてサンドワームに狙いを定めると、魔法陣を投影。するとサンドワームは一瞬の内に分解された。

 

 

「そう言えば何げに使うの初めてだな」

 

「そうだな。見ろよ、ドンドン綺麗に消えてくぜ」

 

「これならミュウちゃんに見せても問題無いわね」

 

「………ソコの三人は血も涙も無いのね」

 

「失礼な。俺等は立派な人間だよ?ちょっとバグってるだけ」

 

「あれでちょっとな訳無いでしょ!?」

 

と、地球組のお話はさておき。近寄って確認したらサンドワームが襲うかどうか迷っていたのはやはり人だった。

 

 

エジプトの民族衣装に似た白い服を身に纏った20代半ばぐらいの男だった。

 

 

だが、香織が驚いたのは、そこではなく、その青年の状態だった。苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかのように血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。明らかに尋常な様子ではない。ただの日射病や風邪というわけではなさそうだ。

 

 

 ハジメは、まるでウイルス感染者のような青年の傍にいる事に危機感を覚えたが、治癒の専門家が診察しているので大人しく様子を見ることにした。香織は〝浸透看破〟を行使する。これは、魔力を相手に浸透させることで対象の状態を診察し、その結果を自らのステータスプレートに表示する技能である。その結果……

 

 

「……魔力暴走? 摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」

 

「香織? 何がわかったんだ?」

 

「う、うん。これなんだけど……」

 

 そう言って香織が見せたステータスプレートにはこう表示されていた

 

 

====================================

 

状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可

 

症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血

 

原因:体内の水分に異常あり 

 

====================================

 

 

「おそらくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているみたい……しかも、外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない……このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も……『万天』」

 

 香織はそう結論を下し、回復魔法を唱えた。使ったのは〝万天〟。中級回復魔法の一つで、効果は状態異常の解除だ。鈴達にかけられた石化を解いた術である。

 

 

 しかし……

 

 

「……ほとんど効果がない……どうして? 浄化しきれないなんて……それほど溶け込んでいるということ?」

 

 

 どうやら、〝万天〟では、進行を遅らせることは出来ても、完全に治すことは出来なかったようだ。

 

 

「じゃあ、治療を変わろう」

 

ショウは【狂侵精神】にフォームチェンジし、ガントレットの指先からコードの様な物が伸ばし、吸盤の様な先端を展開して貼り付ける。

 

 

「治療最適解、検索開始。身体状況、確認。症状を現世界の過去の事例と照合━━照合完了。治療用魔法式、構築開始………構築完了」

 

『全事象把握』と『ANW』を駆使し、世界そのものの情報から最適解を摘出し、実行する。

 

構築が終わるやいなやその場で作った魔法を得物に生成魔法で付与し、行使する

 

 

「『滅魔』」

 

【ブルー・ファング】から淀んだ蒼色の魔力が溢れ、青年を包みこんで行く。

 

 

「えっと………南雲君、蒼君は何をやってるのかしら?」

 

「それは俺に聞かないでくれ。てかアシストさんや、解説頼む」

 

「はい。アレは反魔法『滅魔』。その効果は対象の魔力………それとそれによって起きた事象を〝無かった事〟にする魔法です」

 

「もう何でもアリね………所で蒼君。貴方の魔力どのくらいなの?最初はマイナスだったけど」

 

「今もマイナス。−∞だよ」

 

「………もう考えるのは辞めましょう」

 

「雫ちゃん、大丈夫?回復魔法かける?」

 

「多分大丈夫よ………多分………」

 

雫は目元を抑えながら空を見上げ、改めて自分とこのパーティとの実力差を痛感しながら、ショウの万能性に衝撃を受けていたのであった………

 

 

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