因果応報。
最期に思い浮かんだのは、そんな言葉だった。
いじめっ子がその報いを受けていじめられる側に回る。
それが漫画や小説なら、ほとんどの読者は「ざまぁみろ」と思う事だろう。俺もそう思ったはずだ。当事者でなければ。
何故あの時の俺は、あんなことをしたんだろう?
その後悔だけがある。
ガキだったから?
そんなものは言い訳にも弁明にもならない。
謝りたかった。
ずっと謝りたかった。
やり直せたらと思ったことは数えきれない。
そんなことはできるはずもないのに。
最期に話すべき機会はあった。でも足が震えて踏み出せなかった。俺はこんなにも臆病だったんだな。やっぱり俺はダメなやつだ。
ごめん、西宮。
ごめん、母さん。
…………ごめんなさい。さようなら。
「聞いてるのか。石田!」
――ッ!? なんだ、ここ、教室? あいつ……クソメガネ。なんであいつが? 走馬灯? にしたってあいつが出てくることはないだろ。
混乱が収まらない中、竹内の後ろからおどおどと歩いてきたのは、一番会いたかったやつで、一番会いたくなかったやつだった。
自分の心臓がキュッと縮こまるのを感じる。
苦しい。呼吸がそのまま止まってしまいそうだ。
でもダメだ。逃げちゃダメだ。今度こそ、ちゃんと向き合わないと。
息苦しさを抑えて、視線を前に向ける。
あの時は何も感じなかったが、竹内が見るからに煩わしそうしているのが感じ取れた。こいつがもっとまともな教師だったなら、結果は変わっていたかもしれないのに。
いや、それこそ言い訳だ。悪いのは全部俺なんだから。
西宮がゆっくりとノートをめくっていく。
『わたしは皆さんとこのノートを通して仲良くなりたいと思っています』
西宮はどんな気持ちでそれを書いたのだろう?
西宮はどんな思いでそれを書いたのだろう?
不安もあったはずだ。
期待もあったはずだ。
それを、俺は踏み躙ったんだ。
それを、俺が踏み躙ったんだ。
「……あ……うぁ……」
泣くなよ、泣いてんじゃねぇよ、俺。
「おい、石田。おまえ何泣いてんだよ。どっか痛いのか?」
「……あ? おまえ……植野……? 別に、たいしたこっちゃねぇよ」
「んなわけねぇだろ。号泣じゃねぇか、おまえ。せんせー、石田くんが調子悪いみたいなんで、保健室連れてってきまーす」
「なに? ああ、なんだ? 泣いてるのか? 分かった、さっさと連れていけ」
「はーい。ほら、行くぞ石田」
「……ああ」
少し気持ちを落ち着けよう。まだまともに顔も見れないけど、これが夢でも走馬灯でもないなら、今度は間違えない。
ちゃんと、やり直すんだ。
短いですがこんな感じで続けていきます。
暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。