石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)
※龍珠桃の誕生日を10月10日と仮定します。
法則的にゾロ目で、白銀御行と一ヶ月と1日違いの筈……


石上優は渡したい

今日は10月10日、ゲームセンターで桃先輩と遊んだ翌日の日曜日だ。僕はスマホで桃先輩へとメッセージを送った。昨日も会っていたのだから、その時で良かっただろと言われるかもしれないが、こういうのは当日に渡す事に意味があると思う……数分後、桃先輩から了承の返信が届いたので、公園で待ち合わせをする事にして家を出た。

 

………

 

〈公園前〉

 

公園に着くと、入り口のポールに凭れる様にして桃先輩が待っていた。僕は直ぐに駆け寄り話し掛ける。

 

「態々すいません。ちょっと、桃先輩に渡したいモノがありまして……」

 

「別にいいけど、昨日じゃダメだったのか?」

 

「もちろんです……桃先輩、誕生日おめでとうございます。」

 

僕は背中に隠していた、プレゼント用にデコレーションされた袋を桃先輩に差し出した。

 

「……私、誕生日教えたっけ?」

 

「……生徒会で委員会と部活動の名簿作ってるのは僕なので。」

 

「そうか……開けていいか?」

 

「はい、どうぞ。」

 

桃先輩はガサガサと袋を開けると、袋から30㌢程のクマのぬいぐるみが顔を出した。

 

「……なんで、ぬいぐるみ?」

 

「前にスマホでビデオ通話しながら、ゲームした時があったじゃないですか。」

 

「そういえば、そんな事もあったな。」

 

「はい、その時に桃先輩の後ろに大きなクマのぬいぐるみがっ……」

 

そこまで言って、桃先輩に胸ぐら掴まれる。

 

「お、おおおお前っな、何見てやがんだ!?」

 

「えー、そんなに慌てる様な事ですか?」

 

「だ、だって、私みたいな奴が……」

 

「別に変だとか思ってませんよ、可愛いトコあるなぁとは思いましたけど……」

 

「んなっ!?」

 

「それに……クマのぬいぐるみ良いじゃないですか。イギリス人の3割はテディベアと一緒に寝てるんですよ?」

 

「いや、それは知らねぇけど……」

 

「もし、いらないんだったら……」

 

「……まぁ、折角用意してくれたんだし、もらっとくよ……ありがとな。」

 

「うす……桃先輩はこれから用事あるんですよね? 今日はコレで失礼します。」

 

「用事って程でも無いんだけど……まぁ、そうだな。また明日な……」

 

「はい、また明日。」

 

桃先輩と別れ、帰路に着く。道中、プレゼントを渡せた満足感に浸りながら……

 


 

優と別れ家へと帰った私は、直ぐに自室へ戻ると先程渡された袋からぬいぐるみを取り出した。

 

「……」

 

別に変だとか思ってませんよ

 

「……」

 

可愛いトコあるなぁとかは思いましたけど……

 

「……ったく、バカにしやがって……私の方が年上なんだぞ、わかってんのか?」

 

抱き抱えたクマのぬいぐるみに話し掛ける。

 

「お前の贈り主は……ホント、物好きな奴だよ。」

 

物言わぬクマのぬいぐるみを抱き締めると、私は勢いよくベッドに寝転がった。

 

「〜〜っ!!」ギューッ

 

ゴロゴロと寝転がりながら、ぬいぐるみを抱き締める……丁度良い抱き締め具合だし、抱きぐるみとして使ってやるか……ギュムギュムと小さな音を出しながら、ぬいぐるみは私の胸にスッポリと納まっている。

 

「……お嬢! 誕生パーチーの準備が出来やしたぁ!!」ガチャッ

 

「勝手に開けてんじゃねぇ!!」

 

私は咄嗟に掴んだ目覚まし時計を力の限りを尽くし投げつけた。

 

「ぐへぇっ!?」

 

目覚まし時計が命中した男は、バターンッと後方に倒れた。

 

「あと、一々誕生パーティーとか開かなくていいって言っただろうが。」

 

「そ、それはオヤジに言ってくだせぇ……」

 

「チッ……バカ親父が。」

(あのまま優とファミレスでも行った方が良かったかな……)

 

私は律儀に帰宅した事を少し後悔した。

 

………

 

〈都内某所〉

 

「親分はどこ行った!? もうすぐ虎狼組との会合があるってのに……」

 

「で、電話してみやす!」

 

男はスマホを取り出すと、親分と表示された欄をタップする……暫しの呼び出し音の後、通話が開始される。

 

〈おーう、どうした?〉

 

「繋がりやした! 親分、どこ行ってんですか!? もうすぐ虎狼組との会合の時間ですぜ!」

 

男は他の組員にも聞こえる様に、ハンズフリー通話に切り替えながら訊ねる。

 

〈……いや、5時から娘の誕生パーチーあるから。〉プツッ、ツーツー

 

親分と呼ばれた男は、それだけ言うと通話を切った。

 

「えぇ……」

 

「……若を代理人にするか。」

 

「……へい。」

 

微妙に肩を落として歩く2人の厳つい男が居たとか居ないとか……

 


 

10月に入り、2週間が経とうとしていたある日の午後……私は中庭を一人で歩いて周囲の景色を眺めていた。今週は生徒会長選挙、来月は体育祭……そして再来月は奉心祭と、2学期はイベントも豊富で楽しみも多い。半年後に秀知院を去る身としては、残されたイベントを精一杯楽しんでやり残した事も無く卒業したい……私が今中庭を散策しているのも、この広い中庭を隅々まで見ておきたいという思いがあったからだ。暫し歩いていると、茂みの中から声が聞こえて来た。私はちょっとした好奇心で茂みの中を覗き込んだ……

 

………

 

「いよいよ明日は会長選挙だな……」

 

「そうっすねぇ……桃先輩も興味あるんですか?」

 

「……正直、誰が生徒会長になろうがどうでもいい。まぁ、今回もアイツが当選すんだろうけどな。」

 

「桃先輩も会長に投票してくれるんですか?」

 

「……消去法でな。他の奴にやらすくらいなら、白銀にやらした方が過ごし易そうだからな。」

 

「……なるほど。」

 

「まぁ、アイツが落選したらお前が暇になるから、こうやってゲームする時間が増えるしどっちでも良いんだけどな。」

 

「うっ、落選とか縁起でもないですね……でも、会長は当選しますよ。」

 

「そんな事わかんねぇだろ?」

 

「コレに関しては絶対と言えます。」

 

「へぇ……随分な自信だな。」

 

「そりゃ……」

 

………

 

そこまで覗いて身を引き、そっとその場を離れる。夏祭りの時の男の子だ……という事はあの時、龍珠ちゃんも居たのかもしれない……ゲームをしながら雑談する2人からは、お互いに気を許し合っている空気が漂っていた。

 

「羨ましいな……」

 

無意識に口から出た言葉に、まだ引きずっているのかと自分が嫌になる……私にも彼氏が居た時があったけど、二股をかけられて随分と嫌な目に遭った。その事が原因で、他の人も巻き込んだちょっとした騒ぎになるし、風野と森君の派閥まで一時期険悪になるしで本当に散々だった。だからかな? 無意識に羨ましいという言葉が出たのは……去年見た時は中等部の制服を着ていたから、一年生か……ちょっとだけ興味が出たので、友達や部活の後輩から情報を集めると、男の子に関する情報はすぐに集まった。まぁ、特に何か目的がある訳じゃないんだけど……ちょっとだけだった興味が大きくなった事は確かだった。

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