石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)
○○には七つの大罪の何かが入ります。


生徒会と取材と○○と

生徒会長選挙も無事終了し、伊井野を会計監査として迎えた新生徒会活動が始まった。新生徒会が発足しても、僕のする事はあまり変わらない。週に1、2回程度だが、藤原先輩がTG部に行っていたり、伊井野が風紀委員の活動で遅れる時などは、意図的に生徒会室を会長と四宮先輩の2人っきりにしたりしている。その間は、僕も他所で自分の仕事をしたりして時間を潰す。丁度、生徒会室の真下の空間が空いている場合が多いので、壁に背を預けて簡単な事務処理や書類整理を終わらせてから生徒会室へと向かい、急ぎの書類や案件が無い場合は桃先輩と一緒にゲームをしたりと、今までとあまり変わらない日々を過ごしていたある日の放課後……

 

〈生徒会室〉

 

「……僕と伊井野に取材?」

 

「あぁ、マスメディア部から正式な申し込みが来てな……石上は以前も受けた事があるから大丈夫だろう?」

 

会長は書類に視線を落としながら、そう言った。

 

「それは構いませんけど、なんで僕と伊井野だけなんですか?」

 

「確かテーマが……次代を担う1年生徒会役員、だったと思う……そういう事情だから、受けてくれるとありがたい。」

 

「今日はそれ程急ぎの案件も無いですし、2人さえ良かったら今からマスメディア部に行ってもらえるかしら?」

 

「わ、わかりました、行ってきます!」

 

四宮先輩の言葉に、伊井野が緊張を含んだ返事をする。

 

「石上くんは、ミコちゃんの事をちゃんとフォローしてあげないとダメですよ?」

(なんてったって、私を副会長にしようとする慧眼の持ち主ですからね!)

 

節穴の間違いである。

 

「石上君、伊井野さんをちゃんと見てて頂戴ね。」

(伊井野さんは、藤原さんを副会長にしようとするヤバイ子なんだから、何を口走るか正直不安なのよね……)

 

かぐやは伊井野の正気を疑っていた。

 

「……はい。」

(なんか、言ってる事は殆ど同じなのに全然違う意味に聞こえるな……)

 

「石上、早く行くわよ。」

 

「あぁ、そうだな。」

(まぁ、前と似た感じの取材だろうし……別に問題無いかな。)

 

僕は伊井野と共にマスメディア部へと向かった。

 

………

 

マスメディア部を訪ねて取材を受けに来た旨を伝える。準備に少し時間が掛かるという事で、偶々手の空いていたらしいナマ先輩とガチ勢先輩(いつもの2人)と雑談して時間を潰す。

 

「そういえば、選挙期間中に先輩達の記事を見ませんでしたけど、担当してなかったんですか?」

(何よりも優先しそうなのに。)

 

「フフ、そうですわね……私達、会長贔屓の記事を書き過ぎて、選挙期間中は部室の出入り禁止令が出てましたの。」

 

にこやかに言う辺り、全然反省してなかった。

 

「ねー。直前に出禁は解除されたけど、部長からは釘を刺されるし、念書は書かされるしで、結局選挙関連には関われなかったから……」

 

「エリカと2人で横断幕を作っていましたわ。」

 

ねー、と言いながらナマ先輩とガチ勢先輩はペチンッとハイタッチをする。

 

「そうですか……」

(なんか可哀想に思えて来たな……)

 

「部長さんはまともなんですね……」

 

「ちょっと伊井野さん〜? その言い方だと、まるで私達がまともじゃないみたいじゃない。」

 

「心外ですわ!」

 

「……では、お2人が今回、私達の取材を担当した場合何を聞きますか?」

 

「生徒会室でのかぐや様のご様子は!?」

 

「会長は!?」

 

「……そんなのだから、取材メンバーから外されたのでは?」

 

「」

 

「」

 

「……」

(伊井野も容赦ないな、まぁ正論だけど。)

 

年下にそんなの扱いされる、かれんとエリカだった。

 

………

 

あれから直ぐに準備が整い、30分程取材を受けてマスメディア部を出た。伊井野は取材が終わるや否や挨拶もそこそこに走って行った。多分、トイレだろう……いつかやらかしてしまわないか心配だ。部室を出てしばらく歩いていると、後ろからナマ先輩とガチ勢先輩に止められる。

 

「どうしたんですか?」

 

「お堅い伊井野さんも今なら居ない事ですし……最近の会長とかぐや様の新エピなどは!?」

 

「かぐや様のご様子は!?」

 

「……伊井野の言葉に全然堪えてないんですね。」

(部長さんも大変だな……)

 

「ねーねー!」グイグイッ

 

「お願いしますわぁ!」グイグイッ

 

グイグイと両腕を掴まれ、両サイドから引っ張られる。

 

「子供ですか……」

 

「おーねーがー……い!?」

 

「お願いしま……すわ!?」

 

急にビクッと動きを止めた2人に訊ねる。

 

「どうしたんですか?」

 

「お、オホホホ……そ、そういえば私達、部活の途中でしたわね!?」

 

「そ、そうだったわねっ……じゃあね、会計君!」

 

2人は何かから逃げる様に走って行った。

 

「……?」

 


 

放課後、廊下を歩いていると優の腕を掴んで揺さぶる紀と巨瀬が見えた。モヤっとした不愉快な気分に顔が歪むのを感じる……優は背中を向けていて此方を見てないが、腕を掴んでいる2人は此方を向いていたので目が合った。その瞬間、2人は優に何か一言だけ言って走って行った……なんとなく、顔を見られたくないと思い物陰に移動する。モヤモヤとした妙な不快感……そうだ、この胸の奥で燻る妙な感情は……あの時に感じたモノに似ている。

 

龍珠桃と関わるのはやめておけ。

 

そう言って私の家の事情をバラした小島と、それを聞いた優を見て……私は柄にもなく、言い様の無い恐怖を感じた。今まで私の家の事を知り、離れて行った奴等同様……石上優という友人も失ってしまうのかと。だけど優は、そんな事は……親は関係無いと、小島相手に啖呵を切った。その言葉を聞いて、私の胸の奥に芽生えた嫌な感情は消え去った……それどころか、顔がニヤケていないか別の心配事が出来た程だ。バレない様に帽子を深く被り、優の背中を大袈裟に叩き、ソッポを向いて誤魔化した。だから、この感情は……優が私から離れる事に対する嫌悪感や不安感と言うモノなのだろう。そして、この感情がまた芽生え始めた。今度は紀や巨瀬と一緒にいる優を見て……この感情がどういった名前の感情か気付いたのは、それから直ぐの事だった。


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