石上優はやり直す   作:石神

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龍の眠りと燕の問い

夏祭り以来の……つばめ先輩と2度目の再会を果たした僕は、少しの戸惑いを感じていた。偶然遭遇した夏祭りと違い、今回は中庭の木陰と非常に見つかりづらい場所で、しかもつばめ先輩から話し掛けて来るなんて思いもしなかった。次会う機会があるとすれば体育祭の応援団だと思っていたし、態々探さないと見つからない様なこんな場所で再会するとは思わなかった。暫し見つめ合う形になった僕とつばめ先輩だったが……

 

「ごめんね、いきなり話し掛けて……」

 

「あ、いえ……全然……」

 

「2人は……付き合ってるの?」

 

「えっ!? 僕と桃先輩がですか!?」

 

つばめ先輩の問いに思わず声が大きくなる。

 

「シー! 龍珠ちゃん、起きちゃうよ?」

 

「あ、すいません。その……つばめ先輩は、桃先輩の事を知ってるんですか?」

 

「うん……一方的にだけどね。去年、1人で居る所を見掛けて話し掛けようとしたんだけど……」

 

「……だけど?」

 

「ふふ、君に先越されちゃったの。夏休み前だったかな……話し掛けようとした日に、君が龍珠ちゃんを見つけた。」

 

「そう、だったんですか……」

 

まさかあの時、近くにつばめ先輩が居るとは思わなかった……

 

「あの、どうして……その後、桃先輩に話し掛けたりしなかったんですか?」

 

「それは……龍珠ちゃんが1人じゃなくなったから……かな。」

 

「え?」

 

「私はね……学校が楽しいし部活動も好きだし、友達が居ればもっと楽しくなると思ってるの。たとえ辛い事があっても、友達や自分を見ていてくれる人が居たら……1人じゃなかったら頑張れると思うんだ。だから……あの日龍珠ちゃんに話し掛けようとしたし、君が居たから……それ以降は話し掛けなかった。」

 

龍珠ちゃんはもう1人じゃなくなったから……と、つばめ先輩は言った。

 

「それで、この前……選挙前だったかな? 此処で今みたいにしてる2人を見掛けて……羨ましいなって思ったの。」

 

「羨ましい……ですか?」

 

「うん、2人の間には……お互いを信頼し合ってる空気って言うのかな? そういうのを見ちゃったから……君に興味持っちゃったの。」

 

「……僕にですか?」

 

「うん、だからね……」

 


 

優と進路の話になった流れで、私が家業を継ぐかどうかの話になった。私はあんな面倒な家業を継ぐつもりはない……その言葉を聞いた優は、良かったと安堵の表情を浮かべた……何が良かったのかと、気になった私が問い質すと……

 

「……笑わないで下さいよ? その……僕は極道の世界には詳しくないんですけど、もし桃先輩が継いだら危ない目に遭ったりするかもしれないじゃないですか……それが嫌だったので、良かったと。」

 

……相変わらず、恥ずかしい台詞を恥ずかしいと認識していないバカ男だ。私は、先程まで見上げていた顔から視線を外した。自分の顔が熱くなる現象に戸惑いながら、誤魔化す様に……うるさい、寝るとだけ言って目を閉じた。顔の熱が治るまでの時間稼ぎのつもりだったのに、私の意識はいつの間にか沈み込んでいた。

 

「ン、ウゥン……」

 

「あ、起きましたか。」

 

その言葉で徐々に意識が覚醒していく……私は寝てたのか……不意に自分の体に掛けられている上着が目に入る。全く、余計な気を利かせやがって……悪態を吐く思考とは裏腹に、胸の辺りにはボンヤリとした温かさが湧き上がっていた。

 

「おはようございます。」

 

「……おぅ。」

 

なんとなく気恥ずかしくなり、気のない返事で誤魔化しながら聞く。

 

「私……どれくらい寝てた?」

 

「えーと……30分くらいですかね。」

 

「そうか……」

(30分程度とはいえ、私が学園内で無防備に寝るなんてな……)

 

「どうしました?」

 

「いや、誰にも見られてないよな?」

 

「……はい、誰も来ませんでしたよ。」

 


 

20分前……

 

「……君に興味持っちゃったの。」

 

「……僕にですか?」

 

「うん、だからね……また話し掛けても良い?」

 

「別に良いですけど……僕と話してもつまらないと思いますよ?」

 

「そうかな、私はそうは思わないけど? あ、それと私が来た事は龍珠ちゃんには秘密にしてね。」

 

「え? なんでですか?」

 

「んー、女の子はね……無防備に寝てる所を他人に見られるの、凄い嫌がるんだよ?」

 

「そうなんですか?……起きた時が怖いなぁ。」

 

「あ、君は大丈夫だから、気にしないで。」

 

「え、なんで……」

 

「んー……秘密。頑張って考えてね。」

 

「えー……」

 

「それじゃ、私はそろそろ行くね。」

 

そう言いながらつばめ先輩は立ち上がった。

 

「またね、優君!」

 

「ッ……はい、また。」

 

そう言って去って行くつばめ先輩を見送る……前と同じ呼び方をされた事に少し動揺してしまったが、変わらないリズムで寝息を立てる桃先輩を見下ろし、僅かに上下する肩をポンポンと叩きながら時間は過ぎて行く。

 

「そういえば……質問に答えてなかったな。」

 

2人は……付き合ってるの?

 

つばめ先輩の問いに、付き合ってないと……即答しなかった自分自身を訝しむ。

 

「どうして……」

 

その疑問の答えは、後日……思ってもいない形で明らかとなった。

 

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