石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)


石上優は相談したい

 

〈生徒会室〉

 

「会長ー、なんか……今日の石上くん、ちょっと変じゃないですか?」

 

「あぁ、藤原書記も気付いたか……」

 

「心ここに在らず……と言った感じでしょうか。」

 

「でも、かぐやさん……タイピングは滅茶苦茶速いですよ?」

 

「」カタカタカタッ

 

一心不乱にキーボードを打ち込む石上に、一同は困惑する。

 

「うぅむ……伊井野監査、何か知らないか?」

 

「……いえ、私もわかりません。教室では普通だったんですけど……」

 

「うーん……という事は、教室から此処に来るまでの間に何かあったって事ですかねー?」

 

「そうだろうな……まぁ、本人に聞いてみるのが1番手っ取り早いが……」

 

「じゃあ私が!……石上くん、此処に来る前に何かあったんですか?」

 

「……勘違いした頭突きは目を瞑った時でしたね。」

 

「……え?」

 

「つまりですね……茂みで頭突きは馬乗りの後って事です。」

 

「ひっ!? か、かぐやさん、怖いです!」ガシッ

(っていうかコレ、なんか見た事ある!)

 

藤原は1学期に起こった生徒会猫耳事件の白銀を思い出し、青い顔でかぐやの腕に抱き付いた。

 

「か、会長! なんとかして下さい! 経験者でしょ!?」

 

「藤原、経験者ってどういう意味だ!……ンンッ! 石上、何か悩みでもあるのか?」

 

「悩み……」

 

「あぁ、もし何かあるのなら相談に乗るぞ? 普段から石上には何かと世話になっているしな。 」

 

「……なら、後で少し良いですか? 出来れば会長だけでお願いしたいんですけど……」

 

「あぁ、わかった……生徒会が終わったら時間を取ろう。」

 

「……ありがとうございます。」

 

………

 

「それじゃまた明日ー。」

 

「お疲れ様です。」

 

「お疲れ様。会長、戸締まりお願いしますね。」

 

「あぁ、わかった。お疲れ。」

 

藤原、伊井野、かぐやの3人は、男子2人を残しさっさと生徒会室を出て行った。

 

「むむぅ、会長だけに相談するなんて石上くんも水臭いです……ね、ミコちゃん?」

 

「確かにそれは……そうですね。」

 

「男同士の方が話し易い事もあるのでしょうね。石上君は普段からしっかりしていますけど、まだ1年生ですからね……ふふ、少し安心しました。」

 

「かぐやさんは気にならないんですかー?」

 

「全く気にならないと言えば嘘になりますけど、石上君が話しても良いと判断してくれるまで待つのも……先輩の役目よ?」

 

「うぐっ、それはそうかも……」

 

「四宮先輩……」

 

「伊井野さんもよ? 今、石上君が話してくれないのは、自分の中でまだ整理が出来てないだけかもしれないわ。伊井野さんはクラスメイトなんだから、ちゃんと見ててあげて下さいね?」

 

「は、はい!」

 

「……じゃあ、今日は女子だけで何処か行きましょうか!」

 

「藤原先輩、何処に行くんですか?」

 

「スイーツでも食べに行きましょう! かぐやさんも、それで良いですか?」

 

「えぇ、構いませんよ。」

 

「やったー!」

 

「わーい!」

 

女子3人がスイーツ店へと赴く事が決まった頃……

 


 

〈生徒会室〉

 

「お、押し倒されてキス!? しかも龍珠に!?」

 

先輩として後輩の相談に乗り、頼りになる所を見せよう……という多少の打算を持っていた白銀の思惑は、石上から話を聞いた直後に吹き飛んだ。

 

「はい、まだちょっと混乱してるんですけど……」

 

「な、なるほどな……うん、気持ちはわかる。わかるぞ……」

(マジかよ……もっとソフトな奴だと思ってたのに、滅茶苦茶ヘビィな奴来たじゃん……)

 

モンスター童貞には荷が重かった。

 

「……会長も経験が?」

 

「あ、あぁ、まぁな……」

 

嘘である。この男、恋文やバレンタインチョコを貰った経験こそあれど、キスどころか異性と手を繋いだ経験すら無い(花火大会でかぐやの手を一方的に握った経験は除外)只々、モンスター童貞がくだらない見栄を張っただけである。

 

「……会長は、その時はどうしたんですか?」

 

「ンンッ!? そ、そうだな……石上、俺がどうしたかは重要じゃない。重要なのは……石上、お前自身がどうしたいか、だ。」キリッ

(イケるか……?)

 

「会長……そう、ですね。ありがとうございます。僕自身がどうしたいか、考えてみます。」

 

「あぁ、また何かあれば話くらいは聞こう。」

(イケたー!)

 

「それじゃあ、僕はコレで。」ガチャッ

 

「あぁ、お疲れ。」

 

生徒会室を出て行く後輩を白銀は見送る。

 

「しかし、龍珠がなぁ……」

 

白銀の脳裏には……去年、生徒会に入ったばかりの頃の気弱だった自分を鼓舞し、被るべき仮面と演じるべき性格を示唆してくれた……かつての仲間の姿が浮かんでいた。

 


 

〈石上家自室〉

 

「僕自身がどうしたい……か。」

 

僕は一年前の夏……桃先輩と出会ってからの事を思い出していた。ゲーム好きで、面倒くさがりで、素直じゃない。でもなんだかんだで優しくて可愛らしい一面を持つ、警戒心の強い猫の様な1つ上の先輩……考えるまでもなかった。キスをされたと気付いた時、混乱すると同時に僕は……嬉しくて堪らなかった。つまりは……そういう事だ。僕の心の奥底に隠れていた……僕自身、自覚していなかった気持ちを……桃先輩に引っ張り出された。

 

「敵わないなぁ……」

 

そういえば、桃には花の花言葉以外にも……桃の実にも花言葉があるのを思い出した。確か、桃の実の花言葉は……

 

〈天下無敵〉

 

その言葉を思い出した僕は、思わず笑みを零してしまった。

 


 

一方その頃……

 

「〜〜〜っ!!!」ギューッ、ゴロゴロ

 

クマのぬいぐるみに顔を埋めて、悶える少女が居たとか居ないとか……

 


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