石上優はやり直す   作:石神

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龍と黒白の珠after①

〈持たざる2人は聞き出したい〉

 

〈生徒会室〉

 

「お茶です!」ササッ

 

「……どーも。」

 

藤原(リボン女)から差し出された湯呑みを受け取る。私は、1年振りに生徒会室を訪れていた。今日は生徒会の仕事も大した量がないと優から聞いていたから、ただ待つくらいならと優を迎えに来たんだけど……優は委員会のヘルプに行っているらしい。入れ違いになっても面倒だから、そのまま優が戻るのを待っている。

 

「しかし……龍珠が生徒会室(此処)に居るのを見るのは、随分と久し振りだな……アレから何か変化はあったか?」

 

「フン……あのバカがやらかした所為で、何処に居ても鬱陶しい目で見られるな。まぁ、此処ならそんな奴は居ないし……どうせ優を待つなら、此処はマシな場所だな。」

 

「そうか、息苦しさを感じる様なら好きな時に来ていいからな……まぁ、そんな心配は要らないだろうがな……」

 

「……さぁな。」

 

……昔はお姫様に無視されただけで凹んでいた癖に、随分と生徒会長が板に付いた様に感じる……白銀と話していると、四宮かぐや(お姫様)から妙な圧を感じた。コレ以上話していると面倒な事になりそうだと思い、白銀との会話を打ち切る。暫しお茶を飲みながら横目で生徒会室を眺める……変わらないな、此処は。

 

「会長、ズルいですよぉ!」

 

その声に視線を向けると、藤原が白銀に何やら抗議をしていた。

 

「ずーるーい、ずーるーいです!」

 

……何の話をしているかは聞こえないが、藤原は飛び跳ねながら……白銀に向かって同じ言葉を繰り返している。

 

「ずーるーいーでーすー。」ボインボインッ

 

「……」イラッ

 

上下に揺れる2つの物体……その持ち主は特に意に介した様子もなく、机に手を付き小さく飛び跳ねている。特に理由はない……本当に理由はないが、その姿を見ているとなんとなく……イラっとした。

 

「見せつける様に揺らしやがって……あの駄肉、引き千切ってやろうか……」

 

「また藤原さんは、これ見よがしに見せつけて……捥いでやろうかしら……」

 

「は?」

 

「あら?」

 

「「……」」

 

お姫様と視線が交錯する……私は視線を少し下げて一考する。流石に……コレに仲間意識を持たれるのはイヤだな、まだ私の方が……

 

「……ハッ、お姫様も随分なコンプレックスを抱えてるみたいだな。」

 

「あら、それは此方のセリフです。貴女も人並みに劣等感を感じているみたいで安心しました。」

 

「「……」」ゴゴゴゴゴッ

 

「……何をやってるんだ、あの2人は?」

 

「……さー?」

(なんか寒気が……)

 


 

ー30分後ー

 

「ヘルプ終わりましたぁ……伊井野は風紀委員に顔出してから来るそうです。」

 

「あぁ、お疲れ。石上、いつも悪いな。」

 

「いえいえ……ってアレ? 桃先輩どうしたんですか?」

 

「あっ! 石上くん聞いて下さいよー。」

 

「「……」」ギロッ

 

「ピィッ!? ……わ、私、用事があったの思い出しました! お疲れ様でしたー!」

 

「どうしたんだ、藤原の奴……」

 

「さぁ? 」

 

………

 

「桃先輩、態々迎えに来てくれたんですか?」

 

「……暇だったからな。」

 

「あらあら、龍珠さんは素直じゃないんだから……あぁ、そういう一面を見せるのは石上君の前だけでしたか?」

 

「てめぇ……」

 

そんな遣り取りをする桃先輩と四宮先輩を見ながら、会長に小声で聞く。

 

「……会長、桃先輩と四宮先輩って仲悪いんですか?」

 

「そういう話は聞いた事ないが……」

 

「そういえば……殿方は胸の大きい女性を好むらしいですね? 石上君もそうなのかしら?」

 

「四宮先輩!?」

 

四宮先輩のトンデモ発言に目を見開く。此処で動揺したら終わりだ……

 

「……ハハハ、もう四宮先輩ったら、何言ってるんですかぁ……」

 

勘弁して下さいよーという感じで四宮先輩の言葉に答える。

 

「もし、そうなら……」

 

四宮先輩はチラリと桃先輩に視線を向けると……

 

「ふふ……」

 

挑発気味に笑った。

 

「……ッ」

 

その追撃に、桃先輩は黙って四宮先輩を睨みつける。

 

「いやいや、そんな胸の大小で決めたりはしないだろう……な、石上?」

 

「……今はそういうの話をしてるんじゃねーんだよ、黙ってろ。」

 

「ぐぅっ……」

 

桃先輩の言葉に会長が黙る。マズイ……なんとか有耶無耶にしなければ……このままじゃ……

 

「そういえば……白銀は巨乳派だったか?」

 

「はあああっ!!? 龍珠、お前何をっ……」

 

「へぇ……会長、そうなんですか?」

 

「」

 

四宮先輩からの圧に、会長が言葉を失う……桃先輩負けず嫌いだから、絶対やり返すと思った……

 

「い、石上、なんとかしてくれっ……」

 

会長にそう耳打ちされるが、打開策なんて浮かばない……ラブコメなら回避不可イベントだろう。一縷の望みをかけて、桃先輩に近付く。

 

「……それで、どっちだ?」

 

「桃先輩、胸の大きさなんて関係ないんです!好きになった人のサイズがタイプです!」

 

桃先輩の目を真っ直ぐに見つめ、勢いでなんとかしようとするも……

 

「……それで、どっちだ?」

 

先程と全く同じ表情と声色で、全く同じ問いを投げ掛けられた。僕はクルリと方向転換し、会長に耳打ちする。

 

「会長駄目です、吐きましょう。」

 

「折れるの早えよ!!」

 

本日の勝敗、石上&白銀の敗北

吐かされた為。

 


 

〈モモちゃんは呼ばれたくない〉

 

「はぁ……」

 

「……会長、どうでした?」

 

雑誌を閉じながら、溜息をついた会長に話し掛ける。

 

「……桃缶ホント最高。」

 

「禿げ上がる程同意します。」

 

桃缶! 週刊ミドルジャンプで連載中の〈モモちゃんは考えない〉……つい先日もアニメ化が決定した話題で盛り上がった漫画である。前回の記憶がある石上は、当然内容も知っている為、態々週刊誌を買って読む必要はない。……しかし桃缶は、前回の自分が白銀御行と漫画やアニメの話題で盛り上がる事が出来た数少ない存在……少しの出費でオタ友が出来るならと、石上は白銀の隣でミドジャンを読み続けた。結果……

 

「モモちゃんめっちゃかわえぇ……」

 

前回同様、白銀御行はオタの道に足を踏み出したのだった。

 

「わかります、面倒くさがりな所とかもですけど……」

 

「先週号のベッドに寝そべる話も良かったよなー。」

 

「そう! そうなんですよ! それに、あの話も伏線があって……」

 

2人が楽しそうに、オタ話に花を咲かせている頃……

 

………

 

「ったく優の奴……さっさと仕事終わらせろっつーの。今日はオンラインイベントがあるって言ってたのに……」

 

龍珠桃は、恋人を迎えに生徒会室に向かっていた。無駄に長い廊下を歩き、生徒会室と表示された部屋の扉を開け声を掛ける。

 

「優、いつまで掛かって……」

 

「モモちゃん可愛い!」

 

「わかります、モモちゃん可愛いっすよね!!」

 

「……」

 

2人のオタクは、部屋に入って来るなり口元を歪め始めた少女に気付く事もなく話を続ける。

 

「あの気怠げな所も理由があるって判明した時は……」

 

「そうなんですよ! それが素直じゃないトコにも繋がってて……」

 

「……」

 

龍珠はゴミを見る様な目で2人を見始めた。

 

「まぁでも結局……モモちゃん可愛い!」

 

「モモちゃんめっちゃ可愛っ……あ、桃先輩。」

 

「おう龍珠、石上を迎えに来たのか?」

 

「……」

 

「……先輩?」

 

「……龍珠?」

 

黙って此方を睨む龍珠桃を、白銀は訝しむ……しかし、そこは学年一位を取り続ける男……すぐに先程までの自分達の発言を思い出す。

 

「……ハッ! い、いや、違うぞ!? 確かにさっきまで俺達はモモちゃんモモちゃん言っていたが、別に龍珠の事を言っていた訳じゃ……」

 

「……言いたい事はそれだけか?」

 

「マジなんだって! いや、確かにお前も桃ちゃんだが、俺達が言ってたのはモモちゃんであって、決して桃ちゃんと言っていた訳では……」

 

「モモちゃん、モモちゃんうるせぇ!!」ドゴォッ

 

「ぐほぉっ!?」

 

「か、会長ーーー!!?」

 

本日の勝敗、白銀&石上の敗北

オタ話は程々に。

 

 

 

 


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