石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(゚ω゚)
以前みたいなスピーディな投稿は出来ないし見切り発車ですが、それでも良いならゆっくり投稿します。頑張って完結させたい……
章タイトルは、皇女(ミコ)の御心(みこころ)編です。


√C.皇女の御心編
伊井野ミコは勝ち取りたい


2学期に入り1ヶ月が経過した。僕達が在籍していた第67期生徒会は全活動を終了……これから約2週間の選挙活動期間を経て、次代の生徒会長を決める生徒会長選挙が行われる。当然僕は白銀陣営の1人として、会長のサポートに徹する事になる。今も会長が任期中に残した功績などをそれっぽく編集している真っ最中だが……僕はキーボードを叩きながら、先日の出来事を思い出していた。

 

………

 

生徒会が解散した次の日、僕は伊井野に呼び出された。

 

「石上……私、生徒会長選挙に出るの、手伝って!」

 

「ごめん、それは出来ない……僕は会長を補佐する。」

 

「……私が生徒会長じゃ嫌? 私は……生徒会長に相応しくない……?」

 

僕の言葉に……伊井野はショックを受けた様で、スカートの裾を掴みながら此方を見る。

 

「違うよ……ただ、会長には恩があるから……会長が生徒会長に立候補するなら、全力で応援して手伝いたいんだ。」

 

「そう……」

 

僕の言葉に短く返し、俯く伊井野を黙って見つめ続ける……前回の僕なら、絶対に手伝ってくれなんて言われなかったな……そういう意味では伊井野の申し出は嬉しいし、友人として応援したいと思っている。

 

「だったら……私が白銀前生徒会長に勝って生徒会長になれたら、石上は生徒会に入ってくれる?」

 

顔を上げた伊井野は、強い意志を秘めた眼差しを此方に向けながらそう言った。

 

「いいよ……でも、会長は手強いぞ?」

 

「負けないから!!」

 

そう叫ぶ伊井野を見ながら思う……出来る事なら味方してやりたいけど、コレだけは駄目なんだ。僕にとっての生徒会長は、白銀御行(会長)だから……来年は絶対に手伝うからと、心の中で一方的に約束する事で許してもらおう。

 

………

 

そんな事があったから、前回以上に伊井野の動向を気にしてしまう。今回も伊井野は、ウケの悪いビラを配り、真面目過ぎる公約を掲げて選挙に挑む。そして、演台の前に立ち……また、何も言えなくなってしまうのだろう。今回も会長が助け船を出せば、上手くいく筈だ。だから、僕が余計な事をしなくても伊井野は大丈夫。そう思っていても……僕の胸にはモヤモヤとした何かが居座っていた。

 


 

〈中庭〉

 

昼休み、コンビニ袋片手に中庭を歩いていると……

 

「アクセサリーを付ける事は校則で禁じられています! コレは没収させて頂きます。放課後、風紀委員室まで取りに来る様に。」

 

風紀委員の腕章を付けた伊井野を見掛けた。どうやら、昼休みの見回り当番の様だ。注意を受けた男子生徒は頭に手をやり、ガシガシと髪を掻き乱しながら叫ぶ。

 

「っだー! ツイてねぇ!! 風紀委員に、しかも伊井野に見つかるとか……見逃してくんない?」

 

「駄目です!」

 

「チッ……お前になんか投票しねぇからな!」

 

「……」

 

走りながら去って行く男子生徒を……伊井野は黙って見送る。全く……見逃して好感度を上げて置けば、票も増えるかもしれないのに……いや、わかってる。それを良しとしないのが伊井野ミコという人間なんだ。呆れる程真面目で、他人にも自分にも厳しく、只管規則を遵守する……その姿勢と心意気が、いつか大勢の人間に理解してもらえればいいのにと思った。

 


 

選挙期間に入り1週間が経過した。会長と伊井野の顔合わせも済み、僕は今日も編集作業に追われている。

 

「……あれ? これってどうだったっけ?」

 

手元の資料を調べてもわからない。はぁ、仕方ない……生徒会室に行って確認するとしよう。作業を中断し、僕は無人の生徒会室に足を踏み入れる……筈だった。

 

〈生徒会室前〉

 

まだ1週間しか経っていないのに、生徒会室に向かう途中の道が随分と懐かしく感じる。僕にとって、生徒会室はある意味……自室よりも居るのが当たり前の場所だ。後1週間もすれば、また生徒会役員として来る事が出来る……そんな事を考えながら生徒会室の前に着くと、中から人の話し声が聞こえて来た。僕はそっとドアに耳を近づけ、全神経を聴く事に集中させる。

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「つまり、来年協力する代わりに……自分達の出馬する今年は降りろ……そういう事ですか?」

 

「あら? そう聞こえましたか?」

 

「そうですか……石上が肩を持つからどんな人格者かと思ったら、なんて汚いっ……貴女の様な人達に秀知院学園は任せられません!」

 

「あら、随分と言ってくれますね……」

 

「……四宮先輩、そこまでです。」ガチャッ

 

伊井野と四宮先輩の衝突が大きくなる前に、生徒会室へと乱入する。

 

「石上君……」

 

「い、石上……」

 

ホッと何処か安心した様な表情を浮かべる伊井野を一瞥し、四宮先輩に視線を移す。

 

「……どうして此処に?」

 

「前期生徒会の活動資料を見に来たんですよ。PV編集に必要だったので……」

 

「そう……」

 

「石上……」

 

「ごめんな、伊井野……僕に免じて四宮先輩の発言は聞かなかった事にしてくれないか? 伊井野はいつも通り正々堂々、全力で会長選挙に挑んで大丈夫だから。」

 

「……うん、わかった。」

 

失礼します、と礼儀正しく生徒会室を出て行った伊井野を見送ると四宮先輩に向き直る。

 

「……何やってるんですか、四宮先輩。」

 

「……貴方が気にする事じゃないわ。私はただ、会長を勝たせる為に全力を尽くしているだけよ。貴方こそ……邪魔立てするなんてどういうつもり?」

 

「はぁ……未遂で終わって良かったです。」

 

「……どういう意味かしら?」

 

「いや、だって……こんな事してるなんて会長に知られたら、絶対嫌われますよ?」

 

「え……嫌われる?」

 

僕のその言葉に、四宮先輩は目を見開いて固まった。

 

「そりゃそうですよ、会長からすれば……四宮先輩がそこまでしなきゃ、自分は生徒会長になれないと思われているんだなって勘違いしても不思議じゃないですし……会長は責任感も人一倍強いですから、もしこんな事をしてるなんてバレたら会長選挙を辞退する可能性だって……」

 

「え、え……」

 

そうか、四宮は俺の事を信用していなかったんだな……

 

ち、違うんです、会長!

 

いや、もういい。悪かったな、頼りない男で……

 

か、会長! 待って下さい、違うんです!!

 

さよならだ、四宮……

 

か、会長ー!!!

 

「」ガタガタガタッ

 

四宮先輩は、傍から見てもわかる程動揺し始めた。まさか、そこまで考えてなかったのか……もしくは、バレないと高を括っていたか……伊井野が会長に抗議したら一発でバレるのに。

 

「ど、どうすればっ!? も、もしこの事がバレたら私……会長に嫌われ……!?」ガクガクッ

 

「……伊井野には口止めしとくんで、落ち着いて下さい。」

 

「ほ、ホント? ちゃんと内緒にしてくれる様に言ってくれる?」

 

「大丈夫です、僕も会長に辞退されるのは困りますから。」

 

「お、お願いね、石上君! ホントの本当にお願いね!?」ガシッ

 

四宮先輩に肩を掴まれ、揺さぶられながら懇願される……

 

「わ、わかりましたから、落ち着いて下さい!」

 

「そ、そう……ならいいの。じ、じゃあ、私はこれで……」

 

四宮先輩は落ち着きを取り戻すと……

 

「……本当にお願いね?」

 

生徒会室を出て行く寸前、そう言い残して去って行った。

 

「はぁ、なんとかなった。でも四宮先輩……前回もこんな事してたのか? 伊井野は何も言わなかったけど……まぁ、言い触らす奴じゃないか。」

 

僕は目当ての資料を棚から取り出し確認すると、生徒会室を出た。帰る途中、スマホで伊井野に口止めのメッセージを送るのも忘れずに。そして……ほんの少しの申し訳ない気持ちを込めて、文の最後に〈応援してる〉とだけ記して送信して、スマホをポケットに仕舞い編集作業に取り掛かった。




大仏√と龍珠√で原作ネタ使い尽くした感が……ネタ被りとかするかもしれませんが、許して……許して……(´;ω;`)

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