生徒会長選挙も無事終了……今日からは新メンバーの伊井野を加えた新生徒会として、生徒会業務に従事する事となる。新生徒会とは言っても、僕からしたらやっと全員が揃ったという感じなんだけど。
「……」チラチラ
「……なぁ、伊井野。」
「っ!?」プイッ
「はぁ……」
僕は今、伊井野と一緒に生徒会室に向かっている。生徒会初日と言う事で、風紀委員の仕事を免除された伊井野をどうせなら一緒に行こうと誘った所までは良かったが……チラチラと此方を窺い、話し掛ければそっぽを向く伊井野に辟易する。なんでだ? 今回は伊井野の前で校則違反をした事は殆どないから嫌われてない筈だし、昨日までは割と普通だったのに……うぅん、わからん。
友人の様子を訝しむ石上優の脳内には、? が浮かぶばかり……しかし、伊井野ミコも好んでそっぽを向いている訳ではない。先程の一場面にわかりやすさを加えるならばこうである。
「……」チラチラ
(石上の手、意外と大きかったなぁ……大きいのに撫で方は優しくて凄く安心し……はっ!? 実は女の子の頭を撫で慣れてるって事は……!?)
「……なぁ、伊井野。」
「っ!?」プイッ
(ひゃっ!? ビ、ビックリしたぁ、石上の手を見てた事バレてないよね? すぐ顔逸らしたし。)
「はぁ……」
(あ、無視したみたいになっちゃった……違うのに。でも、今から何か言うのも変な感じだし……もー! なんで今までみたいに話せないの!?)
意識しているからである。
〈生徒会室〉
伊井野と四宮先輩の顔合わせも終え、早速生徒会業務に取り組もうとした僕達だったが……
「親睦を深める為に恋バナしましょー!」
藤原先輩がいきなりそんな事を言い出した。
「藤原書記、いきなり何を言い出すんだ?」
「これから私達は同じ生徒会として仕事をする事になるんですよ? そして、円滑に仕事をする為には、相互理解が必要になってきます。恋バナはお互いを理解するのに最適な話題です!」
「確かに、相互理解は必要だが……」
「藤原さん、よりによってなんで恋バナなの?」
「学生が1番盛り上がるのが恋バナだからです! どんなタイプが好きだとか、デートはどんな場所に行きたいとか……そういう心の中のモノを赤裸々に言い合う事で、お互いに絆が生まれ結束が強まるんです!」
「さ、流石は藤原先輩です!」
「……」
多分恋バナしたいだけだな、この人……まぁ伊井野が生徒会に溶け込みやすくなるというのなら、反対する理由は無いけど。
「それでは、会長は気になる女の子との初デートをどう過ごしますか?」
「お、俺か!? う、うぅむ、いきなりそんな事を聞かれてもな……」
「っ!?」
(会長のデートプラン!? 藤原さん、よくやったわ!)
「別に難しく考えなくてもいいんですよ? 馬鹿になんてしませんから、会長の思うままのデートプランを言って下さい!」
「うぅむ、まぁ初デートだからな……無難にウィンドウショッピングや映画とかか?」
「うわー、なんの面白味もないデートですね……正直ガッカリです。」
「馬鹿にはしてねーけど、メッチャ上から言うじゃん。」
「……」
(会長とウィンドウショッピング……)
……このネックレス、四宮に似合ってるな。
え? そ、そうですか?
あぁ、是非プレゼントさせて欲しい。
あ、ありがとうございます……
「ッ!」
(……良い!!)
「ミコちゃん、会長のデートをどう思いました? アリかナシかで言って下さい。」
「批評させんな。」
「えぇと……アリです。置きに行き過ぎな気もしますし、とりあえず感が否めませんが……まぁアリです。」
「そこまで言われるなら、ナシって言われた方がマシだったな。」
「す、すいません……」
「ミコちゃん、気にしちゃダメですよ! しょーもないデートプランしか言えない会長が悪いんですからね?」
「は、はい。」
「藤原、結束強めるつもりないだろお前。」
「次は……黙ってやり過ごそうとしてる石上くん!」
目敏い……面倒だから気配消してたのに。
「うーん……デートプランですか。そうですね、例えば……」
僕は前回の人生で学習した。何度も四宮先輩に恋愛相談をし、その度に気持ち悪いと詰られた。自分でコレだと思ったデートプランも、四宮先輩には常軌を逸していると言われ……僕は理解した。自分の趣味趣向を前面に出してしまうと、反感を買ってしまうと言う事に。だから、自分を出すのはほんの少しに留め、万人向けのデートプランを練れば良いんだと気付いた。
「公園や動物園などのデートで、行く先々に花を一輪用意しておくんです。そして、デートの最後には今までにデート先で見て来た花で作られた花束を贈るんです! どうですか!?」
「ほう……」
(なるほど、流石は石上だ……中々センスあるデートプランだな。)
「アハハハ……石上くん、キモーい。」
「……」
(久々に死にたくなった……)
「……」
(マジかよ、コレ駄目なのか……)
「……ッ」
かぐやも藤原と同様、行く先々に予め花を用意してる辺り気持ち悪いと思っているが、選挙前の暗躍の件で石上には借りがある為我慢した。
「ミコちゃんはどう思いました?」
「え、えと……」
(はああぁあぁっ!? い、石上って意外とロマンチックな所あるの!?)
他者にはともかく、伊井野にとって石上の述べたデートプランはドストライク! 高校生にも関わらず、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれると言って憚らない女である。石上の常人には理解されないロマンス全振りの感性も奇跡的に伊井野にはブッ刺さる! 前回の人生では殆ど生かされる事はなかったが、石上優は伊井野ミコに対する恋愛特効持ちなのである!!
「……ミコちゃん?」
「あっ、えぇっと……な、何ですか!?」
「いや、石上くんのデートプランがアリかナシかですよ。遠慮なく言っちゃって下さい!」
「えぅっ……えぇと、その……」チラッ
「……僕に気を遣う必要はないぞ?」
(伊井野に色々言われるのには慣れてるし。)
「あ……アリ…………です。」
「えええっ!!? ミコちゃん、頭大丈夫!?」
「えぇっ!?」ガーンッ
「藤原先輩、オブラートって知ってますか?」
「……藤原さん、自分の感性とズレているからって馬鹿にしてはダメよ。」
「はーい。」
本日の勝敗 白銀&石上の敗北
デートプランをダメ出しされた為
「……」チラッ
「ん? 伊井野、どうかしたか?」
「な、なんでもないっ……」
(ど、どうしよう……石上の事、ちゃんと見れなくなりそう……)
&伊井野の敗北