石上優はやり直す   作:石神

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大友京子はアピらせたい

〈ファミレス〉

 

詳しい話を聞きたいと言う大友さんに連れられ、私達は近くのファミレスを訪れていた。

 

「それでそれで? いつから好きなの?」

 

「えぅっ……い、いつからとかはわかんないけど、気付いたら目で追ってて……」

 

「ふーん? でも、キッカケくらいはあるでしょ?」

 

「キッカケ……」

 

伊井野、よく頑張ったな……偉いぞ。

 

「……ッ」プイッ

 

石上の事が好きと自覚してから、あの時の事を思い出すと……以前とは違った感情というか、気恥ずかしさの様なモノを感じてしまう。顔に熱が集まるのを感じた私は、誤魔化す様に大友さんから顔を逸らした。

 

「その反応……思い当たる節があるんでしょ!」

 

向かいの席から隣に移動して来た大友さんに……白状しろー、とほっぺをぐにぐにされる。

 

「あうぅ……」

 

「ほらほら、言わないとやめないよー?」グニグニ

 

「い、言うから、言うからやめてぇ……!」

 

………

 

「……なるほどー、会長選挙の後にそんな事があったんだ……それで、頭ナデナデされて意識しちゃったんだね。」

 

「う、うん……選挙演説の時も、私が萎縮して何も言えなくなって……騒ぎが大きくなりそうになった時に助けてくれて……」

 

「あー、凄い音がしたから見てみたら石上君だったからビックリしたよ。伊井野ちゃんの為だったんだね……やっぱり優しいね、石上君。」

 

「……うん。」

 

「アタックしないの?」

 

「えぇっ!? で、でもぉ……」

 

「私はクラス違うからあんまりだけど……石上君って結構女子と一緒に居るトコ見るよ?」

 

「た、例えば!?」

 

「伊井野ちゃん、おさちゃん、おのちゃんの3人の他にも……先輩っぽい人と並んでノート見てたり、中庭で帽子被った女子とゲームしてるトコも見た事あるし、あとは……藤原先輩だっけ?」

 

「う、うん。」

(ふ、藤原先輩!? でも藤原先輩は、石上の事は恋愛対象じゃないって言ってたし……そんな事ない筈……)

 

「1学期の……夏休みの前くらいだったかなー? 号泣してる藤原先輩と一緒に歩いてたよ。」

 

「ええぇっ!?」

(何があったの!?)

 

「私が推理するに……もしかしたら、別れ話をしてたんじゃないかな?」

 

とんだヘボ推理である。

 

「そ、そんな事……」

(……ハッ!? でも聞いた事がある……女子が特定の男子の悪口を言っているのは、他の女子に対する牽制の意味があるって……藤原先輩、石上の悪口結構言ってるし、もしかしたらって事も!)

 

「……伊井野ちゃーん?」フリフリ

 

「……」

(もしそうなら、この前の歓迎会で藤原先輩が言ってた言葉の意味も違って来る!?)

 

………

 

「石上くんですかー……まぁ確かに遠慮なく色々言える仲ですけどぉ……」

(石上くんと1番仲が良いのは私なんですから、当然です!)

 

「傍から見たらお似合いに見えますよ?」

 

「私と石上くんがですか?」

(当たり前じゃないですか! 私と石上くんは相性ピッタリなんですから!!)

 

「えぇ。」

 

「あははは、石上くんとか絶対無いですよ。」

(石上くん、ごめんなさい! 本気で言ってる訳じゃないんです!)

 

「先輩の事敬わないし。」

(いつも私を対等な存在として接してくれる。)

 

「直ぐ正論でボディブローしてくるし。」

(そんな石上くんを受け止められるのは、私だけなんです!)

 

「罰ゲームは酷い事させて来るし!」

(石上くんが望むなら……もっとハードな罰でも、私は構いません!)

 

………

 

「……ッ!?」ガーンッ

(って事なんじゃ!?)

 

此処に来て、藤原の日頃の発言がとんでもない方向に作用していた。

 

「伊井野ちゃーん?」

 

「大友さんの言う通りかも……心当たり、凄いある。」

 

「っ! これは由々しき事態だよ、伊井野ちゃん! 石上君が他の女子に取られる前に、早くなんとかしないと!」

 

「で、でも、どうしたら……」

 

「アタックしまくるしかないよ!」

 

「でもアタックって……何をしたらいいのかわかんないし……」

 

「私に任せて! 男子を落とす方法……色々教えてあげる!」

 

「お、大友さん……!」

 

大友京子、備考……交際経験無し

 


 

〈中庭〉

 

「お弁当作戦だよ!」フンスッ

 

次の日……大友さんと中庭で待ち合わせをした私は、大友さんの開口一番の発言に思わず後退った。

 

「お弁当……いきなり作って来たら、変に思われないかな?」

 

「チッチッチ、甘いよ伊井野ちゃん……もう少ししたら、絶好のイベントがあるでしょ?」

 

大友さんは人差し指を左右に振りながら、片目を瞑り自信有り気にそう言った。

 

「ま、まさか……」

 

「そう、体育祭だよ!! 体育祭なら、お弁当を作って来てお昼に誘っても全然変じゃないよ!」

 

「た、確かに……」

 

「そして、現役JKの手作り弁当だよ! コレに喜ばない男は居ないよ!」

 

「あの……そこに喜びを見出されるのは、ちょっと抵抗あるんだけど……」

 

「えー? でも男の人はJKが好きって友達が……」

 

「多分……それ言ってる年齢層、高校生じゃないと思う。」

 

「とにかく! 体育祭には、石上君の分のお弁当を作って来る事!」

 

「う、うん!」

 

「男は胃袋を掴め作戦、始動だよ! エイエイオー!」

 

「お、オー!」

(あれ? さっきと作戦名が違う……)

 

「先ずは石上君の好物にフューチャーするよ!」

 

「……大友さん、それを言うならフィーチャーするだと思う……」

 

前途多難だった。

 


 

〈体育祭当日〉

 

体育祭当日、午前の部の最後の競技も終わり……各々が昼食を食べる為、食堂や教室、中庭へと散って行く。僕がコンビニ袋に入ったカロリーバーを取り出そうとしていると、重箱を持った伊井野とその背中を押しながら近付いて来る大友の姿が見えた。

 

「石上くーん、お疲れー。」

 

「お、お疲れ……」

 

「おう、2人共お疲れ……どうしたんだ?」

 

「い、石上……私、お弁当作って来たんだけど、作り過ぎちゃって……良かったら一緒に食べない?」

 

「えっ? 僕と?」

 

「ホントは私も一緒に食べたいんだけど、先約があってダメなんだー。石上君、伊井野ちゃんをお願いね!」

 

「……僕で良いのか? 大仏とか小野寺とか……」

 

伊井野と仲の良い女子の名前を挙げるが……

 

「う、うん……こばちゃんは風紀委員の見回り当番で、麗ちゃんも他の友達と食べてて……その、ダメ?」

 

「……そういう事情なら、有り難く頂くよ。」

 

「じゃ! そういう事で、お願いねー!」

 

大友はそう言うと、走って去って行った。走り去る直前に、伊井野に向けて何か合図をしていた様に見えたけど……気の所為かな?

 

「じゃあ何処か……木陰にでも行くか?」

 

「う、うん。」

 

……11月とはいえ、昼間の日差しはそれなりにある。僕は伊井野と、中庭の木陰になっている場所へと移動して重箱を広げて行く……さぁ食べよう、とした所で聞き慣れた声が背後から聞こえて来た。

 

「わぁ、美味しそう! ミコちゃんの手作り?」

 

「は、はい!」

 

いきなりやって来た藤原先輩にも、伊井野は嫌な顔1つせずに対応している。

 

「ちょっとだけ食べていい? ちょっとだけ!」

 

藤原先輩は、人差し指と親指でちょっとだけと形作り、伊井野の弁当を強請った。相変わらず食い意地張ってんな……

 

「はい、是非食べて下さっ……っ!?」

 

了承の返事をしようとした伊井野は、藤原先輩の腹部を見ると目を見開いた……まぁ、伊井野みたいな真面目な奴からしたら、体操服を捲って腹を出すなんて信じられないのかもな。まぁ僕からしても、目のやり場に困るんだけど……

 

「はわわっ……」

(は、腹チラ……こ、これはもう、石上に対する藤原先輩の○ックスアピールなんじゃっ!?)

 

伊井野の藤原に対する疑惑が増した。

 

「……美味しい! ミコちゃん美味しいです!」

 

「ちょっ……藤原先輩、1人でドカドカ食べないで下さいよ。」

 

「石上くん……所詮この世は、弱肉強食なんですよ?」

 

「食い意地張り過ぎじゃないっすか? そもそも、伊井野が用意した弁当なのに……」

 

「女の子に向かってなんて事を言うんですか! それに、ちゃんと私のお弁当も分けてあげますから大丈夫です!」

 

「……良いのか?」

 

「うん、皆で食べた方が良いでしょ?」

(本当は、石上と2人で食べたかったけど……)

 

「まぁ、伊井野が良いなら……藤原先輩、食べ過ぎると午後の部で動けなくなりますよ?」

 

「うん、大丈夫……」

(はっ! まさか……藤原先輩は、私と石上を2人っきりにしない様に敢えて此処に来たんじゃ?)

 

「問題ありません! 美味し〜!」モグモグ

 

30分後……

 

「うぷっ……ご、ご馳走さまでした……」

 

「だからあれ程、セーブして食べた方が良いって言ったのに……」

 

「ふ、藤原先輩、大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫です……」

 

藤原は肥えた。

 


 

「……」ジッー

 

「ミコちゃん? どうしたの?」

 

「あっ……い、いえ! 何でもないです!!」

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「……なんか最近、ミコちゃんに変な目で見られるんですよねぇ……」

 

「化けの皮が剥がれたんじゃないんですか? 今回は早かったですね。」

 

「人聞きの悪い事を言わないで下さい!っていうかなんですか、今回はって!?」

 

「僕的には、あと2ヶ月は掛かると思ってたんですけどね。」

 

「話聞いてますか、石上くん!?」ポカポカ

 

「藤原先輩、叩くのやめて下さい。」

 

「……やれやれ、相変わらず賑やかな事だ。」

(石上、2ヶ月って妙に具体的だな……)

 

「本当ですね。」

(でも、伊井野さんの藤原さんを見る目が変わったのは、少し気になりますね……)

 

そんな生徒会室の様子を……僅かに開いた扉から盗み見る少女が居た。

 

「……ッ!」

(藤原先輩と石上の距離が近い……や、やっぱり藤原先輩は!?)

 

伊井野の藤原に対する疑惑が更に増した。


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