石上優はやり直す   作:石神

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藤原千花は関わりたい

〈生徒会室〉

 

体育祭も無事終了し数日が経ったある日、生徒会室には1年生を除いた白銀、かぐや、藤原の3名が陣取っていた。生徒会業務に一区切りつけティータイムを楽しんでいると、藤原が空になったカップを置きながら口を開いた。

 

「もしかして……ミコちゃんて石上くんの事、好きなんじゃないですか?」

 

「……」

(藤原……)

 

「……」

(藤原さん……)

 

((気付くのが遅い……))

 

白銀とかぐやがその事実に気付いたのは、1ヶ月も前である。

 

「ど、どうでしょうね……会長?」

 

「あ、あぁ、そうだな……藤原書記、気の所為ではないのか?」

 

「違います! 会長やかぐやさんの目は誤魔化せても……このラブ探偵の目は誤魔化せませんよ!」

 

「そ、そう……」

 

「うぅむ……」

 

既にその事実に気付いている白銀とかぐやがその事について濁しているのには、当然理由がある。それは……

 

「……」

(藤原さんが関わったら絶対面倒な事になる。)

 

「……」

(藤原が関わると碌な事にならん。)

 

恋愛事に関する絶対的な信用の無さである。それもそのはず……この女、絶対に地雷を踏み抜くからという理由で友人の恋バナに混ぜてもらえなかった過去を持つ。例えそれが無くても、過去に白銀御行と四宮かぐやの恋愛頭脳戦に無自覚な横槍を入れ、或いは邪魔をした事で白銀、かぐや、両名からの恋バナに絡む藤原に対する警戒心は限界突破していた。

 

「証拠は上がってるんですよ!」バンバンッ

 

「証拠ね……」

 

「はい! 体育祭の時、中庭の木陰でミコちゃんの手作り弁当を食べ様としてましたから!」

 

「ちょっと待て……なんで伊井野監査の手作り弁当って事まで、藤原書記が知ってるんだ?」

 

「え? 私も一緒にお弁当食べたからですけど?」

 

「……藤原さん、それは石上君か伊井野さんに誘われて?」

 

「いえいえ、石上くんとミコちゃんが中庭の木陰でお弁当を広げてたのを見掛けたので、折角だから一緒に食べました!」

 

「そう……それは良かったですね。」

(それって多分……)

 

「そうか……」

(石上の為に作って来た奴なんじゃ……)

 

「今度は皆で食べましょうね!」

 

「……えぇ、そうね。」

(伊井野さん、絶対石上君と2人っきりで食べたかったでしょうに……)

 

「あぁ、そうだな……」

(藤原……そういうトコだぞ。)

 

「ってそうじゃありません! ミコちゃんが石上くんの事が好きなら、私達先輩が上手くいく様にお膳立てしてあげるべきです!」

 

「藤原さん、余計な事はしない方がいいわ。」

 

つい先日、後輩に不安と焦りを与え煽ろうとした人間の言葉とは思えない。

 

「四宮の言う通りだ。仮に……伊井野が石上に好意を抱いていたとしても……こういうのは当人同士の問題だ。俺達がでしゃばって事がマイナスに進まないとも限らない。」

 

つい先日、でしゃばってカウンターを喰らった人間の言葉とは思えない。

 

「心配無用です! このラブ探偵チカにお任せあれ!!」

 

(不安だわ……)

 

(不安だ……)

 


 

〈生徒会室〉

 

「こんにちは……あれ? 石上と四宮先輩は不在ですか?」

 

「あぁ、四宮はゴミ出しの後、寄る所があると言って何処かに行ったっきりだな……石上はまだ来ていないな。」

 

「そう……ですか。」

 

「……」チラッ

(イッチャッテ良いですか?)

 

「……」フルフル

(やめとけって、絶対碌な事になんねぇから。)

 

藤原からのアイコンタクトに白銀は首を振り、否定の意を表したが……

 

「……!」バチコーン

(自分ではどうにも出来ないから、ラブ探偵頼んだって意味ですね? 任せて下さい!)

 

「……!?」

(藤原お前、絶対勘違いしてるだろ!? つーか少しは察しろよ!)

 

片目を瞑りウインクを投げて来た藤原に、白銀は意思疎通が出来ていない事に辟易する。

 

「……ミコちゃんは、最近何か悩み事がありますよね?」

 

「えっ!? え、えぇと、その……」

 

「ズバリ! 恋の悩みですね!? しかもその相手は石上くん……違いますか!?」

 

「はぁ……」

(言いやがった……本当に人の恋路に首突っ込むの好きだな。)

 

「えぅっ……い、石上の事は別にそのっ……違くて……!」アタフタ

 

「ふふーん、ネタは上がってるんですよ! ミコちゃん、自分に正直になって下さい……石上くんの事が好きなんでしょ!」

 

「ふ、藤原先輩!? あまり大きな声で……」チラッ

 

伊井野は不安そうな表情を浮かべ、白銀に視線を送る。

 

「大丈夫ですよ。会長にはすでに事情を話してますから、味方してくれるそうです!」

 

「まぁ、チカラになれる範囲でな……」

 

「そ、そうなんですか……頼りになります。」

(石上が尊敬してる白銀会長が味方してくれるなら、何か進展するかも……!)

 

「ふふーん! そうでしょう、そうでしょう!」

 

「やれやれ……」

(まぁ伊井野は藤原を慕ってるし、同じ生徒会に相談出来る人間が居るのは良い事だろう。あまり男の俺が出張る訳にもいかないしな……)

 

「ミコちゃん、何でも相談して下さいね?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

「……」

(1つ懸念があるとすれば……藤原が口を滑らせて、石上が経験済みって事を言ってしまわないかって事なんだが……)

 

「なんだかんだで半年以上同じ生徒会で活動して来た仲なので、石上くんの事はそれなりに知ってますからね!」フフン

 

「流石は藤原先輩です!」

(わ、私だって石上の事は結構知ってるもん!)

 

「……」

(……まぁ、いくら藤原でもそんなデリケートな部分を喋ったりはしないだろう。少しは藤原の事も信じて……)

 

「ミコちゃん、石上くんは経験者ですから気を付けて下さいね!」

 

「け、経験者!? そうなんですか!?」

 

「てめぇ、藤原ぁ! 信じた瞬間裏切りやがったな!!」

 

「なんですか会長! いきなり人聞きの悪い事を言わないで下さい!」

 

「お前、そういうのはデリケートな部分なんだから言っちゃダメだろ……」

 

「でも知らずに付き合ってからバレるより、始めからバレてた方が絶対良いですよ!意外と女子もそういうの気にするんですからね?」

 

「そりゃそうかもしれんが……」

 

ボソボソと顔を寄せ話し合う白銀と藤原……普段なら風紀委員である伊井野が、2人共近過ぎです! と横槍を入れる場面……だが当の本人はそれどころではなかった!

 

「ッ!?」

(い、石上が経験済み!?って事は相手は!?)

 

伊井野の視線の先には藤原……現在、伊井野ミコの脳内には1つの仮説が出来上がっていた。

 

(石上と藤原先輩は、1学期に付き合っていたけど夏休み前に破局……それからは、お互い先輩と後輩の関係に戻ったけど、藤原先輩には石上に対する未練がまだ残っていて、石上に近い場所に居る女子には牽制をしているって事? さっき私に石上が経験者って教えたのも……)

 

「ミコちゃん、石上くんは経験者ですから気を付けて下さいね!」

(私と石上くんは既に愛し合った仲なんです! ミコちゃんが入り込む隙間なんてありません!)

 

「……ッ!」

(……って事なんじゃ!?)

 

なんでも相談して下さいと言っておいて、そんな事を思っているとしたら性悪女にも程がある。

 

(と、とんでもない事に気付いちゃった……どうしよう……)

 

本人達からすれば悍ましい仮説だが、恋は人を変えるのである……主に思考力低下的な意味で。

 


 

〈ファミレス〉

 

「へー、石上君って経験済みなんだ……人は見かけによらないねー。」

 

「うん、問題はその相手が藤原先輩って事なんだけど……」

 

「ミコちゃん、藤原先輩の事尊敬してるみたいだもんねー……ショック?」

 

「そ、それもあるけど! 藤原先輩と石上がその……そういう関係だったって事は〇〇したり、〇〇〇を〇〇で〇〇したり、〇〇〇してたりなんて事に……!?」

 

「わー、知らない単語がポンポン出て来るぅ……流石伊井野ちゃん。エッチな事に貪欲系女子って言われてるだけあるね!」

 

「」

 

「あれ? 伊井野ちゃーん?」フリフリ

 


 

本日の石上……

 

「つい先程、会長とかぐや様が廊下で愛を囁き合っている所に遭遇しまして……」

 

「ナマ先輩……妄想と現実の境目無くしちゃダメっすよ。」

 

「石上編集! お、御二人は普段から生徒会でもその様な秘め事をなさっているの!?」

 

「秘め事って言い方やめてくれません?」

(今日もキマってるなぁ……)

 

ナマモノに捕まっていた。


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