石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(゚ω゚)


石と皇女のエピローグ

伊井野に呼び出された日から……僕と伊井野は、恋人として付き合う事となった。12月に入り、期末テストまで残り数日……急遽生徒会案件が発生した為、伊井野と一緒に生徒会室へと向かう。僕的には、ある程度落ち着いてから……会長達に報告するつもりだった。藤原先輩に教えるのは少し面倒な気もしたけれど……内緒にしていてバレたらギャイギャイうるさくなりそうだったし、伊井野の……藤原先輩にだけ教えないのは可哀想、という言葉により期末テストが終わったら皆に伝えるという事になっていたのだが……

 

〈生徒会室〉

 

「……ッ!ッ!」チラチラッ

 

「……?」チラ

 

「ッ!……えへへ。」フリフリ

 

伊井野が此方を見ては、目が合うとハニカミながら小さく手を振って来るもんだから……

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

秒でバレた。

 

「あー、その……石上会計と伊井野監査は……付き合っているのか?」

 

「……はい。あー、別に黙ってるつもりとかは無くてですね……期末テストが終わったら報告するつもりだったんですけど……」

 

「そうか……変に気を利かせてしまったか?」

 

「いえ、どうせ遅いか早いかですし……」

 

「おめでとう、石上君。」

 

「……あざっす。」

 

「最近の伊井野監査は、あまり元気が無い様に見えたからな……石上と恋人になったというのなら安心だ。」

 

「ふふ、そうですね。」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいっすけど……」

 

「ミコちゃん、ミコちゃん……石上くんとはどこまでイッたの?」

 

「ど、どこまでって何の話ですか……?」

 

「だから……石上くんと、エッチな事とかしちゃったんですか?」

 

「セッ……え、エッチな事なんてしてません!」

 

「……セ?」ゲス顔

 

「」

 

藤原先輩のゲス発言に言葉を失う伊井野……という一連の流れを見ながら口にする。

 

「……藤原先輩が絶対イジって来るから、躊躇はしましたね。」

 

「……それに関しては、どうしようもないな。」

 

「藤原さんは、自分の欲に忠実ですから……」

 

「ねぇねぇ、ミコちゃーん? さっきは何を言おうとしたの?」ツンツン

 

「あぅあぅっ……」

 


 

〈生徒会室〉

 

「んむっ…むっ……」モグモグ

 

もぐもぐと小動物の様に、昼飯を頰張る伊井野を眺める……伊井野と付き合い始めて一週間が経過した。その間テスト勉強を一緒にしたり、学生生活を送っている内に気付いた事がある。それは良い事なのか悪い事なのか……最近、伊井野の僕に対する依存度が上がった様な気がするのだ。この前も……

 

………

 

〈期末テスト結果発表掲示板〉

 

「お、今回も一位だな。」

 

テスト結果の張り出された掲示板を眺め、隣に佇む伊井野へと話し掛ける。テスト期間中、伊井野は色々集中出来ない要因が重なっていたみたいだから心配していたんだ。本人程じゃないにしろ、一位を無事取った事にホッとしていると……

 

「石上、こっち来て……」クイッ

 

「え、伊井野?」

 

伊井野に袖を引っ張られ、曲がり角へと連れて行かれる。掲示板の前に密集しているからか、周囲に人の気配は無い。

 

「どうしたんだよ、いきなり……?」

 

「……私、テストで一位だったよね?」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「そ、その……褒めて?」ギュッ

 

「……」

(えー……)

 

別に伊井野ミコは、見返りを求めて勉学に打ち込んでいる訳ではない。しかし、明確に石上を意識し出すキッカケとなった……生徒会長選挙後に発生した石上からの頭ナデナデイベント! その時に感じた幸福感や充足感は、2ヶ月近い時間が経過した今でも忘れられないモノであった。更に言えば、石上とは既に恋人同士……少しくらい甘えてワガママを言っても許される筈と、伊井野ミコは普段ならばブレーキを踏むタイミングでアクセルをベタ踏み! それ故の……この状況であった。

 

「……ッ!」ソワソワ

 

ソワソワと期待に満ちた眼差しで伊井野は僕を見る……え? どんな感じで褒めたら良いんだ?

 

「……ダメなの?」

 

「いや、ダメじゃないけど……良く頑張ったな、いっ……ミコ、偉いぞ。」ナデナデ

 

泣きそうな顔で此方を見上げて来る伊井野を抱き締めると、耳元で囁きながら頭を撫で続ける。

 

「ふぁ…はうぅ……!」ギュッ

 

蕩けた声を出す伊井野に構わず、30秒程続けていると……ガヤガヤと掲示板を見終わったであろう生徒達の喧騒が近付いて来た。

 

「ッ……伊井野、そろそろヤバいから……」

 

こんな所を見られたら、恥ずかしさで死ねる自信がある……僕は胸に凭れ掛かっている伊井野を離しながら口にする。

 

「やあぁ、もっとぉ……!」

 

「………………」

(なんかエロい……)

 

「石上ぃ……」ウルッ

 

「あ、後でまたしてやるからっ……」

(……ってこのセリフもなんか変な意味があるみたいに聞こえるっ……)

 

「うぅ……絶対?」

 

「あ、あぁ……絶対!」

 

………

 

正直、滅茶苦茶ヤバかった……あんなの、そこらの男なら襲ってるだろ……学校でメスの顔なんてしやがって……

 

「石上、どうしたの?」モグモグ

 

「……なんでもないよ。」

 

「?」

 


 

〈伊井野邸〉

 

今日は伊井野の家へとお邪魔している。伊井野に頼みたい事があると言われ、こうして訪れた訳なんだけど……

 

「……」モジモジ

 

「伊井野、それで頼みたい事って?」

 

モジモジと頼み事を口にするのを躊躇している伊井野に話し掛ける。

 

「その、石上にしか出来ない事があって……」

 

「……僕に出来る事ならなんでも言ってくれ、チカラになるから。」

 

「ほ、ホント?」

 

「あぁ、本当だよ。大体、彼女の頼み事を断る彼氏が何処に……」

 

「え、えへへ……じゃあ、石上にはコレを読んで欲しいの。」

 

伊井野から渡された冊子の様なモノには……こう書かれていた。

 

〈イケメンが励ますCDセリフ集〉

 

「」

 

石上は全てを察した。

 

「ッ!」ワクワク

 

「いや……あのな、伊井野?」

 

「じ、じゃあ、早速お願い。」

 

伊井野はスマホをタップすると、録音画面のスマホを机の上に置いた。僕は〈イケメンが励ますCDセリフ集〉を捲り中身を確認する。

 

「いやいやいやっ……こんな歯が浮く様なキザなセリフ言えないって! しかも録音すんの!?」

 

つい先日……キザなセリフを吐いた事を後悔しながら、ベッドの上でのたうち回った人間の言葉とは思えない。

 

「え……」

 

僕の言葉に、伊井野はショックを受けた様な顔で僕を見た。

 

「なんでもしてくれるって言ったのに……」

 

「いや、でもな……?」

 

「嘘ついたの……?」グスッ

 

「嘘っていうか……お、おい、泣くなよ……」

(いくら伊井野の頼みでも、こんな恥ずかしいセリフを言うなんて僕にはっ……)

 

「いじわるっ……!」グスッ

 

「ぐっ……」

(僕にはっ……)

 

………

 

「えへへ……石上、ありがとう。」

 

「……喜んでもらえて何よりだよ。」

(泣き顔には勝てなかったよ……)

 

〈生徒会室〉

 

「あー……」グタッ

 

「……ん? どうした石上? 随分と疲れている様だが……」

 

「どーせ、夜遅くまでゲームでもしてたんじゃないですか?」

 

「えーと、伊井野が何回(恥ずかしいセリフを)言っても満足してくれなくて……(喉が)枯れるかと思いましたよ。」

 

「ぶはっ!? ゲホッ、ゴホッ!?」

(何回イッても!?)

 

「ぶひゅーっ!? ゴホッゴホッ!? い、石上くん! 何言ってるんですか!?」

(枯れる程!? ミコちゃん、そこまでっ!?)

 

「か、会長!? 藤原さん!? いきなりどうしたんですか!?」

 

「うわっ!? 藤原先輩何お茶吹いてるんですか、汚いなぁ……」

 

「なんで私だけ!? それに、下品なのはそっちでしょ!!」

 

「藤原さん、何を言ってるの?……会長、大丈夫ですか?」

 

「ン、ンンッ! あ、あぁ大丈夫だ、四宮。石上……生徒会室とはいえ、発言には気を付けろよ。」

(早過ぎだろ、流石は経験者……)

 

「え? はぁ……わかりました。」

 

「こんにちは。」ガチャッ

 

「み、ミコちゃん! 石上くんが言ってた事ってホントなの!?」

 

「え? 藤原先輩、何の話ですか?」

 

「そ、そのぉ……ミコちゃんが何回イッても満足してくれなかったって、さっき石上くんが……」

 

「えっ……石上!?」

 

「あー、大丈夫……濁して言ったから。」

 

濁した結果、とんでもない勘違いをされている。

 

「……」

(いや石上、全然濁せてなかったぞ……)

 

「そ、その……詳細は省きますけど、私……そういうのが好きなので……」

 

「ミコちゃん!? それどんなカミングアウト!? っていうか、そういうのってどういうの!?」

 

「そ、それは言えないんですけど……」

 

(言えない様な事してるの!?)

「や、やっぱり……この国は淫れてます! 淫れてますぅー!!」

 

「ふ、藤原、落ち着け!」

 

「……藤原さん、本当にどうしたの?」

 

何やら叫びながらアタフタし出した藤原先輩とそれを宥める会長達を見ていると、ポフっと隣に誰かが座って来た……僕は隣へと視線を移す。

 

「……えへへ。」

 

幸せそうな笑みを浮かべる伊井野が視界に映る……この笑顔を、ずっと隣で見守り続けたいと思いながら、僕は伊井野の頭を撫でた。

 

ー完ー




なんとか……なんとか完結まで書く事が出来ました(つД`)ノフラグ立てた3人を消化出来たので、満足です(゚ω゚)
あとは、afterを1話書いたら終わりにします。
ここまでお付き合い下さりありがとうございました!

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